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白髪の旅ガラス

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東雲の頃

 「東雲」を「シノノメ」と読める人は少ない。「御徒町」を「オカチマチ」と初めて見た人が読めないのと同じである。似たような難解な漢字の読み方に出合うたび、その謂れを知りたくなるものだ。

 東雲は、日本の古語で夜明け前の茜色に染まった空のことを言うそうである。言われてみれば、漢字は頷けるものの読み方が納得出来ない。それは、古語を使う習慣が我ら日本人から失せて久しいからであろう。

 ところが、昔から慣れ親しむ地元の人は違うものだ。読めて当然であり、間違って「トウウン」などと読もうものなら、素養の無い人と思われる。そんな時には、知った顔をしないで地元の人に聞くが良い。

「沼波町、何と読みますか」
 ノナミチョウと読めるのは、彦根の方くらいであろう。この読み方も、一度聞いた程度では直ぐに忘れる。何度も繰り返さなければ、疲れた脳は覚えてくれないから、困ったものだ。

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東雲の 弱き光に 鳩起きて
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by tabigarasu-iso | 2010-06-30 08:37 | 随筆 | Comments(0)

疲れた子供

 秋葉原駅の地下深くに潜り、つくばエクスプレスに乗車した時のことです。折り返し始発電車の車内に入り、足を前に伸ばせる席を探して座ったところ、前席には首に携帯電話、小袋、バックを掛けた小学一年生くらいの子供が眠って居りました。

 その子供は、出発の時間が迫っても起きる気配はありません。終点に到着したのが判らないのでは可愛そうに思い、傍に寄り軽く揺すりましたが、何の反応もありませんから、様子を見守ることにしました。

 途中で眼が覚めれば、降車駅に戻る智恵はあるだろう。そう思いながらも、顔を良く見ますと、額と頬に出来たばかりの擦り傷があり、手の甲にも傷跡が認められます。もしかしたら、家庭か学校で苛めに合っている子供ではないでしょうか。

 車内だけが安眠できる場所だとすれば、そっと寝かして置いてやるのも良いでしょう。かように想像を膨らませ、腕時計を確かめると発車してから二十数分が経ち、南流出と言う駅に電車は停車しました。

 すると、その子供はどうでしょう。徐に目を覚まし、立ち上がると荷物をあらため、落とした菓子の破片まで拾い上げ、悠然と降りて行きました。どうやら、予定の乗り越しであったようです。

 それは良いとし、顔の傷が苛めでないことを祈りながら、疲れた子供の後姿を見送りました。

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つくば駅 ガマの鳴く声 ほど遠く
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by tabigarasu-iso | 2010-06-29 01:35 | 小説 | Comments(0)

枇杷と野鳥

 梅の青い実が大きくなりました。
 枇杷の実もオレンジ色が鮮やかになります。
 間もなく梅の実は全て収穫されました。
 枇杷の実は少しもぎ取られ味見に回ります。
 残りは梢に残されました。
 やがて枇杷の実は梢で熟して行きます。
 その匂いでオナガ鳥が立ち寄り実を啄ばみました。
 それが去ると雀が立ち寄ります。
 オナガ鳥は芽が出た頃にも立ち寄りました。
 枇杷の木とオナガ鳥は相性が良いようです。
 カラスは高い所から見るばかり。
 観察が好きな鳥のようです。
 オナガ鳥が恐いのかも知れません。


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枇杷の実を 食べず眺める 烏あり
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by tabigarasu-iso | 2010-06-27 10:18 | 随筆 | Comments(0)

寝たまま

 誰でも歳を取れば、骨は脆く筋肉は緩くなるものです。我家の愛犬も例外ではなく、若い頃には考えられなかった、時にウンチの塊を寝たまま排泄しますから、それなりの対策を考えなくてはいけません。

 まずは、寝る前に不要物を放出させることです。これが簡単な作業のようで意外と難しい。放出するものが無くなれば、朝と夜の散歩は終わりになりますから、我慢出来なくなるまで身から放つことはありません。

