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白髪の旅ガラス

人犬会話

 人の言葉を話せない犬は、顔、脚、それに全身を使って自分の要求を人に伝える。そこで、吠えたり、尻尾を上げたり、耳を立てたり、くるくる同じ場所を回ったり、喉奥から声を出したり、微妙な変化を受け取る側が心得ていなければ、犬と人の意志疎通は旨く行かない。

 早朝のこと、応接間を独占して眠る愛犬が、せつなく「ワン」と一声だけ吠えた。それを二階で聞き付け、飛び起きて一階に駆け下りてみれば、自力で立てずに横たわる尻の近くに可愛らしい糞の一塊が見える。糞が出るよと言いたかったのか、出てしまったよと言いたかったのは不明だが、一声吠えて知らせる姿勢が愛らしい。

 いつか自分が床に伏せ、同じ様な状態になることもあるだろう。その時「オイ」と一声出して、じっと待って居られるだろうか。「ああしてくれ、こうしてくれ」と我がままを言い、周囲の人に迷惑を掛けることであろう。

 一度立ち上がれば、自力歩行はかなり出来る。脱糞は済んでいるから、外の空気を吸い季節を肌で感じて貰いながら、ついでに排尿を予定したいが。若い頃は、数歩も行けば直ぐに片足を上げ頻繁に縄張りを示したが、一時間徘徊しても用を足さない。その兆候は、軽く腰を下ろし尻尾をスイと上げるから直ぐ判る。だが、その兆しは今のところ見えない。

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秋分の 節目に落ちる 雨の音
by tabigarasu-iso | 2010-09-23 09:26 | 小説 | Comments(0)