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白髪の旅ガラス

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船を漕ぐ  

 誰でも即座に歌手の気分に浸れるカラオケです。そのメンバーに昭和生まれの男女が居れば、「銀座の恋の物語」をリクエストする確率はかなり高いことでしょう。

 その歌は知っていても、その映画を観たことのある人は少ないかも知れません。自分もその一人でしたが、昼間のニュース番組に厭きてチャンネルを替えれば、その映画が放映されているではありませんか。

 昼の時間帯には不釣り合いな映画ですが、一度は観ておかなければ、その歌を唄う際に深みが生まれませんから、じっくり観ることにしました。けれど、気が付けば船を漕いで、物語は知らない場面に移っています。

 主人公の恋人が記憶喪失になり、それが治るきっかけに恋人の似顔絵と銀座の恋の物語のメロディーがあったような。そのメロディーがしつこく何度も流されたものですから、うたた寝するのも仕方ありませんね。

 銀幕に 映る姿は 元のまま
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by tabigarasu-iso | 2014-04-30 00:00 | 随筆 | Comments(0)

仲良し子猫

 つい先程まで、二匹の子猫は勢い良く走り回っていましたが急に静かになりました。満腹で水も飲み用も足し心行くまで安心して遊び、疲れ果てて家の何処かで眠っていることでしょう。

 子猫に邪魔されない仕事は意外に捗り、こちらが休憩することにして子猫の様子を見ようとしましたが、いつもの指定席に姿はありません。小さな隙間に潜り込み、出窓に置いた物の後で息を殺し、時には買い物籠の中への入り込む、きっと思い掛けない場所に居ることでしょう。

 階段を上り切った辺りから熱い視線を感じて見上げれば、二匹の子猫が並んで床に頭を着けたまま、こちらを見下ろしています。

『そんなに慌ててどうしたの』
『何を探しているの』
『僕達はここだよ』
『御飯はまだ要らない』
『放って置いてよ』
 何を考えているのか分かりませんが、二匹の仲の良さだけは間違いありません。

 陽を受けて 団子に見える 梅の実よ
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by tabigarasu-iso | 2014-04-29 00:00 | 小説 | Comments(0)

笑顔の三角

 連休前の秩父線の急行電車に乗って秩父駅まで一時間余り、いつもなら数人しか乗らない車両は帽子を被った乗客で溢れています。こちらは背広にネクタイ姿ですから、場違いとは自分のことでしょう。

 向かいの席には、ハイキング姿の老夫婦が一言も言葉を交わさず笑顔で座っています。隣には、地元の人らしい老人が苦虫を潰した顔ですから、比べない訳には行きません。どちらにも属さない自分は、笑顔と苦虫の真中を取ることに決めました。

 山が迫り緑の濃淡が鮮やかな風景になれば、山国育ちの自分は故郷に帰ったようで、約束を忘れて笑顔がこぼれてしまいます。それを向かいの二人は見逃さなかったようで、笑顔で応えてくれました。

 挨拶されたら、それに応えなくてはなりません。二人の顔を見て、ニッコリと微笑み返します。こうして笑顔の三角が出来上がり、隣の老人も混ざれば円満の四角形になりますが、頑固な隣人は知らん顔で、我慢しているのかそれとも何か訳でもあるのでしょうか。

            芝桜 化粧過ぎたる 人に似て
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by tabigarasu-iso | 2014-04-28 00:00 | 小説 | Comments(0)

簡単のようで難しい話

 仕事先で日時を変え、同じ話をしなければならないことがあります。これが簡単なようで、なかなか難しい。話を聞く方の反応により、大きく変えることはありませんが、少しは変えなくては、聞く方だけでなく話す方も面白くありません。

 ところが、少し変えたつもりの話で問題になる場合があります。話す側にとって少しの違いであっても、聞く人によっては大きな違いに聞こえる場合もありますから、余程気を付けなければなりません。

 余程気を付けていても、生身の人間が話す際にはテープレコーダを再生するようには行く訳がありませんから、同じ資料を配付して誤解されないようにしています。それがない場合には、聞く人が面白くなくてもテープレコーダを流すように話しましょう。

