2010年 07月 24日
寒暖計になりたい
日頃の風呂もカラスの行水と言われる速さだから、湯の中をゆるゆると歩く気持もなく、何ともだるい足を急かせて、冷房の良く効いた研修室に駆け込む。その勢いが出番を待っていた汗を押し出し、既に皺だらけのハンカチを顔から頭まで何度も往復させた。
午後一番の講義は、受講者だけでなく講師も辛い。瞼の下がった面々を前にして、講師も己の瞼が下がらないことを祈るばかりである。だが、その日はいつもと違い、冷たさを通り越した寒波が研修室の後方から襲い、半袖の両腕に鳥肌が立ち始めた。
腕を交互に摩擦しながら講師は自分に近い受講生に聞く。
「大丈夫ですか」
何が大丈夫か判らなくても講師の質問に否とは言えない。
「ええ」
そう言いながら、受講者は腕を寒そうに摩っている。
勘違いを知った講師は詫びながら。
「失礼しました。冷房が強過ぎるのではないかと訊いたのですが」
今度は周囲の受講者が声を揃えて。
「大変寒く、居眠りもできません」
これには、講師も苦笑いするしかなかった。それにしても、外の灼熱と室内の寒波には、寒暖計に変身しなければ、聞くも話すも務まりそうにない。
熊蝉も 暑さを避ける 昼寝かな