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白髪の旅ガラス

麦わら帽子

 麦わらで作られた面積が広く頭に載せても苦にならない帽子は、今流行の環境に配慮した商品のひとつです。太陽の恵みで育ちながら、それを人様の頭の上で遮る役に回り、何とも複雑な思いをしているに違いありません。

 麦わら帽子を愛用していた時代がありました。それも夏場だけでなく、年間を通してのことですから、畑に立つ案山子と同じです。日除けだけでなく、雨や埃を避ける便利な代物でした。どんなに破れても、庇が取れて落ちるまで、決して捨てることなどありません。

 それでも、野山を相手の仕事でしたから、誰からも見てくれが悪いと注意されることもなく、本人も当然のこととして被っていたものです。仲間も似たようなもので、帽子の上部が破れても、庇が付いている限り捨てようとしない。何度となく染み付いた汗が、異様な臭いを放ち始めても、自分のものだから親しみを感じるだけです。

 ところが或る朝、出掛け際に幾ら探しても見つかりません。
「麦わら帽子、知らないか」
「知らないわ」
「下駄箱の上に置いた筈だが」
「あら、そこにあったゴミなら、今朝燃やしたわ」
 もったいないことをされたものです。
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エコとはね 多少の不潔 苦にしない
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by tabigarasu-iso | 2009-07-30 12:46 | 随筆 | Comments(0)

猫の首に鈴を付ける子鼠

 天敵の猫に鈴を付ければ、その音で鼠はいち早く逃げることができます。その役を誰が引き受けるか、鼠の親子で話し合いました。
「これは父の役割である」
 大きな鈴でなければ、遠くから聞こえず効果がありません。鈴が大きくなれば、重たくなります。それを、猫の寝ている間に付けるのですから、父親鼠は死を覚悟しなければなりません。

「それはなりません。子供達のためには、強いお父さんが必要です」
 猫に気付かれた事態を想定し、母親鼠が毅然と言います。すると、子鼠達は反対しました。
「優しいお母さんが、猫に喰われたら嫌だ」
 さあ、どうしたものか、親鼠は考え込んでしまいます。

 その時、一番小さな子鼠が言いました。
「僕が猫さんと交渉してくるよ」
 いつも兄弟に苛められ、泣いてばかりでしたから、皆が驚きです。
「あのドラ猫と、どんな交渉をする」
 父鼠が呆れて聞きました。

 小さな子鼠は、自分で大きな鈴を引いて猫の前に進み、こんな風に説明する。
「ドラ猫さん、僕を食べてください。でも、こんな小さな鼠より、大きな鼠の方が良いでしょう。僕が家族を連れて来ますから、パクリと食べてください。それには、この鈴を首に付け、しばらく待って貰えますか」

 何とも大胆な策ですから、心配した父鼠が聞きました。
「旨く行かなかったらどうする」
「どうしようもありません。僕が食べられるだけですから」
 そして後日、捨て身の策はどうなりましたことやら。
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世の中に 鈴を付けたい 人多く
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by tabigarasu-iso | 2009-07-28 21:20 | 小説 | Comments(0)

猛暑越え

 全身が毛だらけの猫や犬は、汗をかいて体温を下げることができません。毛を舐めて濡らし、気化熱で体温を下げる猫。舌を長く伸ばしてよだれを垂らし、そこで熱交換する犬。それに、二匹とも部屋にエアコンを点けて貰い、快適な昼寝を楽しんでいるようです。

 昨今の住宅事情から、猫や犬は家の外では暮らし辛い環境になりました。少し前までは、猫は専用の穴から自由に外出し、ネズミを捕まえる重要な役目を果たし、暑い時期には何処にでも避暑に出掛けたものです。

 一方の犬は、暑い時期には敷地内に大きな穴を掘り、そこに身体を埋めて暑さを凌いだものでした。時に、敷地を離れ自由に外出する猫を見付け、羨ましくて吠えるしかありませんでしたが、今ではどちらも家の中で飼われていますから、猫を見付けて吠えることもありません。

 ところが、クーラーの良く効いた部屋では、猫も犬も鼻と喉が乾き過ぎ、水分補給が頻繁になります。迷うことなく水分を摂れば良いのですが、互いに毛だらけで汗が出ませんから、頻繁に排尿しなくてはなりません。

 そこで、猫は気軽に室内の簡易トイレを使用するようですが、犬は縄張りを示す大切なものですから、散歩で外出するまで我慢するようです。喉が乾いて水を飲み、排尿を我慢するのも、若い時には簡単ですが、高齢化した犬には厳しい猛暑でしょう。
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犬と猫 猛暑に耐える 部屋の中   
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by tabigarasu-iso | 2009-07-23 08:30 | 随筆 | Comments(0)

