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白髪の旅ガラス

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背筋の寒くなる話

 そこに居る筈のない人から声を掛けられたらどうします。夏日の眠れない夜でしたら肝ためしになるかも知れませんが、仕事をしながら足の指先が冷たい厳冬日には、それこそ背筋が凍ってしまうことでしょう。

 そんな妖しい人に覚えがあるなら、あれこれ想像が膨らみ恐怖に怯えるのが普通です。
「どうした。そなたの顔色は普通ではないが」
「何でもありません。疲れが出たのでしょう」
「それなら良いが、こんな寒い部屋で汗が噴出しているぞ」
「・・・」

 その時、店の主人は二十年近く真面目に務める番頭の尋常でない汗に心配したが、それ以上の詮索はしなかった。だが、番頭の耳には三年前に行方不明となった奉公人ツルの悲しい声がいつまでも消えない。
「お前さん、いつまで井戸の底で待てば良いの」

 店の跡取り娘との縁談話が持ち上がり、番頭は邪魔になったツルを使わなくなった古い井戸に突き落とした。それも、後から自分も必ず行くと言い含めてのことである。

 いよいよ、明日の祝言を控えた夕刻のこと、主人が番頭に店を任せ自分は隠居する段取りまで話が進んだ所で、騙されたことを知ったツルの成仏出来ない魂は番頭へ復讐することにしたが、肉体が滅びた今となっては手も足も使えない。

 そこで思い付いたのは呪うことである。
「お前さん、もう三年も待ちました。明日はそちらに顔を見せに行きます」
「・・・勘弁してくれ。俺が悪かった。明日は祝言・・・」
「あら、どなたと」
「店のお嬢さんだから、勘弁してくれ」
「分かりました。ツルは祝言の邪魔をするほど野暮ではありません。ただ、一つだけお願いがあります。古井戸の蓋を開け、ツルの為に手を合わせて下さいますか。そうして下されば、二度と現れません」

 暗闇の中、番頭は古井戸の蓋を静かに開けて手を合わせ、本心から詫びたく頭も垂れた。その時、突風が背中を押したようである。声を出す間もなく、番頭の身体は歯井戸の底へ消えた。

 作り話と分かっていても背筋は寒くなるものですね。特に色々な人生経験を積み、想像の幅が広くなればなるほど、その寒さは厳しくなるようです。

 今どこに 冬眠中の イモリ達
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by tabigarasu-iso | 2013-02-28 12:45 | 小説 | Comments(0)

明るい内の散歩

 夕方五時を過ぎれば辺りはすっかり暗くなります。それから散歩に出掛けても何も見えない暗闇ばかり。身体に付いた余分な脂肪を落とすだけの運動となります。

 それでも構いませんが他に楽しみがなくて散歩は長く続きません。膨らみ始めた蕾を眺めどんな花になるのか想像するのも楽しいものです。

 早めに仕事を切り上げて寒くないよう身支度を整え明るい内に散歩へ出掛けましょう。太陽を浴びて葉は輝き、飽きもしないで山茶花は咲いたり散ったり。

 どちらが散歩か分からない何組もの犬と主に出会います。そっと犬を招けば尾を振り主から離れて近寄る愛らしさ。ごめんなさいと主に頭を下げる楽しみも明るい内の散歩でしか味わえません。

 腕振って 急いで歩く 昼下がり
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by tabigarasu-iso | 2013-02-27 09:00 | 随筆 | Comments(0)

回収は早い

 何度か話題にした記憶のある一般廃棄物処理は、市や町の管理する焼却炉の性能やリサイクルの仕組みにより変わります。

 私の住む町では、プラスチックは燃えるゴミですが「燃えるゴミの日」ではなく、「プラスチックの日」に出さなくてはなりません。ただ、燃えるゴミの中に多少のプラスチック包装があっても処理してくれます。焼却炉で生ゴミを燃やす際、燃焼を助けてくれるからでしょう。