 そこで考案したのは、直腸に溜まった放出物を確認する術です。愛犬の脚を上に抱き上げれば、尻と尻尾は下を向きますから、尻の周辺を親指と人指し指で押して、直腸の内部に物があるかどうか確認する単純な試み、騙されたと思われる方は追試してみましょう。

 最初は空でも指の外圧で刺激された直腸は動き始め、間も無く放出する物が上から降りてくるのが指先で判ります。それは、当事者にとっても一大事ですから、否と楽になりたい気持に揺れた頭を振ることでしょう。

 しかしながら、楽に勝るものはありません。放出物の後始末を行う備品は、術を仕掛ける前に準備して置き、その姿を確認したなら速やかに包み込み、潔く胸を張り帰宅してからトイレに流すのです。

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【コンサル川柳コーナー】

№72 玉を蹴り 網に入れ込み 何故騒ぐ

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by tabigarasu-iso | 2010-06-26 01:21 | 随筆 | Comments(0)

昔を語る古狸

 十八年前から同業の仲間と酒を飲む。長年、同じ目的で汗を流し、所属する組織の長短を知る間柄だから、余計な説明は要らない。これから何が必要か、人の育成か、情報の交換か、顧客の開発か、遠慮なしの意見を酒の肴に、自分の好みに合わせ、自分のペースで酒を飲む。

「社員を採用するとしたら、どんな分野の人が欲しい」
「営業専門家が欲しいですね」
「どんな営業が出来る人が欲しい」
「審査やコンサルの判る人が良いですね」
「コンサルタントは必要ないか」
「仕事を受注することが先決ですね。仕事が出来る人は、外部にも沢山いますが、仕事を取れる人は少ないですから」
「なるほど。その次に採用したい人は」
「仕事の取れるコンサルタントですね」
「良く判った」

 こうした遣り取りが二時間余り続き、酒のビンは空になる。食べ過ぎず、飲み過ぎず、過去を振り返らず、互いに良い点を認め、これからの組織を語れば気分も明るく、もう一本酒を注文しても悪くはないが、明日の仕事を考えお茶にした。

「月に一度は、こうした会議も良いですね」
「費用対効果を考えても、意義があるから、異議なし」
「それでは、次の会合は」
「来月今夜としようか」
 こうして、腹の出始めた古狸の会合は、お開きに。
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枕替え 寝心地を問う ホテルマン
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by tabigarasu-iso | 2010-06-25 11:08 | Comments(0)

コンサル戦士Ⅶ

 コンサル戦士が組織の課題解決を支援する智恵を語り、それを面白い話に仕上げれば、コンサルソロリの物語が出来る。それを森が語るには、心に余裕のある時が良い。森は次郎を誘い、通い慣れた居酒屋の暖簾を潜った。

 取り敢えず麦酒で乾いた喉を湿らせてから、氷の間を泳ぐウイスキーを炭酸水に溶かし込んだハイボールを手にした森は、二杯目の麦酒を飲み終えようとする次郎に向けて、コンサルソロリのネタを語り出す。

 一昔の話だが、環境ISOを一年計画で導入しようとしている小さな組織があった。社長の知り合いから紹介されたコンサルに頼って半年、同じ指示ばかりで先に進む気配がまるでない。社長に遠慮していた工場長だが、知り合いの審査機関の人に資料を見て貰ったところ、どうやら別の道のコンサルであることが判った。

 事情はどうあれ、社長は環境ISO登録の予定を延ばすつもりはない。任された工場長は、残り五ヶ月で登録まで確実に支援してくれながら、自分達の思いも取り込んでくれるコンサルをさがした。かつての環境ISO登録は、運用期間が最短でも三ヶ月が条件であったから、二ヶ月間で計画を仕上げる必要がある。

 それを承知でコンサルを引き受けた森は、経営者と社員の双方の思いを盛り込んだ方針作り、また目標を実現する支援詳細計画作り、これらに関して最初の営業訪問時に提案した。それは、時間外の作業を中心にしたもので、社員の協力がなければ実現しない。また、金曜日の夜は朝まで拘束するとしたから、家族の理解も必要であった。