 それでは仕事にならないコンサルは、堪らずに言いました。
「こちらは配付資料を必ず用意して臨んでいますから、そちらの資料も必ず事前に戴けませんでしょうか。当日、次々と新しい資料を提示されますと、誤ったコメントを申し上げる可能性がありますので」
「コンサルなら、瞬間的に判断出来るでしょう」
「恐れ入ります。評価して頂くのは有り難い話ですが、コンサルは神様ではありません。今後、資料の事前提供をお願いします」

 言われても 言い返せない 菖蒲咲く
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by tabigarasu-iso | 2014-04-27 00:00 | コンサルサービス | Comments(0)

車内観察

 進行方向に座ったままでは、どんな人が同乗しているのか、頭が見えるだけで分からないものです。中には顔見知りの方が乗車しているかも知れませんから、用足しに席を立った際の帰り際には良く観察することにしています。

 進む方向を見ながらでしたら、知り合いを探しているとは、まず気付かれることもありますまい。時として、こんな好奇心が役に立つことがあります。
「しばらくです」
「・・・」
「その際には、大変お世話になりました」
「失礼しました。あの時のコンサルですね」
「はい」

 かように、何年か前に世話になった方と遭遇するかも知れません。そこで相手が話の続きを望むようでしたら話を続けます。
「その後、如何ですか?」
「お陰様で上手く行っています」
「それは有り難い。また、声を掛けさせてくださいな」
「遠慮なく、どうぞ」

 そうでない方には、寛ぎを邪魔してはいけません。さっさと、その場を離れましょう。
「失礼しました。お元気で」
 こんな一言でも、後日の営業電話は有効になります。
「先日は車中で失礼しました。新しい提案がありますが、検討して戴けますか」
「どうぞ」
 かように、車内観察は再会の機会にもなりますから、疎かにしてはいけません。

 葉桜に 照明当てて 花と観る
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by tabigarasu-iso | 2014-04-26 12:36 | 随筆 | Comments(0)

入会即退会

 入会して僅か一時間も経たない内に退会の手続き。インターネットを使って簡単に入会できるブログですが、既に3件の入会をしており、そのうち2件は休眠状態ですから、同じ運命になるだろうと考えを改め、さっさと退会することにしました。

 入会したままでも何ら害悪はありませんが、訪問した方に空欄を見せるだけでは申し訳なく、また、他のブログとは異なるパスワードを設定しなくてはなりませんから、その管理が難しく煩わしいことから退会することにしたのです。

 これが人を介しての入会や退会でしたら、義理人情が絡まって簡単には行きません。何しろ、自分は義理と人情それに冬場のからっ風で有名な上州人ですから、退会するにしても日を改めたことでしょう。

 退会した後で気付いたことですが、公表するデータに公表してはいけないデータの一部が含まれていましたから、即座に退会したことは正しい判断であったようです。

 雨男 晴れの彦根に 首かしげ
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by tabigarasu-iso | 2014-04-25 00:00 | 随筆 | Comments(0)

青色の季節

 桜の花も散り若葉の勢い増す季節には、胸躍らせる新入社員や新入生が居るかと思えば、その反動で憂鬱な気持ちに襲われる人も多いようです。

 中には、思い余って自ら命を絶つ。その勇気があるなら、もう少し生きる判断は出来ないものでしょうか。今日も、人身事故で遅れる電車を待ちながら、当事者に想いを寄せました。

 そもそも、生きる以外に余分なことを考える人と言う動物は、明るい未来を想像するか、暗い未来を想像するか、どちらか一方しか選択しない不器用な動物のようです。

 どちらも考えないで食って寝る、ただの糞袋になるのは容易なことではありません。けれど、時にはただの糞袋に変身して嫌な食糧は消化しない。好きな食糧から養分を吸収し、その滓で嫌な食糧を体外へ排出すれば良いのです。

 かように考えれば、人身事故の当事者にはなりません。その場面を想像してみましょう、多くの人に迷惑を掛けるばかりか、細切れになった肉塊は汚いバケツに投げ込まれるだけで、傍には誰一人涙する人も居ないのです。

 青色よ 心曇らす ことは止め
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by tabigarasu-iso | 2014-04-24 00:00 | 随筆 | Comments(0)

