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白髪の旅ガラス

柔らかい光

 百円で釣りが貰える障子張り用の刷毛を買いに車を走らせた。昨日の買い物で、もったいないからと買わなかった刷毛だけを買うのだから、こちらの方がもったいないことである。それでも刷毛が無ければ、糊が塗れないから仕方がない。

 桟だけになった障子を、全て運び出した八畳間の真中に横たえ、昨日の買い物袋からチューブに入った糊を取り出し使い方を確認する。そこには、桟の両脇を挟むプラスティク製の備品があり、チューブの先に被せた網目状の帽子から糊を出せば、その備品が案内役になり桟の上に糊が着く。

 と言うことは、刷毛が無いから昨日は障子張りを止め、それを改めて今日買い足したものの、糊を着ける刷毛は要らないようである。思い起こせば、普段から机の上に置く封筒用の糊も似たようなもので、障子を貼るのに刷毛が要るとは、昔の想い出から抜け出せない思い込みであったようだ。

 チューブ入りの糊は使い勝って良く、面白いように糊が桟に着き、紙を貼っては糊が乾く前に余分な紙を切り落とし、休む間も無く全ての障子を張り終える。最初の障子は出来栄えが良くなかったが、最後の一枚は玄人に近付いたようだ。それを元の位置に嵌め込めば、柔らかな光は障子貼りの職人に成り切った男を包み、疲れた足腰を癒してくれる。

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新しき 紙を通して 春の陽が
by tabigarasu-iso | 2010-04-26 08:28 | 随筆 | Comments(0)