 森が工場長の集めた社員を前にして、短期決戦の目的と狙いを具体的に話して協力を求めたところ、誰一人下を向く者はなく、皆の目が森を見て輝いている。その結果、多少の荒さはあるものの、皆が積極的に参加する仕組みは完成した。

「次郎さん、智恵を絞った話は終わり。読む人が飽きないよう、面白くまとめてください」
 森から難問を貰った次郎だが。
「それには誰かの智恵を借りましょう」
 と、懲りずに答えた。  

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【コンサル川柳コーナー】

№71 つまらない 思いながらも 最後まで
 
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by tabigarasu-iso | 2010-06-25 08:18 | 小説 | Comments(0)

ひまわり

 机の上には、見事に咲いたひまわりの花が活けてあります。旬には少し早いようですが、ジメジメした梅雨を追い払い、太陽の照り付ける夏を呼び込むには、もってこいの花かも知れません。

 太陽に似た花を見ながら冷たい麦酒を飲んでいますと、あれこれと脈絡のないことが思い浮かんで来ます。

『梅雨と言えば、暖房が必要な寒い日も以前はあったが、今年の梅雨にはない。それに、始まりは遅く終りも早いようだ。ひまわりが登場したからには、慌てて退散するしかないが』

 ひまわりは、成長期に太陽の動きを追う植物です。その所為で、丈も大きくなり、花も大きく、沢山の種を付け、その中には油分が豊富ですから、観賞用は仮の姿でしかなく、実態は食糧や燃料の味方と言えましょう。

「どうしたの」
「太陽から頂いたの」
「夏が来たようだね」
「そのままよ」
「太陽に落ちはないさ」

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車窓には 紫陽花笑う 秩父線
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by tabigarasu-iso | 2010-06-24 20:11 | 随筆 | Comments(0)

コンサル戦士Ⅵ

 組織の課題を解決する智恵とは何であろう。子供の頃に読んで貰った「とんちそろり」や「一休さん」には、子供から大人まで感心させる智恵が沢山あった。時代は移り便利な世の中になっても、同じ様な智恵が必要とされている。

 課題解決が使命のコンサル戦士は、「とんちそろり」や「一休さん」に暗示された智恵を学ぶ必要があろう。その手法を学び、コンサル案件に応じて細部を今風に変えれば宜しい。
「コンサルソロリを本にまとめて世の中に出しませんか」
 次郎の唐突な提案には、さすがの森も驚いたようである。コンサル道の話を途中で止めて、森は静かに腕を組み天井を見上げた。

『確かに、次郎の言う通り。これまで何度と無く、コンサル先の課題解決に触れて来たが、それをまとめることなど思いも寄らなかった。とんちそろり程含蓄のある話は遺せないが、同じ課題で困っている組織には、幾らか役立つ話になるかも知れない』
 
 森は、返事を待つ次郎に笑顔を返す。
「なかなか良いアイデアですね。次郎さんの話しに乗りましょう。但し、語るのは私でも、それを読物として面白くまとめるのは次郎さん、あなたです」
「・・・喜んで」

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【コンサル川柳コーナー】

№70 三日目に 辞める大臣 坊主かな

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by tabigarasu-iso | 2010-06-24 00:02 | 小説 | Comments(0)

コンサル戦士Ⅴ

 歳は誰でも同じ速度で進むから、先を行く人の歳は追い越せない。同じ経験をしても、それを自分のものに出来る人とそうでない人が居る。経験に替えて、先人から智恵を学び応用する能力さえあれば、歳は若くても熟練者が占めるコンサル戦士になれる筈だ。

 いつの間にか、次郎は森のコンサルに同行しながら、熟練のパフォーマンスは無理でも自分の歳なりに訴えるコツが見えた様な気分になっている。これまで、次郎が持ち合わせる武器と言えるものは、相手の知らない知識だけであり、とてもコンサルの道具と言えるものではなかった。

