2010年 11月 22日
渋柿
それを多数の渋柿の中から見付け出すには、高い梢に登る身軽さが必要である。長い竹棒で叩き落としてから探す方法もあるが、その時は干し柿の準備で忙しく、甘い柿を探す暇などない。
猿にも負けない身軽な少年であった頃、折れ安い柿の枝を苦にしないでよじ登り、枝先に実った柿の顔を見分けた。
青い顔しているのは間違いなく渋い柿である。黒子が真中から外れているのもいけない。それこそ柿色の表皮に光沢があり、黒子が大きく真中にあって、その周辺に黒い斑点が透けて見えるものは、齧ってみる価値がある。
甘い柿に遭遇する確率は、実に低いものであった。外れた柿は、表皮を少し齧っただけだから、そのまま枝に残して置き、やがて鳥の餌になるか干し柿にする。
漸く手に入れた渋柿の中の甘い柿、まだ見付からないと仲間には言いながら、一人梢で齧ったものだ。あの甘さは、想い出も加わるから、今では味わうことは叶わない。
渋柿を 蟹に投げない 猿を見て