2006年 07月 05日
想定外
しかたなく、つまみが無いままグラスを干せば、疲れに空腹が重なり、酔いのパターンに入りそうになった。
「・・・・・・・」
大分待たせながら、無言で置かれた焼き餃子、見た目に変わった風はない。
「熱いですから、気を付けて下さい」
注意してくれたのは、常連の若いカラス。確かに、普通の餃子に見えたけれど、口に含み咬んで驚く。柔らかな皮の中から、野菜の旨み汁が流れ出し、その熱いこと鍋の中のごとし。グラスに残った生ぬるいビールを慌て口にする。
「旨い、もう一人前ずつ注文しましょうか」
底面は焼けてパリッと固いが、山の両側は柔らかな仕上がり、味の深い具が手頃の分量、ついつい箸が進み、気が付けば二皿目も既に空。餃子ばかりで満腹になるとは、想定外の店だった。
枇杷の実も 小雨に打たれ 眼を醒ます