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白髪の旅ガラス

裸のままで

 夜中、眠った人も揺り起こす大きな余震がありました。その時、体内から染み出るアルコールを惜しみつつ、風呂に浸かっていましたから、『なるようになれ』と覚悟を決めて動きません。

 すると外から叱咤の声が聞こえます。
「すぐに出なさい。緊急事態です」
 そう言われても、湯船に浸り裸のままでは、何ともしようがありません。

 取り敢えず浴室のドアを開け、そこが潰れても抜け出せるようにしたところで、冷えた身体を湯に戻します。すると何とも心地良く、再び『なるようになれ』と。

 徐に湯船から身体を上げて、タオルで滴る汗を拭きながら、家族の会話に耳を傾ければ。
「呆れたわね。未だ裸よ」
 そうです。裸のままですから、女性達の前には出られません。

裸のままで_d0052263_9561451.jpg

見えぬ場所 いつまで続く 余震かな
by tabigarasu-iso | 2011-04-09 09:56 | 小説 | Comments(0)