2011年 05月 25日
雨に濡れ
特に養蚕は人の生活より重視したようで、「お蚕様」と敬語を使うほどであった。雨に濡れた葉は、お蚕様の口に合わない。そこで畑から刈り取った桑の葉を、室内に張った縄に掛け、適度に乾くのを待つ。
雨が長引けば干す場所は益々広がり、居間も寝床もなくなった。室内を歩き回る度に桑の葉が身体のあちこちに触れて、気持ちが悪いものである。皮膚の弱い人は、その刺激で赤くかぶれた。
それでも、養蚕は農家の大切な収入源だから、誰も文句は言わない。それから月日は流れ、養蚕のことなど誰も語らなくなったが、梅雨の二文字を使う度に濡れた桑の葉を想い出す。
雨の日は 馬を休ませ 肥やし出し