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白髪の旅ガラス

 痰は、呼吸器系で作られた粘液である。その色は、透明色から黄色まで様々あるが、決して美しいものではない。それどころか、道端に吐き捨てられたものなど発見すれば、吐き気を催す。

 ところが、それが自分のものとなると、見方が変わるから妙なものだ。四十年振りの風邪の所為で、一定の時間を置いて喉が痒くなり、込み上げる痰をティッシュペーパーで始末する。

 そのまま屑篭には捨てないで、必ず開いて中身を確認しなければ気が済まない。その色が薄くなれば完治は近く黄色であれば先は長いと、医者でもないのに風邪の治り具合を確認するのである。

 それを他人が見れば、気持の良いものではない。従い、外出先では誰にも見られない場所を選び、そっと覗き見る必要がある。自室なら、生まれたばかりの痰を観察した後で、「夜明けは近い」などと呟いても構わない。

 この坂は 誰と歩くの 妻が言い
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by tabigarasu-iso | 2013-11-30 00:00 | 随筆 | Comments(0)

経営者と小説家

 川に浮かぶ泡のような経営者にはなり得ても、長年に亘って大企業の経営者であり続けることは、色々な面で大変なことであろう。

 そればかりか、詩人としてもまた小説家としても世の中に軌跡を遺す経営者であったとなれば、凡人としては呆れるしかない。

 とは言うものの、経営者と小説家とは夢を追い続ける点は同じであろう。ただ、その夢を実現するのに前者は他人の力を借りるが、後者は自分一人で充分である。

 他人の力を借りて幾つもの会社経営を実現し、自力で幾つもの小説を世に遺した堤清二さん、本当はどちらの道を歩みたかったことであろうか。

 扉前 家人の姿 待つ猫が
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by tabigarasu-iso | 2013-11-29 00:00 | 随筆 | Comments(0)

廃車

 古くなった車は、買い替え時に下取りして貰う。買い替えがなければ、廃車することになる。自分で廃車するにはどうしたら良いものか、近くのガソリンスタンドで聞くと、代行してくれることが分かった。

 教えて貰った通り、印鑑証明、実印、納税証明書、車検証を揃え、廃車する車に載ってガソリンスタンドに行く。そこで何通か書類を作り、数分で手続きは終わった。

「他にすることはないのですか」
「ええ」
「それでは、廃車の手数料をお支払いします」
「無料です」
「はあ、リサイクル料は」
「既に徴収されていますから、必要ありません」
「そうでしたね」

 余りにも呆気なく手続きは終り、駐車場に停めて置くことの多かった車に頭を下げ、帰りは徒歩で帰る。空いた駐車場には西日が全面的に当たり、何となくホットしているようであった。

 役終えて 安心色の イチョウ見る
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by tabigarasu-iso | 2013-11-28 00:00 | 随筆 | Comments(0)

面影は微塵もない

 かつて公共工事の不正を厳しく追求したジャーナリストでも、その鋭い視点を買われて政治家になれば、追求される人間に変わるらしい。

 現東京都知事は、都知事選に立候補した際、5000万円を病院経営者から借りたと言う。その目的が選挙資金であれば報告しなければいけないが、個人的な借り入れならその必要はない。

 見苦しいのは、当初は自分から借り入れを申し込んだと発言しながら、追求が厳しいと知ると先方から資金提供の申し出があったかのように、先の発言を翻したことである。

 何れにしても、個人的な借り入れだから選挙違反にはならないとしたいようだが、選挙資金に不安を感じて用意したものなら、選挙資金とみるのが妥当であり、苦しい言い訳に昔の面影は微塵もない。

 小春日に コート着込んで 汗掻いて
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by tabigarasu-iso | 2013-11-27 00:00 | 随筆 | Comments(0)

