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白髪の旅ガラス

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愉快な母親

 ある所に愉快な母親が居ます。むかしむかしの話ではありませんから、詳しい個人情報は省きまして、その内容を忘れないうちに紹介しましょう。

 その息子は、働きながら大学に通う手の掛からない好青年でした。そんな息子に親らしく、父親がまとまった授業料を用意して、息子に渡すよう母親に預けたのですが。

 暫くして、父親は息子に電話を入れます。
「お母さんの行方を知っているかい」
 自分も家を留守にする父親でしたから、それとなくアパート暮らしの息子に尋ねたようでした。それから数日後、大きな旅行カバンを引き、母親が息子の元を訪ねて来ます。
「あなた、お父さんにお礼の電話を掛けなさい」
 茫然とする息子に対し、母親は当然のことのように説明しました。
「あなたのお父さん、あなたに学費を用意してくれたの。それで旅行した帰りですから、貰ったあなたが礼を言わなければ変でしょ」

 息子の授業料で海外旅行しながら、貰ったものの一銭も使わない息子に礼を言わせたのです。何となく筋が通っているようで、良く考えればどこか筋の外れた話でしょう。

去る前に 残暑頼むと スイカ言い
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by tabigarasu-iso | 2011-08-31 12:01 | 小説 | Comments(1)

秋風に吹かれ

 このところの夜の涼しさは安眠を誘う。
 朝方に跳ね除けた夏布団を足元で探し。
 芯の温まるまで床の中で身体を丸める。
 覚悟を決めたところで寝巻きを脱いだ。
 それから外出支度を整えるまでは早い。
 強く輝き始めた太陽の下で秋風が吹く。
 出遅れた蝉も鳴き始めて直ぐに止めた。
 バス待つ間も吹く風に行く先を聞けば。
 冷気に押されて南国へと言ったような。

風受けて 天空に舞う 赤トンボ
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by tabigarasu-iso | 2011-08-31 00:15 | | Comments(0)

王者失格

 優勝間違いなしの選手が、スタートのフライングで失格した。以前なら、ニ度目のフライングで失格になったものである。それが、一度目から適用されることになった結果だ。

 タイムを争う競技で、人より早くスタートするのはルール違反であり、仕方のない判定であろう。だが、短距離はスタートで人の背中を見てから走り出したのでは遅く、号砲の鳴るタイミングを予測して一歩出す。

 記録の芳しくない選手は、フライングする危険を冒しても予測スタートする。今回の試合では、力の差が歴然としていたから、それほど慌ててスタートする必要はなかった。

 スタートは背中を見て、途中で横顔を確認し、最後に視界を遮る者はいない。そんな王者の走りを期待していた人は、大いに失望したことであろう。

最初から そんなに慌てず 後で抜き
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by tabigarasu-iso | 2011-08-30 18:05 | 随筆 | Comments(0)

今夜は秋刀魚の塩焼き

 待ちに待った秋刀魚の季節になった。炭火で焼く贅沢までは望まないが、こんがり焦げ目が付くまで焼き、みずみずしいダイコンおろしをタップリ盛り、その上に醤油をなみなみと掛けて、箸で大きく挟み取り、暖かい御飯に載せ、大きく開けた口に放り込む。

 片側で御飯を一杯食べ、全体では二杯飯になる。こんなに沢山の御飯を食べるのは、他にはカレーライスだけだ。それに頻度が毎日であっても、飽きないで美味しく頂ける。はて、かように秋刀魚が好きな訳は、どうしたものか。

 山国で生まれ育ったことが原因である。行商人が売りに来る魚は、塩漬けに近いものばかり。川魚も食べる機会はあったが、当てにするほど捕獲できない。その点、秋になれば新鮮で安い秋刀魚が山国にも出回り、一匹丸ごと食べるのが夢であった。

 その夢が叶うようになった今でも、『夕飯のオカズ、秋刀魚だよ』と聞けば、よだれを垂らして跳ぶように帰宅する。そんな昔を知らない人には、秋刀魚に執着する人の姿は、異常に映るかも知れないが、想い出も味に加わり旨いのだから構わない。

秋刀魚食べ 頭残さず 猫が泣く
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by tabigarasu-iso | 2011-08-30 08:55 | 随筆 | Comments(0)

落とし穴

 余興で掘った落とし穴に、驚かそうとした人と驚かされた人が落ち、二人とも窒息して亡くなったと言う。それも若い夫婦と言うから、何とも悲しいニュースである。

 穴の大きさ、余興にしては大き過ぎたようだ。テレビ番組で落ちる様を人に見せるものではないから、身長より遥かに深い2.5メートルもの穴は掘り過ぎである。

 その昔、遊びの定番として落とし穴作りがあった。遊び仲間が全員揃って掘るものだから、肝心の落ちる相手が居なくなる。それでも、土を掘り、誰が落ちても怪我をしない高さで止め、穴にふたをして、誰かが落ちる様を想像するだけで胸が高鳴った。

