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白髪の旅ガラス

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USOの話

 昔、大人なら直ぐに嘘と判る話を子供相手に真剣な口調で面白おかしく話してくれる風変わりなおじさんが、村の外れに住んでいました。
「急な登り坂、自転車のブレーキを掛けたまま上がれるかい」
「無理だよ、おじさん」
「そうかな。わしなら楽にできる。諦めてはいけないよ」
「じゃ、やってみせてよ」
 おじさんは自転車をリアカーに載せて笑いながら坂を上って行きました。

 すっかりおじさんの頓知に感心した子供達は、いつもの場所でおじさんが現れるのを待ちます。
「今日は大勢だね。それでは、取って置きの話をしてあげよう。昔、わしは鉄砲で熊を撃ったのさ」
「つまらない話」
「そうかな。向かってくる熊に背を向けたまま鉄砲で撃ったのさ」
「無理だよ。鉄砲の玉は、熊とは反対側に飛んで行くよ」
「鉄砲の先を曲げ、後に玉が飛ぶようにしたのさ」
「ふうん」

 最初の話に感心した子供達は、二度目の大嘘を疑うことはありません。ただ、一人だけ納得の行かない子が、おじさんに言いました。
「その鉄砲を見せてください」
 先を曲げた鉄砲など持っている筈がありませんから、おじさんは正直に答えます。
「そんな鉄砲はありません」
「なんだ嘘か」

 その時、おじさんは子供達に向かって語りました。
「最初から疑うのは良くない。最初から信じるのも良くない。本当かどうか、確認してから決めなさい。その点、君は偉いぞ」
 事実を確認しようとした子供の頭を撫で、おじさんは嬉しそうに笑います。子供達も釣られ、皆で笑いました。

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嘘であれ 夢を見られる 話あり
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by tabigarasu-iso | 2009-10-31 00:35 | 随筆 | Comments(0)

静か過ぎる夜

 人の話し声もなく、車の騒音も届かない。時折、携帯電話のメールが届いたことを知らせる電子音が鳴るだけ。絶えることのない空調音に悩まされ、寸時も寝られないホテルに比べたら、今宵の嘘のような静けさは、何物にも勝る有り難いプレゼントである。

 こうした静けさの中でも、良く耳を澄ませば、稼働するパソコンの熱を冷ますファンの音に気付く。パソコンを閉じてノートに鉛筆で書けばファンの音は消えるが、鉛筆が紙の上を走る音は残る。それも止めれば、本物の静寂が訪れるだろうが、この感動を後から思い起こすことは難しいから、鉛筆の音だけは残す。

 やがて、それが気にならなくなる頃、遠くの寝息が気になり始める。そちらに神経が向けば、ますます気になり鼻を摘んでやりたくなった。そこで足を忍ばせ近くに寄れば、顔中が鼻の愛犬の寝息と判り、摘むところが見付からないから諦めて戻る。

 こうして、静か過ぎる夜も何かが気になり出せば、それが頭の中を駆け巡り穏やかな気持では居られない。静か過ぎてもこうだから、傍若無人の話し声や笑い声が絶えない騒音の著しい環境であれば、どんなに暮らし難いことであろう。

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静けさよ 気になる騒音 見付け出し
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by tabigarasu-iso | 2009-10-30 00:00 | 随筆 | Comments(0)

ここだけの話

 日本語でも意志の疎通が難しい会議を外国語で行えば、どれほど互いに理解できたか怪しいものです。それでも、相手の表情を見ながら身振り手振りで補足すれば、電子メールでやり取りするより遥かに宜しい。けれど、それも会議の内容により、電子メールや電話会議で充分なものもあります。

「今期の売上予定と来期の予定を説明します」
「(翻訳)今期の状況は良く判りました。売上減に対し、社内の打ち合わせ旅費が変わりませんが、何故でしょう」
「以前より、社内打ち合わせに関する経費は無駄なく管理していますから、今年も増減はありません」
「(翻訳)それは良いことです」