 しかし、プラスチックの日に燃えるゴミを出そうものなら、それが一部であっても収集してくれません。燃えるゴミを出す日ではありませんと注意書きに記入され、集積場に置いてあります。リサイクルに回す際、生ゴミが混在していては具合が悪いからでしょう。

 寒い中、忙しい作業であっても収集基準を厳格に守る姿勢には頭が下がります。こちらも、収集日を間違わず、ゴミの分別を徹底し、余分な貼り紙をさせないよう協力しなければいけません。

 金属類の回収時間には注意が必要です。いつもの調子で集積場に金属類を運ぶものなら、回収された後でそこに金属類はありません。リサイクルの価値があるのでしょうか、それとも量が少なく回収作業が捗るのでしょうか、いずれにしても金属類はいつもより一時間早く集積場に出す必要があります。

 明日は何 ゴミの種類 忘れない
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by tabigarasu-iso | 2013-02-26 12:45 | 随筆 | Comments(0)

ストレス解消ドラマ

 最後まで誰が犯人か分からないドラマは、長い時間にわたり気の休まる暇がありません。最初、被害者で登場した人物が最後には犯人であったり、犯人らしい行動を見せた人物は事件とは関係なかったり、犯人の智恵がドラマの中心になります。

 一方、最初から犯罪現場があり、犯人も明らかなドラマがあります。犯人を追い詰める刑事の手腕がドラマの中心になりますから、誰が犯人か推理する気遣いはなく、疲れた神経を休めるには都合が良い。

「どうも医者が怪しい」
 犯人が分かっているドラマを見慣れた人の意見です。
「いえ、被害者らしい女性が犯人だわ」
 意外な人が犯人と分かるドラマを見慣れた人は、同じドラマを見ながら別の意見になりました。

 果たして、怪しくない人が犯人の結末であり、長いドラマを見終えた時には満足感より疲労の方が増えたようです。ストレスを解消するには、水戸黄門のような時代劇の方が向くことでしょう。

 梅の花 北風受けて 散りもせず
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by tabigarasu-iso | 2013-02-25 12:10 | 随筆 | Comments(0)

本を・・・

 本を・・・で直ぐに思い付くのは、「本を読む」でしょう。携帯電話の普及に押され、車内で本を読む人が少なくなっていましたが、最近では文庫本を開く人が増えたようです。また、電子書籍を器用に操る人も目立つようになりました。

 その次に思い付くのは、「本を作る」出版社です。ベストセラーが少なく苦戦しているようですが、ニーズが多様化した結果かも知れません。そんな中でインターネットを利用して多種多様の要望に応える販社も出現しました。

 更に思い付くのは、「本を運ぶ」です。バス停で時刻通りに来ないバスを待っていますと、次々に大型トラックが多量の本を積んで本の物流センターから出て来ました。その運転手は揃って、仕事を得た幸福に笑みを浮かべています。

 インターネットを利用した電子書籍の100%の時代になれば、かような光景は見る事が出来なくなることでしょう。いえ、再生可能な森林資源で作成される紙の本はなくなることはないと思います。そう、本を・・・で考えるバス亭でした。

 本を読む 昼の電車に 春は来て
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by tabigarasu-iso | 2013-02-23 09:36 | Comments(1)

狐が狸に化ける

 和歌山駅で上り特急列車くろしお28号を40分ほど待つ間、ホームにある立ち食いそば、うどんの店に寄った時の話です。

 いつもの調子で、店のおばさんに注文しました。
「きつねそばをくださいな」
「きつねうどんですか」
「いいえ、きつねそばです」

 おばさんは笑って。
「はい分かりました。そばに油揚げを載せたものですね」
「それです」
 それでもと、おばさんの調理する手元を確かめました。

 間違いなく、きつねそばに違いありません。その時、和歌山駅は関西地区にあることを想い出しました。
「関西では、うどんに油揚げを載せたらきつねうどん、そばに油揚げを載せたらたぬきそばですぅ」
 昔、そう教えてくれた仕事仲間の顔が目の前に浮かびます。