 相手の目を見て、そこから課題を探り出すには、次郎の感覚を磨く必要がある。それには時間が掛かるであろうが、同じ手法を真似てばかりでは能が無い。次郎は、年配のコンサルが苦手とする点を自分の武器にすることにした。

 同じ若い世代から課題を引き出す優位性、それが若いコンサル次郎の特典である。相手の目線に立つことも容易であり、課題を聞き出す遠慮も要らない。それに加え、昨今流行のIT機器の操作にも長けているから、課題解決のサンプル提供も容易である。

 ただ、コンサルとして課題解決の智恵を相手に授けないことには、コンサル戦士とは言い難い。
『その智恵は、巷には出回っていないから、コンサル戦士から正々堂々と盗み取るのが良いだろう』
この決意を、次郎はメモ用紙に記録した。

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【コンサル川柳コーナー】

№69 法律を 立てる本人 法破り

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by tabigarasu-iso | 2010-06-23 00:01 | 小説 | Comments(0)

コンサル戦士Ⅳ

 組織の抱える課題は、その大半が人にある。知識が無く課題が見えなければ、課題を解決することはできない。知識が有り課題が見えても、解決の智恵が無ければ行動に移れないだろう。その智恵があっても、行動した結果を評価する制度が無ければ、敢えて難問に取り組む仏様のような人は居ない。

 何れに課題があるのか、コンサル戦士は相手の発言や行動から、その種類を見抜くことが必要になる。森のコンサル先は、幾層もの人的な課題があった。経営者、管理職、社員が抱える課題を整理した上で、どこから取り組むのが効果的か、優先順位を決めなければならない。

 これを、森は課題解決支援と呼んだ。経営者の考え方に課題を発見した場合、すぐに膝を詰めた話合いが必要になる。
「社長、建て前と本音の使い分け、相手を見る必要があります。事情を知らない社員の方は、社長を信用しなくなりますから具合が悪い。自分が決めた方針ですから、それ以外の本音は禁句です。それが不満でしたら、本音を方針にしましょう」

 残念ながら、こうした席に社長と面識の浅い次郎を置く訳にはいかない。管理職の考え方に課題を見出した場合も同じである。その内容は、社長と部下の両者に挟まれているから、両者を満足させる解決策でなければ満足しては貰えない。社員の方に遠慮して貰い、管理職の言い分を聞き、別の場で社員の言い分を聞いてから、両者向けに解決策を提案することにした。

 まずは、管理職からである。
「部長、現在の策で目標達成は可能でしょうか。社長の命令を聞く場合、人、資金、設備を無視した合意はいけません。何が不足するのか、社長に提案して資源を確保するのが部長の役目ですね。また、施策にも無理があるようです。部長の過去の経験から策を決めたのでは」
「森さん、言いたい放題ですね。だが、その通りです。で、部下には何と」
「部下の課題を確認しますから、その後で」

 次に、森は社員から意見を聞いた。
「素晴らしい策ばかりですが、成果は如何ですか」
「・・・」
「この策、どなたが提案されたのですか」
「・・・」
「部長さんですか」
「はい」
「旨く行く筈でしたね」
「・・・」
「納得していなかったようですね」
「はい」
「それなら、結果は双方の責任でしょう」
「でも、部長は部下の意見を聞くタイプではありません」

 時を改め、森は部長と社員を前に思い切ったパフォーマンスを見せる。
「部長は、人員補充を社長に提案されています。社員の皆さんは、自分で責任を持てる策を提案なさってください。成果に関しては、社長が本音で評価されると約束されていますから、安心してくださいとのことです」
 
 さて、森の説明に多少の飾りはあっても、目標実現に向かい互いの壁を取り除くためには許される範囲かも知れない。だが、会場の隅でメモを取る次郎には、どう映ったことであろう。 

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【コンサル川柳コーナー】

№68 政治家は 約束破り 大物に

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by tabigarasu-iso | 2010-06-22 08:47 | 小説 | Comments(0)