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白髪の旅ガラス

雲上の露天風呂

 標高1800メートルの万座温泉に登る。猛暑の村や町とは別世界が待っていた。夕方、突然振り出した豪雨も潔く上がり、山の頂から霧が瞬く間に這い降りて辺りを暗くする。

 半袖では肌寒い風が和室に吹き込む。腕を前に組み腹を覆った。臍を雷に取られないよう用心しながら、山肌から噴出す白煙が天から向きを変える様子に見惚れる。

 暫くすると辺りが明るくなり、大きな虹がひょっこり現われた。出来過ぎた話で嘘のようである。懸命に写真を撮ってみたが、それと判らないのが残念だ。

 夕食までの腹ごなしに露天風呂に入る。既に辺りは暗くなっていた。数人の先客に遠慮しながら湯船を歩き、一番端の丸石の上に顎を載せ、暗い彼方の稜線を見る。

 長湯は日頃から好きでない。それこそカラスの行水だから、生まれたままの姿で立ち上がり、湯船から出ようと振り向けば、右隣の湯船に胸をタオルで包んだ人がいる。流石に、少しばかり慌てて湯船に沈む。

盆休み 雲の上にて 父と会い
雲上の露天風呂_d0052263_156456.jpg

by tabigarasu-iso | 2011-08-17 15:07 | 随筆 | Comments(0)