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白髪の旅ガラス

想定外

 伊勢に餃子の旨い店があると聞き、確かめない訳にはいかない。ようやく念願が叶い、その店に案内された旅ガラスの一行、まずは頭数の餃子を注文する。それに鳥のカラ揚げ、おでん、おむすびと若いカラスが言うに任せて注文したけれど、最初にビールが出たきり後が続かない。

しかたなく、つまみが無いままグラスを干せば、疲れに空腹が重なり、酔いのパターンに入りそうになった。
「・・・・・・・」
 大分待たせながら、無言で置かれた焼き餃子、見た目に変わった風はない。
「熱いですから、気を付けて下さい」

 注意してくれたのは、常連の若いカラス。確かに、普通の餃子に見えたけれど、口に含み咬んで驚く。柔らかな皮の中から、野菜の旨み汁が流れ出し、その熱いこと鍋の中のごとし。グラスに残った生ぬるいビールを慌て口にする。

「旨い、もう一人前ずつ注文しましょうか」
 底面は焼けてパリッと固いが、山の両側は柔らかな仕上がり、味の深い具が手頃の分量、ついつい箸が進み、気が付けば二皿目も既に空。餃子ばかりで満腹になるとは、想定外の店だった。

                 枇杷の実も 小雨に打たれ 眼を醒ます
by tabigarasu-iso | 2006-07-05 18:27 | 随筆 | Comments(0)