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白髪の旅ガラス

雨に濡れ

 沖縄では早くも梅雨入り。この時期を迎える度に想い出すのは、油の匂いが漂う唐傘、何処からか突然現われる大きなカタツムリ、それに雨に濡れた桑の葉を干して乾かす室内のこと。

 特に養蚕は人の生活より重視したようで、「お蚕様」と敬語を使うほどであった。雨に濡れた葉は、お蚕様の口に合わない。そこで畑から刈り取った桑の葉を、室内に張った縄に掛け、適度に乾くのを待つ。

 雨が長引けば干す場所は益々広がり、居間も寝床もなくなった。室内を歩き回る度に桑の葉が身体のあちこちに触れて、気持ちが悪いものである。皮膚の弱い人は、その刺激で赤くかぶれた。

 それでも、養蚕は農家の大切な収入源だから、誰も文句は言わない。それから月日は流れ、養蚕のことなど誰も語らなくなったが、梅雨の二文字を使う度に濡れた桑の葉を想い出す。

 雨の日は 馬を休ませ 肥やし出し
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by tabigarasu-iso | 2011-05-25 00:05 | 随筆 | Comments(0)