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白髪の旅ガラス

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普通の暮らし

 何も、衣食住に関して贅沢をしようと思ったことはない。普通の暮らしが出来れば、それで良いと考えている。

 ところが、その普通の暮らしが容易なことではない。被災された方が自衛隊の用意した風呂に浸かり、涙を流す場面を観て痛感した。

 或る日を境にして、普通の暮らしが出来なくなる。それは、物より心の問題かも知れない。一瞬にして、妻や子を津波に飲まれた方の悲しみは、如何ほどであろうか。

 住み慣れた家が瓦礫と化した光景を前に、茫然と立ち尽くす方の落胆は計り知れない。けれど、いつまでもそうして居ても何の変化もないから、「ヨッコラショ」と立ち上がることだろう。

 その時、そっと手を出し「つかまりなよ」と言えるようにしたいものだ。それが、普通の暮らしでありたいと思う。
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腹一杯 カレーで満たす 春の宵
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by tabigarasu-iso | 2011-03-31 08:50 | 随筆 | Comments(0)

暑さ寒さも彼岸まで

 昔の人の言うことには、耳を傾けてみるものです。長年の実績、経験、知恵、それに言い伝えなどから生まれた格言は、納得することばかり。


 暑さ寒さも彼岸までと言われますが、いよいよ寒さも終わるようです。春の彼岸過ぎ底冷えする日が何日か続きましたが、今日は一転して小春日よりになりました。

 寒暖の差が無くては、桜は咲く次期を知ることができませんから、いよいよ開花が始まることでしょう。そして今年も生き長らえて、満開の桜を見られる幸福を味わえそうです。

 東北と関東で起きた大地震で亡くなった多くの方は、あの世で開花を楽しむことでしょう。そう信じないことには、余りにも胸が痛む惨事でした。

 それにしても、いつまた災害が起こるのか、人の浅知恵では推し測れませんから、今を充分に生きる他ないようです。
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暑過ぎる 車内に埋もれ 春体感
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by tabigarasu-iso | 2011-03-30 18:06 | 随筆 | Comments(0)

暖房レス電車の功罪

 節電の一環として電車の暖房が切られた。電力が不足する非常時のことだから仕方がない。その効果は如何ほどであろうか。冷えた身体で乗り込んだ人は、冷えた車内に愕然とするに違いない。

 通勤ラッシュを過ぎた時間碓であったから、幸いにして座ることはできた。徐々に足元が冷えてくる。隣席の人など、オーバーの襟を顔に被せ、必死に暖を取ろうとしていた。

 後の人は、既に冷え切ったようで盛んに咳き込む。別の席からも咳が聞こえる。予防しようにも飛散する菌が多過ぎて、身体の耐性を信じるしかない。

 節電は、個人の生活圏なら自分で判断すれば良いが、公共の場では他力本願になる。その際、身体を健全に維持する電力は確保し、そうでない電力は削減する適切な判断を望みたい。
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放射線 見えないだけに 不安植え
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by tabigarasu-iso | 2011-03-30 08:39 | 随筆 | Comments(0)

間引き放送

 原子力発電所の被災により、電力供給が危うくなった。そこで、計画的な停電が実施されている。

 何処の駅でも照明が消されて薄暗い。これまで必要以上に明る過ぎたから、何の不自由もなく誰も当然のことと思う。

 昇降のエスカレータも運転休止になっている。健康な人には問題ないが、身体の不自由な人は困るであろう。もっとも、そんな駅にはエスカレータがあるから、そちらを利用すれば良い。

 家のエアコンは電源コードをコンセントから外した。当初は節電のためであったが、今では放射線に汚染された大気を無理に取り込まない為である。

 テレビの字幕放送に無駄なメールなど止めようと流れた。はて、昨今のテレビ番組で有益と思われるものは珍しい。

 朝から夜まで連続して放送する必要もなかろう。そろそろ間引き放送を検討しては如何なものであろう。

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誰でもね 自分のことは 棚に上げ
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by tabigarasu-iso | 2011-03-29 12:14 | 随筆 | Comments(0)

床屋は無口な方が良い

 二十年近く通いながら殆ど会話らしい会話をしない床屋がある。
「いつもの」
「ええ」
 それだけで散髪が済むまで余分な話はしない。

 室内にはテレビかラジオの音声が流れている。それに興味があれば耳を立て、そうでなければうたた寝すれば良い。用が済めば軽く肩を叩き、合せ鏡で後頭部を見せてくれる。
「お疲れ様でした」
「いいえ」