 郷に入ったら郷に従え、食べ終えておばさんに言いました。
「たぬきそば、御馳走さまでした」

 神田では やぶそば燃えて 春遠く
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by tabigarasu-iso | 2013-02-22 18:10 | 随筆 | Comments(0)

 ISO19011と言うマネジメントシステム監査の指針には、監査チームリーダーの役割が次の様に定めてあります。
 1)監査の開始
 2)監査活動の準備
 3)監査活動の実施
 4)監査報告書の作成及び配付
 5)監査の完了

 これらは当り前のことばかりですから、少しも面白くありません。面白くなければ、誰も本気では監査を実行しようとはしないでしょう。それでは、計画を作成し、計画を実施しても、自浄作用として大切な監視機能が働かず、仕組みの改善やリスク予防が難しくなります。

 そこで環境ISO導入コンサルティング17年の経験から、現場で役に立つ監査チームリーダーの役割を紹介しましょう。

 1)監査の開始は、監査依頼者が監査に何を求めているのか、監査依頼者から本音を聞き出すことです。良くある監査の目的は、規格や計画への適合性を監査ですが、社長や工場長の本音は、売上を伸ばし、経費を抑え、利益を増やし、有能な社員を確保し、社会的な名声を得ることでしょう。従い、監査チームリーダーは監査依頼者と事前に腹を割って打ち合わせるのが重要な役割です。

 2)監査活動の準備は、監査メンバーの適性に応じて監査先や監査項目を決めなくてはなりません。例えば、法規制に関する担当部署を監査する場合、法規制に詳しいメンバーを充てる必要があります。監査メンバーに適任者が居なければ、監査先に法規制の要求事項と対応状況を事細かに説明して貰うしかありません。また、監査先の業務で何が課題か予め聞いて置くことが大切です。その課題が管理目標になっているか、目標になっていないか調べて置くと良いでしょう。

 3)監査活動の実施は、仕事の邪魔をしないようにして、手順や計画を展開する現場を見る当り前の事が重要です。良い点を見付けたら褒めることを優先するよう、監査メンバーに指示しましょう。改善点の提案が望まれますが、仕事内容が異なる監査メンバーには難しいことです。また、不適合を発見した場合、原因と対策まで監査を受けた部門と一緒に考えてあげなくてはなりません。監査相手のシステムを良くすることで、監査する側のシステムも良くなる連帯感が大切です。

 4)監査報告書の作成は、まず監査目的を実現出来たか、明らかにしなくてはなりません。次に、システムの何処が良かったのか、例えば教育が浸透していたのか、運用管理が徹底していたのか、記録管理が工夫されていたのか、整理して報告しましょう。また、システムの弱点も整理し、監査の依頼者に改善提案を行うことを忘れてはいけません。

 5)監査の完了は、是正処置が適正であったか、効果の確認を現場と記録で行うことです。処置が数ヶ月先になる場合は、処置計画の有効性を確認出来れば監査は完了ですが、有効か否かは論理的な矛盾がないことでしょう。

 長々と述べましたが、監査チームリーダーの役割の要は、自社の組織を良くするコンサルタントに徹することです。良い点を褒めて更に高いレベルへ導き、悪い点を改めてシステムを強化する支援者であることを忘れてはいけません。

 八幡宿 氷雨に追われ 熱い酒
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by tabigarasu-iso | 2013-02-21 12:14 | ISOマネジメント | Comments(0)

大衆食堂

 東京、名古屋、大阪など大都市にある駅に降り立てば、かなり遅い時間帯であっても飲食に困ることはないでしょう。しかし、同じ様な感覚で地方の駅に降りたなら、飲み屋は開いていても大衆食堂は殆ど見付からず呆然とするしかありません。

