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白髪の旅ガラス

判らない

 コンサルを殺すに刃物は要らぬ。さんざん説明させた挙句、最後に判らないと言えば良い。手取り足取りの指導を試みた後で、何のことだかさっぱり判らないと渋い顔をされ、それで別の例えで説明を再開したものの、それでも判らないと言われたら、あなたならどうする。

 その昔の流行した歌の文句なら泣くの笑うのと続きそうだが、コンサルは泣いて務めは果たせない。
「それでは、こうしましょう。これから、資料の判らない箇所に赤線を引いてみてください」
 人の話を聞いているだけでは理解は進まぬ。自分で考えてみる時間が必要になる。それを人に伝えることが出来れば更に理解は進む。赤線の引かれた資料に眼を通し不明な点を確認したところで、コンサルは白板に図を書いた。

 マイナスの領域で限りなくゼロに近づく曲線と、プラスの領域で限りなくゼロに近い位置から右肩上がりの曲線を書き終え、渋い顔に問い掛ける。
「これは、経費と売上の曲線を表すものですが、どちらが経費を表すものでしょうか」
 渋い顔は、迷うことなくマイナス領域にある曲線を選ぶ。
「それでは、こちらを選んだ理由を説明してください」
 渋い顔は、明るい顔になって答えた。
「経費の削減は可能ですが、ゼロにすることは出来ないので、こちらの曲線になります」

 コンサルは、明るい顔に向かって。
「これから導入する環境ISOの仕組みは、経費を削減し売上を伸ばすことにも使えるものです。但し、最初から両者を重点的に管理する狙いがあればのことですが」
 明るい顔は、もう判らないとは言わなかった。

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訳知らぬ 上になりても 春近し
by tabigarasu-iso | 2010-02-23 23:19 | 随筆 | Comments(0)