 それでも、代金を支払い、店を出る際には忘れない。
「ありがとございました」
「お世話様」
 頭も心も気分良く帰路に着く。

 床屋は無口な方が良い。あれこれ喋りたがる床屋は、余分なことも口にする。それが気に障ることもあったから、この床屋を見付けて安堵したものだ。それに、お喋りが過ぎて、肝心の手先が疎かになり、耳を切り落とされたら堪らない。
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大鏡 睨んで悟る 床屋かな
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by tabigarasu-iso | 2011-03-28 08:54 | 随筆 | Comments(0)

一味工夫

 満足に食事のできない人が居る。それを思えば食事が旨い不味いなど言えない。けれど、同じものが続けば飽きがくる。

「どうした」
「・・・・」
 腹は減っているが食欲が湧かない。

「鼻の先も湿っている。目付きも宜しい。とすると・・・」
 主人は立ち上がり、冷凍庫から挽肉を取り出し、フライパンで炒め始めた。その上に、仕上げとして醤油を数滴垂らす。

 香ばしい匂いが部屋を満たしたところで、一味工夫したそれを食事の皿に載せた。
「フー、フー、フー」

 息をするのも惜しんで平らげる。殆ど食事の内容は変わらないが、臭覚の鋭い僕には、大きな変化になった。
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風も止み オナガ鳥鳴く 枇杷の木に
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by tabigarasu-iso | 2011-03-27 12:58 | 小説 | Comments(0)

馬鹿な風

 家の外は何かに腹を立てる風がやかましい。
 勢い余って家を左右に揺する暴挙に及んだ。
 仕方なく身支度を整え外に出て風を探そう。
 何処かに潜んでいた風は背中を強く押した。
 一緒に居た老犬にも遠慮はしない非情な風。
 倒れそうなった相棒を両手で抱えて言った。
 弱いもの苛める馬鹿な風を覚えておこうか。
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明日にでも 桜咲くよと 風も言い
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by tabigarasu-iso | 2011-03-26 13:04 | 小説 | Comments(0)

夜鳴き

 どうしたことであろう。
 悲しそうに老犬が鳴く。
 痛い所はなさそうだが。
 気分替え外気に触れた。
 直ぐ鳴き止み歩き出す。
 暫く好きにさせてみた。
 己を自覚した様である。
 足を洗って貰えば笑み。
 枕元に老犬の床を移す。
 互いの寝息が同期した。
 もはや夜鳴きは終わり。
 朝まで両者は夢の中に。

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夜鳴きする 老いた犬抱き 散歩して
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by tabigarasu-iso | 2011-03-25 08:10 | 随筆 | Comments(0)

鶯鳴き

♬ホー♬ホケキョ♬ケキョ♬ケキョ♬ケキョ♬
 東北地方から関東地方で発生した未曾有の大地震の余震が続き、枕を高くして眠れない夜が続く早朝のことである。

 一年振りに鶯の鳴く声が聞こえた。
『まさか、夢ではあるまい』
 そう思いながら目を開け、声の所在を想像してみる。
 
『梅の花が咲いている庭は何件もない。多分、あの家か』
 その家の梅は、今が花の見頃だから、思わず鶯も立ち寄ったに違いない。もう一度鳴かないか、布団に横たわったまま息を凝らした。

♬ホー♬ホケキョ♬
 期待に応えて、一声鳴いてくれる。
「♬ホー♬ホケキョ♬」
 口笛で真似た。
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鶯の 声を頼りに 主探す
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by tabigarasu-iso | 2011-03-24 18:41 | 随筆 | Comments(0)

三度目の静寂

 予定の時間より四十分遅れて計画的な停電になった。部屋の灯りは消え、テレビドラマも面白い場面のまま終わる。

 もとより人気の少ない住宅街は、ゴーストタウンになった。生憎の天気にカラスの鳴き声も聞こえない。

 外が未だ明るいのに静寂が訪れるとは、この街に移り住み二十年余りになるが初めてのことである。

 車で何処かへ出掛けて気分転換しても良いが、信号の働いていない通りを走る愚は犯したくない。

 コタツに入れた湯たんぽを当てにして、電池駆動のパソコンを起こした。回路を冷やすファンの音がうるさいが、静か過ぎると集中できないから丁度良い。

 そんな文面を入力している時であった。かなり大きな揺れが右に左に家を動かす。辺りは静まり返ったままである。

 停電に伴う静寂に慣れ、その停電を引き起こした地震にも慣れた。しかしながら、大地には安定を取り戻して貰い、その上で人が生きる喧騒の渦に巻き込まれたいものである。
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停電に 地震重なり 腹を決め
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by tabigarasu-iso | 2011-03-24 08:55 | 随筆 | Comments(0)