 ところで、この会議には海外から仕事内容を良く理解した人とそうでない人が参加しています。従い、後者の人に仕事内容を説明する時間が多く、肝心な意見交換まで至りません。その結果、こちらの準備した資料の説明に終始し、新しい情報は無に等しい。

 とすれば、こちらの仕事内容が良く判らない人は、何を目的に海外から来日されたのでしょう。ここだけの話ですが、今頃は京都の紅葉が綺麗な季節です。訪日の旅費が無駄にならないよう、そちらまで足を伸ばす予定があるのではないでしょうか。それがないとすれば、もったいない話です。

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無駄を取れ 言いに来る人 無駄な人
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by tabigarasu-iso | 2009-10-28 00:09 | 随筆 | Comments(0)

正直な目標管理

 本業の目標には、「売上増に努めます」、「不良在庫削減に努めます」、「物流の効率向上に努めます」と言った曖昧な目標は考えられません。これでは、支出は確実ですが収入が不明ですから、経営が成り立たない。

 経営に環境ISOを活かす意志がトップの方にあるなら、本業の目標を策定する際に環境目標を導く必要があります。従い、予算検討時は多忙につき、それが済んでから環境目標を策定する話を聞けば、その組織は環境ISOを経営の一部に考えていないと言えるでしょう。

 営業目標を環境目標と同じにする組織があります。ある商品の不良在庫ゼロの営業目標を達成するため、鮮度管理を徹底し、期限前に価格を再考し、ある販促施策で期限切れ商品をなくすこと。また、これを実現することで、環境目標の廃棄物発生をゼロにすることも実現しようとしています。

 環境ISOの内部監査や外部審査を通じ、環境目標の進捗が適時に検証されますから、廃棄物発生のゼロを証明しなければ、営業目標の施策が甘いことに。
「環境目標の数値が厳し過ぎ、正直なところ廃棄物発生はゼロではありません。そこで、目標進捗評価欄には、予定通りではないと」
「貴方は、正直な方ですね。と言うか、目標設定が的を射ていますから、正直に答えない訳にはいかないのですね」
「はい」
「やはり、貴方は正直な方だ」


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萩の花 正直者を 想起させ  
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by tabigarasu-iso | 2009-10-26 07:43 | コンサルサービス | Comments(0)

落葉の酒

 仲間やお客様と賑やかに飲む酒も良いし、また家族に囲まれ飲む酒も楽しいもの。だが、知らない店で知らない人の話を耳にしながら、話し相手もなく黙って一人酒に浸りたいこともある。

 漫然と眺めるのは、板前さんが器用に操る包丁捌き。魚がまな板に置かれ、頭を落とされ、はらわたが落とされ、皮が剥かれ、身が水で洗われ、音も無く包丁が前後する。氷で満たされた大皿に刺身が次々に盛られて行く。その様を、その男は酒の肴にした。

 知る人が居れば見せられない孤独な顔も、知る人が居なければ安心してなれる。そんな時がなければ、緊張し続けた顔も心も堪らない。
「落選。実に残念だが、落葉の酒にする」
 結果を楽しみに応募していた賞の発表欄には、その男の名前はなかった。

 一人酒を飲みながら、その理由を男は想像してみる。男の作品に力がない、選考する人の趣味と違う、そもそも見られていない。何れにしても、何千件もの応募があったようだから、充分に吟味されることを期待する方が可笑しいだろう。そう考えれば、応募などしなければ良い。だが、次の応募目標を決め、男は居酒屋を後にした。

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落葉の 姿他人に 見えなくて
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by tabigarasu-iso | 2009-10-25 00:21 | 小説 | Comments(0)

教育訓練のPDCA

 ISOマネジメントにおける不適合の発生原因には、教育訓練が大きな比重を占めています。教育訓練は、環境ISO規格や品質ISO規格の要求事項ですから、必ず実施しなければなりません。従い、審査登録している組織では、教育訓練を必ず実施している筈です。それでも、不適合の原因として挙げられるのは何故でしょう。

