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白髪の旅ガラス

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命を洗う

 慌しい生活環境の中では、どんなに強靭な命も疲れて次第に汚れが溜まる。
 そのままにして置けば、本人の意志に反して突然命が止まることもあるだろう。
 そんな時には寂れた温泉で誰も居ない湯船に一人で浸かり、命の洗濯をすると良い。
 周囲の山々は肌色から薄緑に色を変えながら、その丈をゆっくり伸ばしている。
 そこから溢れ出たエネルギーは四方に舞い散るから、裸の湯治客にも届く。
 これを想像するだけで、その湯に行けない人も命を洗うことになるだろう。
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孫一家 迎える爺婆 心晴れ
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by tabigarasu-iso | 2011-04-30 13:33 | 小説 | Comments(0)

アンバランス

 新幹線の指定席、名古屋駅を過ぎた辺りで二人掛けの席は混んだまま、三人掛けの席は空きが目立ってきます。自分、二人掛けの通路側に席を確保する習慣が着いていますから、三人掛けの空いた席を横に見ながら、アンバランスの訳を知りたくなりました。

 まず、三人掛けの席は嫌われているのかも知れません。真中に座った人は、両側の人に気を遣わなければなりませんから、真中に座る可能性の無い二人掛けを選ぶのでしょう。岡山から新大阪までの新幹線には、左右とも二人掛けの車両があり、料金も並ですから感心したことがあります。

 次に、そうした心理を承知で、席を指定する券売機のソフトが作成されているに違いありません。従い、満席から一挙に空席が目立つ区間では、三人掛け席の空きが目立つのでしょう。つい空いた席へ移動したくなりますが、落ち着いた所で予約者が来たら堪らない。
 
 そんな心配をするより、二人掛けの自分の席が落ち着きますから、左は満席で右は空席のアンバランスが生じるのでしょう。グリーン車は、左右とも二人掛けですから、アンバランスなど鼻から心配せずに済みます。もっとも、カラスがグリーン車に乗っては、それがアンバランスかも知れません。



浜松の 海上走る 二人掛け
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by tabigarasu-iso | 2011-04-29 00:27 | 随筆 | Comments(0)

親切な車掌

 旅先からの帰路、特急電車の自動ドアが故障したようです。車掌が数人集まり、人感センサの箇所を盛んに拭きましたが、自動ドアは反応しません。

 麦酒を片手に暇を持て余して見守る中、一人の車掌がデッキに残り、乗客の通る度にドアを手で開け閉め始めました。その光景は、感心するやら呆れるやら、不思議な眺めです。

 暫く経ち、そのドアに紙が貼られました。近寄って見れば、このドア故障につき手で開け閉めしてくださいとの文面です。

 はて、先程までドアを手で開け閉めしていた若い車掌さんの努力は、どう評価してあげたものでしょう。

 最初から貼り紙すれば済んだことでしょうが、詫びながら手で開けてくれた車掌の親切心に感謝したいものです。



自動化も 人の温もり 忘れない
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by tabigarasu-iso | 2011-04-28 08:44 | 随筆 | Comments(0)

スイッチバックの道

 急な階段、真直ぐ上がるより斜めに上がった方が楽だ。汽車も同じように、急な斜面を上る際には、出来るだけ傾斜を緩くして、らせん状に上るか、スイッチバック方式で上がる。

 両者ともテレビ映像でしか見たことがないが、たまたま後者を体験する機会に恵まれた。それも、汽車ではなく乗用車のことだから、かつて映像では見たことのないものである。

 六人乗りのワゴン車で、葉桜に囲まれた山道を上り、山頂の現場にある環境設備を確認しに行く途中、坂を上り切った踊り場で、車はバックのまま坂を上がり始めた。これは、行く先が見えないから大いに不安である。

 再び坂を上り切った踊り場に出て、今度は前向きで坂を上がった。前方が見えるから、安心である。

「珍しい道ですね」
「ええ、道幅を広げる改修工事の話もありましたが、敢えて残すことにしたようです」
「後退しながら上る道、残して正解ですね」
「はあ」

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頂へ 後退しつつ 上がる道
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by tabigarasu-iso | 2011-04-27 00:27 | 随筆 | Comments(0)

ほうとうの味

 ほうとうの味を確かめたくて
 山梨は甲府の駅前にある店へ
 待つ間に酒の入ること何杯も
 漸く出されたほうとうの見事
 一人前を二人でも食べ切れず
 酔いを醒まして満腹となった
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ほうとうの 息子にならず うどんなら
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by tabigarasu-iso | 2011-04-26 08:15 | 随筆 | Comments(0)

生きるエネルギー

 確か、先週行ったばかりの甲府へ再び向かう車窓には、再訪とは思えない景色が映ります。と言うより、前回は夜の移動で車窓は暗闇でしたから、甲府まで見たのは照明だけで、何も見ていないに等しく、今回の昼の移動は春の景色に眼を見開くばかり。

 何より、草も木も萌える緑が生きるエネルギーを四方へ放ち、その一部が観る者に届くのが判ります。それは、線路脇の名を知らない草からも放たれ、近いだけに次々と舞い込んで終りを知りません。

 残念ながら、それを余すことなく取り込む容量が無く、体内から毀れて行くのが残念です。もしも貯めて置くことが出来るなら、観る者の命は如何ほどまで延びることでしょうか。ひょっとしたら、不老長寿とは、この問題を解決することかも知れません。

