2010年 02月 12日
残雪
都内で打合せを済ませて新幹線に飛び乗り、いつしか灰色の街並みから転じて彦根の雪景色へ。その日の内に苦も無く移動できる便利な世にあり、心休まる瞬間は、どこまでも続く山並みを車窓から眺めている時であろうか。
数年前に購入した雪道用の短靴を履き、勇んで彦根駅を降り立ったものの、既に歩道の雪は溶けて無くなり、スリップ止め用の金具が徒に鳴るばかり。そこでわざわざ路肩の残雪を踏み締め、還暦の老人から童心に戻る。
その昔、朝陽を受けてチッチッと囀る雀に起こされ庭に出れば、厚い雪の布団が蔵の屋根を包み、柿木の小枝にそそりたつ見事な薄い雪の壁を見て、すぐさま臨時休校を確信したもの。朝飯を急いで食って庭に飛び出し、雪掻きの手伝いを終えれば、後は自由な時間が待っている。
米俵の蓋に馬の尻尾から拝借した長い毛を輪にして、引くと輪が締まるように細工してから、その蓋に何個も結び付けた後で米を撒き、雀が罠に掛かるのを隠れて待つ。一羽も捕獲したことはなかったけれど、何とも楽しい待ち時間であった。残雪は、それを想い出させてくれる。
一時の 栄華映して 残雪