「環境ISO運用上の課題で、筆頭は何でしょう」
 何の説明もなく、いきなり環境管理責任者に聞いてみました。
「教育訓練の効果の確認と向上です」
 迷うことなく、環境管理責任者は答えます。その理由を聞けば、教育訓練をするのは良いけれど、どこまで理解できたのか確認することや向上させる術が判らないとのことでした。ここに、不適合の原因が集中する源があるようです。

 品質ISOでは、教育訓練の有効性を評価することが規格の要求事項になっています。それは、環境ISO規格の要求事項ではありませんが、現場の要求事項と言えましょう。環境管理責任者の方に質問した責任がありますから、環境ISOマネジメントにおける教育訓練の効果を確認する方法と効果を上げる方法を考えてみます。

 教育訓練の効果を確認する方法は、方針や目標を実現する観点から、どんな教育訓練が必要なのか確認した上で、到達点を明確にした教育訓練計画(P)を明らかにし、適切な教材や講師を選定して教育訓練を行い(D)、その後計画や手順を守っているか否か、上司が日常観察する方法やアンケートを取る方法(C)などが考えられるでしょう。

 教育訓練の効果を上げる方法は、教育訓練で体得した能力を評価する制度の採用を皮切りに、運用結果を反映して教育訓練の内容を改善する(A)ことです。要は、教育訓練のPDCAシステムを回すことですから、効果の確認(C)ばかりに気を取られてはいけません。
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卒業後 学ぶ大切 知る生徒
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by tabigarasu-iso | 2009-10-23 12:09 | ISOマネジメント | Comments(0)

腰痛

 臭いと過去の記憶を頼りの老犬が、玄関に入りかまちに昇ろうとしたものの、後脚は玄関に残したまま困っている。それを後から中腰で抱えた瞬間のこと、飼い主は腰の辺りに微かな軋み音を聞いた。もしかしたら、かつて経験したことのあるギックリ腰では。嫌な予感がした。

 脚の汚れを洗い落とす間、心配の箇所から痛みが少し出始めたから間違いない。飼い主は腰を曲げずに脚を曲げ、老犬をゆっくり床に下ろした。老犬は後を向き、感謝の言葉に替えて幾らか微笑み、舌を伸ばすと傍に置いた水桶に入れる。物は見えないながら、何と無駄のない動きであろう。

 感心する間に痛みが増してくる。何か応急処置の手はないか。安静にするのが良いと聞いていたから、ハイボールを拵えてソファーに腰を深く掛け静かに流し込む。冷えたウイスキーが全身に回ると腰の痛みが薄らいできた。そこで、二杯目は少しアルコールの量を増やしてみる。

 気が付けば、暗い応接間でソファーにもたれて眠っていた。腰痛など、何処かに消え去ったようである。だが、腰を上げてみると痛みが蘇った。それを帰宅した相方に話したところ、良い塗り薬があると言う。早速、背中を見せて患部に特効薬を塗って貰えば、痛みが嘘のように消えて行く。やはり、腰痛にはウイスキーより塗り薬の方が効くようだ。
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腰痛は 老いた犬にも きっとある
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by tabigarasu-iso | 2009-10-22 07:39 | 随筆 | Comments(0)

素晴らしい不適合処置

 環境ISOを導入されている組織の事務局さんから、廃棄物発生量が大幅に増えて年間の削減目標の達成が難しくなり、不適合の予防処置を取りたいが、その原因と対策をまとめた内容を確認して貰いたいとの依頼が入りました。

 その内容を拝見したところ、原因究明が事実に即したもので説得力があり、今後の対策も関係者の努力を反映させるもので、実に素晴らしい。原因は、目標設定時に想定しきれない自然現象によるものであり、この事象が発生した日付とそれに伴う廃棄物の推定増加量を算出したところ、この結果を差し引けば、当初の削減目標値になります。従い、対策としては、従来通り削減手順を励行しながら、今後も起こりうる自然現象による増加を差し引いた目標管理とするもの。