 そんな愚にも付かないことを想像させるのも、新緑の魔力でしょう。秋の枯野を見ても心臓の周辺にザワツキを覚えることはありませんが、天に向かって伸びる新緑の波は、そんな気分にさせるようです。

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稜線の 一寸伸びる 小春かな
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by tabigarasu-iso | 2011-04-25 20:07 | 随筆 | Comments(0)

ハナミズキのほう咲く

 誰もが桜の話題に飽きる頃、ハナミズキの枝先には、花に良く似た四葉の白色や赤色の「ほう」が開く。花なら開花と言えるが、そうではないから表現に気を遣わせる。

 ハナミズキは、北米原産の落葉高木であるから、本来なら街路樹や庭木には向かない。それを無理して狭い道脇や庭に植え込むには、高木になる素質を抑え込む剪定が必要になる。

 その剪定の方法が難しい。単に成長を止めるだけなら、伸びた枝先を切り落とすだけだから素人にも出来る。「ほう」が開く様子を楽しむには、その芽を切り落としてはいけない。

 その選別は素人には難しく、剪定の職人に依頼して十数年経たが、春先になると他所のハナミズキは「ほう」を開くが、庭先のものは葉ばかり。

 思い切って剪定職人を替えてから今年で二年目になる。今年は見事な「ほう」が開き、長年の念願が叶う春になった。
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ハナミズキ 見事な花は ほう咲いて
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by tabigarasu-iso | 2011-04-25 01:47 | 随筆 | Comments(0)

家路

 彦根は琵琶湖に近い所為か、何度訪問しても晴れた空を見た記憶がない。この度も例外ではなく、朝から厚い雲に覆われた空は重く、とうとう帰り際には雨まで挨拶に降りて来た。

 それとは関係なしに気分は明るく、新しい環境ISO担当者を前に背広を脱いで。
「皆さんは、何と幸運な方でしょう。三ヵ月後には、環境ISOの審査を体験することができます。普通なら、早くても一年待たなくてはなりません」

 すると、正直な方が手を挙げて。
「本当に幸運でしょうか。審査対応は、重い作業のような気がします」
「それは、正しい感覚です。外部の審査員は、皆さんを新人とは考えません。環境ISOを導入して十年近い組織ですから、皆さんをベテランの担当者だと考え、遠慮無く質問することでしょう」

 相手の顔は、彦根の空と同じ色になった。それからは、講師の話を一言一句聞き漏らさないよう、全員が真剣にメモを取り出す。こうなると、何を話しても理解は早い。三時間の講義中、居眠りするのは立会人だけである。

 さて、傘を差す手は濡れているが、充実した心は熱く苦にならない。足取りは軽く、一週間の旅を終えて、一匹と二人の待つ家路に着いた。

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雨上がり 霞か雲か 山隠し
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by tabigarasu-iso | 2011-04-23 07:58 | ISOマネジメント | Comments(0)

晴れの国から曇りの国へ

 岡山県は晴れの国と言われている。青空の下、西大寺駅前の葉桜を見下ろす裸祭の銅像ですら、皆が揃い手を上げて喜ぶ。

 年度初め、異動者を相手に環境ISOを語りながら、先月の出来事を想い出す。
『大変な事が起こりました』
『はて』
『大きな地震で津波が起こり、船が陸に打ち上げられています』
『・・・』

 確か、その時の話だけでは、地震と津波の関係が飲み込めなかった。岡山駅の混乱振りで状況を理解し始め、名古屋駅近くのホテルを確保し、テレビで津波の映像を見た時、事の重大さを知ったものである。

 それから一ヶ月余り、人前で汗を掻く幸せを感じながら、講演を終えて彦根に向かう。米原駅に向かう途中の車窓には、水を張った田圃が広がる。

 薄暗闇の彦根駅に降りて人の少ない通りを歩き、彦根城の堀に面したホテルへ向かう。掘に面した高い石垣の上には、満開の桜が照明の中で何本も並んで待っていた。
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満開の 桜に浮かぶ 彦根城
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by tabigarasu-iso | 2011-04-22 12:34 | 小説 | Comments(0)

小淵沢から岡山まで

 中央本線の小淵沢駅を降りれば、桃の花が咲き乱れ、ツツジの艶やか紫色も赤松林に色を添える。辺り一面、春の喜びに浸る花や木を見る度に心が和む。

 一方、視点を遠くに合わせれば、周辺を囲む山肌には雪が残る。その所為か、日陰を歩けば吸い込む空気も冷たく肌寒い。

 旅先から旅先へ移動するコンサル、小淵沢駅で立ち食いうどんを腹に入れた。ゆっくり食堂で食事をしたいところだが、今日中に山陽本線の岡山駅まで移動するには、その余裕が無い。

 三両編成の各駅停車で塩尻駅に向かい、特急しなのに乗り換え名古屋駅を経由し、新幹線で岡山駅に着く頃には真夜中になるだろう。

 こうして、かつて余り経験したことの無い山国の春を追い掛ける移動は、生まれ故郷を想い出させる旅となった。
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塩尻の 大気寒さに 背を丸め
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by tabigarasu-iso | 2011-04-22 06:58 | 随筆 | Comments(0)