 生まれて初めて訪れた箕島の駅前、夜八時近くでしたから、食事は飲み屋でするしかないと諦めていましたが、大衆食堂の看板に照明が点いています。
「ごめんください」
「・・・」
「まだ営業していますか」
「ええ」

 来客など期待していない時間帯であったのでしょう。店の奥に引っ込んだ店員さん、恐る恐る再登場して言いました。
「ご飯ものは出来ませんが」
「ええ、結構です。麺類にしますから」

 或る日のカツ丼に懲りて、箕島ではラーメンを頼みます。醤油味で細麺、薄いチャーシューに半熟卵が上に載った簡素なものでしたが、腹も空いていた所為か旨く、看板に偽りのない安さでありました。

 闇の先 みかんの山が 見えました
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by tabigarasu-iso | 2013-02-20 07:15 | 随筆 | Comments(0)

雪見審査

 やけに冷え込む夜のこと。初めて訪れた八幡宿の駅前、雰囲気の良さそうな食堂に駆け込み、晩酌で一息ついてから夕食を頂きました。その味は予測した通りでしたから、さっさと腹に入れてホテルの湯船に浸かって芯から生き返ります。

 その翌日、相変わらず厳しい冷え込みに、幾らか落ち始めた雨も尾を引き始めました。「もしかしたら、雪になるかも知れませんね」
 初対面の人には、天気の按配から話し掛けるのが宜しい。
「そうならないと良いのですが」
「雪に見られる審査も良いものでしょう」

 相手の気持を解そうとした冗談が本当になりました。午前の審査を終えて外に出れば、視界を遮る雪のカーテンです。
「すいません。余計な事を口にしまして」
「いえいえ、誰の所為でもありません」

 シンシンと降りしきる雪に見送られ八幡宿駅に向かう途中、車で送って下さった方が言いました。
「記憶に残る審査になりました」
「それは暴走審査員のことですか、それとも雪」
「両方です」

 雪も降り 凍る指摘の 審査あり
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by tabigarasu-iso | 2013-02-19 17:28 | ISOマネジメント | Comments(0)

色々な意味で良い審査

 先生が生徒に行う体罰、生徒間の苛め、指導者が選手に行う暴言などが社会問題になっています。その度に再発を防ぐ必要が論じられるものの、相変わらず問題が紙面に登場するのは何故でしょう。

 環境ISO審査の世界では、審査員評価制度を取り入れて、受審者が審査員の力量を評価できるところもあります。その結果、問題があると判定された審査員は、どうしてそのような評価になったのか事情を説明しなくてはなりません。時には、審査員の職を剥奪されることもあります。

 審査で厳しい指摘を行えば、指摘された側は不快な思いをする場合があるでしょう。それを良い審査と評価する場合もありますが、中にはそれを審査員の問題とする場合もありますから、そうならないように気を配りながら審査しなければ、審査員の明日はありません。

 かような評価制度を教育やスポーツの世界に導入すれば、先生や指導者に向かない人は淘汰され、体罰、苛め、暴言の問題は解決するのではないでしょうか。要は、あるべき姿、それに向かった行動、行動の監視、仕組みの見直しのサイクルで、行動の監視を強化すれば良いのです。

 ちなみに、環境ISO審査員として頂戴した受審者の監視結果を紹介しましょう。
「素晴らしい環境ISO審査であったと思います。非常に丁寧にそして紳士的な対応をして頂きました。色々な意味で、新たなレベルアップに結び付く目標を発見できた審査だったと感じます」

 この中で、色々な意味でと言う点が気になります。どんな点を評価して下さったのか、それを具体的にコメントして下されば有り難い。ただ、それが環境ISO審査員としてではなく環境コンサルとしてなら、言葉を濁した理由も分かります。審査員の評価にコンサルの評価を入れたなら、審査員としては失格になりますから、審査員の立場を配慮してくれたことでしょう。

 北風を 斜めに受けて 春は来る
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by tabigarasu-iso | 2013-02-18 12:06 | ISOマネジメント | Comments(0)