心を頂く

 賑やかな飲み屋街は、飲兵衛には堪りません。ただ、酒を飲まない人に長居は無用です。静かな店で疲れを取り、美味しい物を食べて、ゆっくり話が出来る店が宜しい。

 それには、多少値は張っても有名ホテルのレストランが間違いありません。物腰の柔らかい店員に席を案内されメニューを眺めても、懐具合に合う手頃な品は見当たらない。一番安い品は、エビフライカレーの三千円弱でした。

 今更店を替える訳にも行きませんから、思い切ってそれを頼んでみます。妻も似た金額の品を頼み、注文した品が登場するまで四方山話を楽しむことにしました。
「黒猫、留守番しているかな」
「ええ、玄関前で座っていると思うわ」
「なら、早目に帰ろうか」
「話は聞こえるから、少しボリュームを下げて」

 静かな店内ですから、黒猫の話は響きわたったことでしょう。漸く運ばれたエビフライカレーを静かに口へ。
「旨い」
「私にも一匹分けて頂戴」
「どうしたものかな」
「私の料理を分けてあげるから」

 こうして、たまには互いの心を頂くのも悪くありませんが、支払い金額には驚きます。追加した麦酒や紅茶の料金もサービスの心が加わり、予測した倍の額でした。

 曇り空 昼過ぎなのに もう夜か
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by tabigarasu-iso | 2013-11-25 00:00 | 随筆 | Comments(0)

落ちない落語

 「落語」とは、落語家が行う演目(ネタ)のなかでも滑稽を中心とし、落ち(サゲ)を持つ「落とし噺」(おとしばなし)のことを言うようですが、その落ちを聞き漏らすまいと耳を澄ませば何も手に付きません。

「メダカは絶滅危惧種になったそうで、近頃、小川で見掛けることはありませんが、かつては親子仲良く泳いでいましたね」
「おや、どれが親メダカでどれが子メダカか分かります」
「小川の隅を泳ぐのが親メダカ、オヤスミと言うではありませんか」

 サゲには、演目時間の都合で途中であっても無理やり落とすものと、予定通りに落とすものがあるようです。どちらにして、苦しい駄洒落でサゲはいけません。

「絶滅危惧種、メダカばかりではありません。電子メールが普及した所為でしょうか、顔を見て挨拶の出来る人も絶滅危惧種。それにまた、手書きの賀状も絶滅危惧種になりそうですな」
「おや、その点、おいらは繁栄安泰間違いなし。大家さんの顔を拝み、溜め込んだ家賃の支払い伸ばして貰う」

 何気なく 点けたラジオに 惹き込まれ
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by tabigarasu-iso | 2013-11-24 00:00 | 随筆 | Comments(0)

小物趣味

 雑誌を見ても、出掛けたついでがあっても、滅多に土産の類は買いません。それでもたまには、旅行好きな家族の趣味に合わせて買い求める土産もありますが、それこそ名物に旨い物はなく、冷蔵庫の隅で忘れられたままです。

 ところが、携帯電話に付ける小物などを雑誌や店先で見掛けると、迷うことなく買い求めてしまう。最近では、一寸にも満たない金の延べ棒、本物であれば小物とは言え数十万円の代物です。

 つい先日も、手作りで将来の価値も見込めそうな一寸余りの金属製の熊を求めました。金の延べ棒の値段は三百円でしたから、その十倍以上の値ながら迷うことはありません。困った趣味ですが、そのルーツは幼い頃にあるようです。

 戦後七年が経ち、右肩上がりの経済で町には物が出回っていたのでしょうが、田舎で暮らす子供には、欲しいものがあっても想像するだけで簡単には手に入らない。着る物は寸法の合わない兄の下がり、新しい下着など正月が来ないと買って貰えません。

 そんな中、町の子供が近くの家へ遊びに来ることがありました。手に持っているのは小さな玩具、小さなアヒルや自動車の類で欲しくて堪らない。少しの間貸して貰っても、すぐに返さなくてはなりません。

 今、その時の願望を実現しているようです。この癖に拍車を掛けるのはキャッシュカードでして、現金の持ち合わせがなくても決済が出来る良い時代になりました。

 良い夫婦 揃い求めた 小物かな
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by tabigarasu-iso | 2013-11-23 00:00 | 随筆 | Comments(0)

秘密、洩らしたな!

