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白髪の旅ガラス

久し振り

 何年か振りに遠くから見れば、その方は顔に皺が増え頭髪も薄くなり、生え際もかなり後退している。そんな思いを口に出さず、洗面所で鏡に映った己をしみじみ見れば、その方より遥かに後退しているから堪らない。

「久し振りです」
 その方は振り向いて驚いた。
「はあ・・・」
 こちらの短く刈り込んだ頭から顔に視線を移し、漸く誰だか判ってくれたようである。
「どうも、コンサルでしたか。失礼しました」
 以前は髪も長く、白髪を黒く染めていたから無理はない。

 顔見知りの方と食堂で会う。
「随分と頭を涼しくされましたね」
 その方とは三ヶ月前に会っていたから、白髪に戻した自分を迷わず認識して貰えたようだ。けれど、少しも驚かないことに淋しさを感じる。

 人の気持というものは、他人の言葉で大きく揺れもの。特に、久し振りの後には相手を傷つけない言葉が必要である。また、年輪を重ねた方には、久し振りは老いに繫がる言葉になるから、相変わらず元気とか活躍されているとか、未来に希望を持たせる言葉を補足するのが望ましい。

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【コンサル川柳コーナー】

№74 久し振り 若いですねと 年下に

by tabigarasu-iso | 2010-07-04 08:56 | 随筆 | Comments(0)