2010年 10月 24日
ブチ猫の帰郷
その昔、田舎では鶏が放し飼いの頃、大きな雄のブチ猫を飼っていた。土蔵に保管する稲もみを狙う鼠に備えて大切に扱われていたが、一歩屋敷を離れたら豹変したようである。
「悔しいたらありゃしない。何処から入ったことやら。あのブチ、鳥小屋の中で卵から孵ったばかりのヒヨコを全部腹に入れ、頭を並べたその脇で図々しく寝ていたよ」
「うちのブチかね。悪いことしたなぁ。申し訳ねぇ」
そんな罪を犯しても、猫は犬のように首輪を付け繋ぎ留めて置く訳には行かない。叱っても、犬のようには学習しないだろう。
もう一度同じようなことをしでかしたら、遠くに捨てるしかない。そんな心配が現実になり、ブチはトラックに載せられ遠くの街へ連れて行かれた。
それから一年が経ち、すっかりブチを忘れた頃、突如目の前に現われたから堪らない。堂々とした足取りで帰郷したブチは、尾頭付きの秋刀魚を貰った。
自由猫 犬の首輪を 欲しくなり