 今、国の安全保障に関する機密情報を漏洩した公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案が国会で審議されています。

 特定秘密保護法は、その漏えいが我が国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものを行政機関が「特定秘密」に指定し、秘密を扱う人、その周辺の人々を政府が調査・管理する「適性評価制度」を導入し、「特定秘密」を漏らした人、それを知ろうとした人を厳しく処罰するもの。

 この内容を見る限り、行政機関の力が大幅に強化される法案のようです。 特定秘密の細部が分からない為、行政機関の解釈で何でも特定秘密にされるかも知れません。特定秘密の管理状況の評価も行政機関ですから、適切か、不適切か、行政機関の主観で評価されることになります。

 更に、行政機関は特定秘密を洩らした人ばかりでなく、知ろうとした人も厳しく処罰する法案のようですから、特定秘密は何かインターネットで呼び掛けても処罰の対象になるかも知れません。行政機関に取り都合の悪い人は、洩らしたな、知ろうとしたな、何れかの理由を付けて逮捕することも可能でしょう。

 平日の 昼間の床屋 何故か混み
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by tabigarasu-iso | 2013-11-22 00:00 | 随筆 | Comments(0)

約束は守る

 約束の時間を過ぎても連絡がない。遅れて現れてもそれが当たり前のような顔である。食事の間も携帯電話を眺めて落ち着きがない。その挙句に会費も払わず途中で退席する。

 こんな約束を守らない人とは、出来ることなら付き合いたくないものだ。国際的な約束にも同じ事が言える。日本は、京都議定書で1990年に比べ二酸化炭素の排出量を2008~2012年で6%削減することを約束した。

 それも、原子力発電所の稼働を前提にしたもので、2011年3月の大地震による津波で原子力発電所の稼働停止など想定していない削減数値である。それ以降、火力発電所のフル稼働で二酸化炭素の排出量は増え、約束の数量を守るのは困難と思われた。

 事実、1990年比6%削減どころか2008年~2012年は6.3%の増加である。ところが、京都メカニズムを使うと8.2%削減となった。森林が吸収した二酸化炭素量や途上国の削減分を日本の削減分に算入した結果である。

 森林吸収分は、自国の森林育成で大気中の二酸化炭素を木に吸収させた量として妥当だが、途上国の削減分を金で買った後者は、大気中の二酸化炭素を削減した訳ではないから、削減したと言えるか微妙だが、約束を守った点は良い。

 2013年~2020年、日本は2005年比3.8%二酸化炭素削減の自主目標を掲げた。自主目標であるから、守らなくても約束違反にはならないものの、その策は途上国の削減分を買うものである。約束は守れるだろうが、地球温暖化を進める大気中の温室効果ガス削減とは言えない。

 乾き切る 大気に消える 人の息
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by tabigarasu-iso | 2013-11-21 00:00 | 随筆 | Comments(0)

リストラの風は吹く

 円安や株高でリーマンショック以前の景気に戻りつつあると楽観視する人もあれば、物の値段が上がり消費税も上がる景気の流れで商売は厳しく生活も楽にならないと言う人もある。

 どちらの割合が多いかと言えば、後者の方が多いようだ。そんな中で木枯らしが吹き、急激な寒さで風邪を引く人が増えている。経済苦や生活苦で悩み多い所に風邪まで引いてしまったなら堪らない。

 体調の思わしくない人にも、リストラの風は吹く。赤字経営から脱却して利益を生み出す組織に生まれ変わるには、構造改革が必要である。それが出来なければ倒産となり、社員全員が路頭に迷う。

 そうならないようにするのが本来のリストラだが、人員整理ばかりが先行して構造改革は後手になる。新しいサービス開発や新しい製品開発に必要な要員まで手放しては、リストラではなく自殺行為に近い。

 借金も 大きくなれば 国助け
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by tabigarasu-iso | 2013-11-20 00:00 | 随筆 | Comments(0)