 自然現象や経済環境により、目標や手順を設定しても予定通りには行かないものです。それを不適合と定める組織は多くありますが、潔く不適合の予防処置なり是正処置を実施する組織は、残念ながら多くはありません。原因究明を徹底的に実施する余裕もなく、その重要性を関係者が認識していないことが原因にあるのでしょう。

 これでは、ISOマネジメントを導入した意味がありません。予定通りに物事が展開できるのなら、これを敢えて導入する必要もないでしょう。方針を具現化する目標の進捗が旨く行かない時、不適合の処置を適正に行う仕組みこそ、ISOマネジメント導入の利点と考えます。極論すれば、ISOマネジメントは、目標達成が難しい時に本領を発揮する「開かれた不適合処置システム」と言えるでしょう。

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痛み知り 相手気遣う 人になり
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by tabigarasu-iso | 2009-10-21 12:36 | ISOマネジメント | Comments(0)

2836グラム

 神無月中旬の早朝、わずか2836グラムの体重ながら、あらゆる可能性を秘めた人間の赤ん坊が誕生する。すぐさま名を付けて貰い、それから赤ん坊ではなく本名で呼ばれることになった。

 その子の親の親つまり爺さんは、その子と間もなく会うことになる。その時、その子にどんな言葉を掛けようか、爺さん一晩中考えた。孫は爺さんや婆さんの特長が現れ易いから、『爺さんに似ているね』では、もう一人の爺さんに申し訳ない。それに、その子が大きくなった時の夢がなくなる。また、『婆さんに似ているね』でも同じことであろう。

 色々と悩んだ挙句、無難なところで『元気で何より』を言葉にしようと爺さんは決めた。腹の中では、目は婆さん、鼻は爺さん、眉毛は母、口元は父に似ているなどと、思ったままを呟くことにする。それなら、誰にも迷惑にならないであろう。その後、婆さんと二人きりになったところで、互いに腹の内を打ち明ける。このように、爺さんは孫との面会予定を組んだ。

 ところで、その子を取り巻く環境も、爺さん達の責任である。その子が綺麗な空気、水、土地を利用できることは当然であり、安心して食べられる食糧の確保、心安らぐ自然の維持、仲良く遊べる動植物の保存を、爺さん達は実現しなければならない。これは、孫が爺さん達に似ているかどうか伝えるより、重要なことであろう。

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個の命 次に繋げる 子孫あり  
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by tabigarasu-iso | 2009-10-17 06:17 | 随筆 | Comments(0)

ベニザケの恋心

 アラスカのカトマイに行った事はないが、直前のテレビ画面にはベニザケを浅瀬で走って捕まえる大きなヒグマの姿がある。その迫力ある映像に感心しながら、こうした場面をカメラマンは何処から撮影しているのか、ふと考えた。雄のヒグマが立ち上がれば、三メートルもあると言うから、腹を空かせたヒグマを間近に命懸けの撮影であろう。

 冬眠前に栄養を蓄えなくては生き延びることができないヒグマ、そのヒグマの襲撃から逃れ何とか産卵したいベニザケ、こうした両者のやりとりを知らない人に命懸けで伝えようとするカメラマン、こうして生まれた映像を安全な居間で酒を飲みながら楽しむのは、何とも贅沢なことである。

 子連れの雌のヒグマは雄のヒグマを避けてサケ猟をしないといけない。雄は雌と交尾を狙って子熊を殺してしまう。種の保存から愚かな行為だと思うが、戦国時代、敗者の一族を皆殺しにする武将と良く似ているから、雄のヒグマを責められない。

 一方、難を逃れて産卵場所に到着したベニザケは、流れの緩い川床で雌が産卵場所を掘り、気に入った雄と寄り添って排卵と受精を行う。その際、雌に嫌われた他の雄が数匹飛び込み、子孫を残す作業に加わる場面を見ながら、水中受精なら相手が多くても良いのに、敢えて相手を選ぶベニザケの恋心を知る。
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秋の口 色を変えるは 紅葉鮭  
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by tabigarasu-iso | 2009-10-15 12:20 | 随筆 | Comments(0)