視点を変えて

 幾ら売ろうとしても、相手が欲しくないものは売れない。相手が何を必要としているのか探り出し、それを知ったうえで物を売る。そんな判りきったことを、物が売れない時に限り忘れてしまう。

 こんな良い物を開発したのだから、売れる筈だ。その視点で次々と新しい車やテレビが開発され、コマーシャルが世の中に氾濫する。車を使うより停めて置く時間の方が長い人に、新車を勧めても無駄であり、小さな部屋で見たい番組も少ないところに、大型テレビは似合わない。

 いっそのこと、自動車の所有者には自転車を勧め、運動不足を解消しながら、身近な世界をゆっくり見て回る楽しみを教える。また、テレビ中毒に陥った人にはラジオを勧め、音の世界から映像の世界を想像する楽しみを知って貰う。

 それに、相手が必要性に気が付かない物やサービスもある。それを発見し相手に教えてあげることができれば、喜んで利用して貰えるだろう。その一つとして、ISOマネジメントシステム導入がある。特に、その必要性を社長に気付いて貰えれば、導入成功は間違いない。
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テレビ消し 灯りも消して 夢を見る 
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by tabigarasu-iso | 2009-07-20 22:19 | 随筆 | Comments(0)

酸素をください

 肺に入る筈の空気が、何らかの理由で入らなければ、新鮮な酸素を当てにする細胞が困る。喉に餅や痰が詰まれば、呼吸困難になり、最悪の場合は死んでしまう。そんな状況に自ら遭遇すれば、何ができるか。慌てないで、応急処置を施し、消防署に救急連絡をする必要がある。

 こうしたこと、頭で判っていても、遭遇すれば思うように行かない。朝方のこと、老いた犬が、理由不明の呼吸困難になり、吐く息を荒くした。その音で起こされた飼い主が、愛犬を見ると四肢を硬直させ、今にも死にそうである。冷静を装い、飼い主は抱き上げたが、応急処置が思い付かない。

 そこで、愛犬の過去を振り返ってみた。散歩の途中、軽い脳梗塞で倒れたことがある。それに、日頃から喉に痰が詰まり易い。もしかしたら、脳梗塞の再発かも知れない。だとすれば、安静にして置く必要がある。それとも、喉に痰が詰まり過ぎたのなら、どうしようか。

 愛犬を元の位置に戻した飼い主は、喉に手をやり気管支を軽くマッサージしながら、もう片方の手で、胸を圧迫する前脚を軽く上げてみた。それが功を奏したのか、間も無く、吐く息と吸う息のバランスが回復し、四肢の硬直も治まり、愛犬は危ない峠を越えたようである。
「大丈夫か」
 飼い主の掛けた言葉に、愛犬は頭を動かし、飼い主の手先をペロリと舐めた。
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冷静に 緊急語る 後日談
 
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by tabigarasu-iso | 2009-07-17 19:14 | 随筆 | Comments(0)

バイオマスビレッジ

 バイオマスは、木材や藁など生物由来の再生可能な有機性資源のことを言います。これには、石油や石炭などの枯渇する化石資源を除きますが、これらもかつてはバイオマスでありました。長年、化石資源を地上で燃やし続けたことが原因で、大気中の温室効果ガスが増え過ぎ、地球温暖化現象を引き起こしています。

 温暖化を抑制し、化石資源の使用量を抑制し、それを長く利用するためにも、再生可能なバイオマスの活用が注目されますが、事業として成り立たなければ、それを継続的に活用することはできません。既に、バイオマスタウン構想というものが、全国の市町村213箇所で公表されたものの、運用は一部に留まっています。

 この構想は、再生可能な燃料の確保、温暖化対策、地域産業の育成と雇用確保と目的が多岐に亘り、資源の育成から加工、販売、使用および廃棄物の再利用まで、バイオマスのライフサイクルに応じた事業のネットワークが旨く機能しなければ、成功しません。

 バイオマスネットワークの調整役、これが重要な仕事になりそうです。造林に精を出しても、次の工程に旨く繋がらなければ、事業になりません。事業を軌道に乗せるには、原材料の仕入れから商品の販売まで、一貫して手掛けることが得意な、商社的な頭脳の持ち主が適任ではないでしょうか。また、「バイオマス」に「タウン」をつなげる人より、「バイオマス」に「ビレッジ」を組み合わせる人の方が好ましいでしょう。
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           村のこと タウンなどと 言わないで
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by tabigarasu-iso | 2009-07-10 12:31 | 随筆 | Comments(0)