2011年 01月 21日
風の音
そうとは知らない風が暴れ込んだものだから、その目立つことと言ったらない。微かな変化であっても、どうしたものかと聞き耳が立つ。
時々、注意を引くように強弱を付けて唸る風がある。何やら話したいような変化に気付き、酒を飲む手を一瞬止めてみた。
すると風は止み、再び晩酌を開始すると唸る。
『そうか、千の風になった親父の好物だからな』
仏壇の扉を開け、小さな盃に少し酒を注ぎ、千の風の前に置いた。それを不満そうに、風は外で唸る。
『嫌だね、酒飲みは』
そう思いながら、盃になみなみと注ぎ足せば、忽ち外は静かになった。
あの世でも 酒は飲めると 風に聞き