 一方、ベトナム戦争では、それこそ落とし穴は命を取るのが目的だから、穴の底には先を尖らせた竹が無数に挿してあり、映画を観ただけでも身の毛がよだつものである。

 悲しいことは、遊びでありながら死にもつながる落とし穴の恐ろしさを知らないことであろう。これは、危険と安全の加減を知らず大人になった子供の悲劇とも言える。

秋風に 百日紅さえ 店仕舞い
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by tabigarasu-iso | 2011-08-29 12:21 | 随筆 | Comments(0)

涙のラストシーン

 第二次世界大戦時のドイツ・ナチスは、自らの民族の優秀性を掲げ、それを阻害する民族としてユダヤ人を抹殺しようとした。収容所に集められた大勢のユダヤ人は、抵抗する術もなく弾丸や毒ガスで死ぬ。

 同じ党員ながら、シンドラーは収容されたユダヤ人の救出に賄賂を使い、千百名を収容所から救出した。その映画を観ながら、ドイツ軍の降伏で戦争が終わった時、逃亡する前に言ったシンドラー役の科白に泣かされる。

「この車を処分すれば、あと十人の命が救えたのに。胸に付けた党員の金バッチを処分すれば、もう一人の命が救えたのに。それをしなかった」
 何とも出来過ぎた科白だが、それが嫌味にはならず胸を打つから不思議なものだ。

 何回も観ている映画だが、毎回胸を打つ場面が違う。観る側が年輪を重ね、共鳴する点が変わるのは仕方ない。変わらない点は、人が家畜のように扱われる場面に対する我慢ならない憤りと涙のラストシーンである。

救いたい リストに載らぬ 人はなし
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by tabigarasu-iso | 2011-08-29 08:47 | 随筆 | Comments(0)

無駄な争い

 労働力が豊富でしかも賃金の安い中国は、世界の工場と言われ目覚しい経済発展をしている。だが、いずれ賃金が上昇に転じ、国外のメーカーが中国で物を生産するメリットは失われることだろう。

 その日は、それほど遠くはない。専門家が、中国労働者の賃金の上昇率から国外メーカーの採算分岐点を弾き出したところ、十数年がコストメリットの限界だそうである。

 その後、中国が世界の工場から脱却していなければ、多量の失業者を抱えることになるだろう。その時、その役割は賃金の安い他の国で展開される。

 いずれにしても、コスト競争では労働賃金の安い国には勝てない。我が国は、地球環境を考慮した技を盛り込み、相手を満足させる高い品質で勝負する必要がありそうだ。

ガラス窓 ヤモリ蠢く 秋の夜
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by tabigarasu-iso | 2011-08-28 13:33 | 随筆 | Comments(0)

頭交代

 毎年恒例の首相交代が今年もある。
 首相が代わると大臣も連帯で代わることに。
 行政の頭が頻繁に代わって大丈夫なものだろうか。
 頭が代わっても指示が同じであれば問題ない。
 それでは頭など必要ないことになるだろう。
 内政はそれで良いかも知れないが。
 外交はそれでは困る。

 この世に頭のない動物など居ない。
 頭に相当する人の要らない組織の存続もなかろう。
 それが毎年恒例の交代では頭から下が困る。
 一番困るのは足の辺かも知れない。
 その足は我々である。

 混乱に 頭交代 先見えぬ
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by tabigarasu-iso | 2011-08-28 11:00 | 随筆 | Comments(0)

酔い

 酔わない酒なら、飲まない方が良い。少なくとも、健全な心身であれば、酒を飲んだら酔うのが当り前である。

 その酔い方、一通りでない。自宅の居間で酒を飲みながら映画を観る。初めは覚えているが最後の面白い所では眠ってしまう。こんな眠り薬の酒は、百薬の長と言える。

 親しい客人と飲む酒は、酒の量より話が多い。仕事から互いの趣味まで話の範囲が広くなるから、酒は舌の潤滑油として下請けに徹する。

 気の合う仕事仲間と飲む酒は、心を開いて飲む所為か酔いも早い。相手の話が酒の肴になり、話を聴くだけで酒が旨く沢山飲める。

 一番避けたい酒の席は、大勢で飲みながら話に花が咲かない砂漠の宴であろう。隣の人と酒を注しあい宴の終りをじっと待つ、忍耐の酒は遠慮したいものである。

酔い覚めに 酒の飲み方 想い出し
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by tabigarasu-iso | 2011-08-27 13:57 | 随筆 | Comments(0)

雷が鳴ったらへそを隠せ

 雷が鳴ったらへそを隠すように言われた。それは昔の話で、今では敢えてへそを出す人のほか、そんなだらしない姿をした子供はいない。

 大きなビルディングの中、久し振りに雷が落ちる激しい音を聞きながら、そんな昔を想い出した。ここなら、賢い雷は、攻めても無駄な場所だと判るだろう。

 そうとは知らない人は、近場に雷が落ちる度、声を出している。
「良く平気ですね」
 そう言われても、へそを盗られる心配がないから、パソコンの画面を静かに睨む。

 その間、無駄に落とされる電力がもったいないと考えた。これを旨く利用できたら、リスクの大きい原子力発電は利用しなくて済むだろうに。

強過ぎる 雨に一言 文句言い
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by tabigarasu-iso | 2011-08-27 00:30 | 随筆 | Comments(0)