送り猫

 玄関先で腰掛け靴の紐を締め、出張の気持ちを高めます。
「ニャーア」
 珍しく、チビクロが何処へ行くのと言ったようですから、
「たまには仕事だよ」
 と答えてあげました。

 目を丸くして納得したように頷くものですから、
「留守番、頼むよ」
 と言えば、チビトラの方は分かったようです。

 チビクロの兄貴を置いて、さっさと向きを変えたチビトラは、玄関先から居間に戻って行きましたが、兄貴の方は腰を下ろしたまま動こうとはしません。

 ドアを静かに締めながら、どうするのか中を覗いて見れば、チビクロの兄貴はこちらを見たままです。猫であれ、こうしていつまでも見送られたら悪い気持ちはしません。

 一宿の 恩を返すか 送り猫
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by tabigarasu-iso | 2014-04-23 00:00 | 小説 | Comments(0)

渋川高校東京同窓会

 これまで何度も案内の葉書を貰いながら、一度も出席したことのない高校の同窓会でしたが、案内を送って下さる事務局の労を推し測り、試しに出席することにしました。

 同窓会の会場には、男子高校では居る筈のない女性が受付に座っていましたので通り過ぎようとしましたが、どうしたことか声を掛けられます。
「渋川高校同窓会に参加される方ですか」
「はあ、そうですが」
「失礼ですが、お名前は」

 参加者名簿には、自分の名前が確かにありました。
「あのう、自分が卒業した渋川高校に女性は居なかった筈ですが」
「ああ、かみさんに受付の応援を頼んだのです」
「そうでしたか」

 会費を払い会場に入れば、既に何名か腰掛け、郷里の言葉で話しています。
「初めて案内状を貰って参加したが、参加者名簿を見れば上の方に名前があって驚いたね。歳を取ったものだ」
 盗み聞くともなく話に耳を傾ければ、どうやら同じ村の出身者らしく、後で挨拶することに。

 参加者が出揃ったところで見渡せば、爺様が多数です。中には、現役で働いている五十代の人も居ますが、見た目を四捨五入すれば爺様に変わりはありません。硬い挨拶が終わり懇親会に入れば、その後どうしていた、今どうしている、これからどうすると、話が盛り上がったかと思えば冷めもして。

 そんな中でも力強さを感じさせるのは、やはり社会で働く同窓人です。学校の理事長、開業医、勤務医、会社の役員、会社の顧問、名刺を配りまくる個人経営の方、まだまだ後輩には道を譲れない気合が満ちていました。

 一方、組織からは離れたものの、農業に生甲斐を見出す先輩も居ます。近所に百坪の畑を借り、玉ねぎなどを作っては親戚に送り届けているとのこと。それは地味なアクションですが、華々しい同窓人の話題より何故か安心して聞くことが出来ました。

「また、お会いしましょう」
「ええ、私のたまねぎ畑で」
「望むところです」
 こうして、僅か二時間の同窓会は幕を下ろしたのです。

 宴会の 後で話に 花が咲き
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by tabigarasu-iso | 2014-04-22 00:00 | 随筆 | Comments(0)

仙台の桜

 甥の送ってくれた写真を見れば、仙台の桜も満開になったようです。時を同じくして、娘も松本の桜を写真で送ってくれ、自分も彦根の桜に酔ったばかりですから、脳内は桜の情報で混乱していることでしょう。

 仙台の桜は、彦根や松本のそれとは趣が異なるようです。一斉に開いた花びらは、3年前の大震災で亡くなった人に向け、心安らかにと願っているように思えてなりません。

 その時、たまたま仙台に居て難を逃れた甥は、咲き誇る桜の花に何を思うことでしょう。その内容如何に拘わらず、大揺れを乗り越えて毎年花を付ける桜は、甥の進む人生の背中を推しているようです。

 やがて桜の花は散り、再び咲くことの繰り返しとなりますが、亡くなった人の命は桜の花のようには戻りません。しかしながら、土に帰って桜の花に生まれ変わることは可能です。そんな思いで、甥は桜の花を観ているのではないでしょうか。

 盃に 花びら浮かべ 父と飲む
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by tabigarasu-iso | 2014-04-21 00:00 | 随筆 | Comments(0)