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白髪の旅ガラス

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新幹線の囁き

 平均株価が安くなり、ドルに対して円が高くなろうが、直流モーターを回す電力が供給される限り、我等の東海道新幹線は不平も言わずにひたすら走る。中でも大きな負荷が掛かる区間は、東京駅から名古屋駅までだが、車内には、様々な人々が乗り込み、騒々しいドラマが展開される。

 三人掛けの席を向かい合わせにした六人連れの中年の女は、揃ってディズニーランドの袋を荷物棚に放り上げると、手荷物を席の後ろへまごまご片付けながら、通路を塞いで後続の客の足を止めた。それを何とも思わないから、実に嘆かわしい。一言、「すいません」くらい言えば許しても良かったが、六人揃ってのことだから、中年失格である。

 予測した通り、それからは傍若無人、個室を確保したかの如く、声高な会話が始まった。通路を隔てた中年サラリーマンなど、眼中に無い様子である。それぞれが弁当を膝の上に広げ、話しながらも箸を忙しく走らせる、レベルの高い息の合った得意技は素晴らしい。そればかりか、向かいの仲間の足を揉み始め、靴下を取って指先の健康講座を開始した。これは、見た目を考えれば正しく場違いの行為であり、やり過ぎである。

 そんな光景が視界の隅に入れば、口には出さないけれども、無視は出来ない。孤独の時間を楽しむことを諦めたサラリーマンは、見苦しい光景を避けて目を閉じてから、六人の女が勝手に語る生のドラマを、耳に入れるしかなかった。かように、他人の時間を奪うこと、立派な犯罪と言えよう。

                諦めて 瞳閉じれば 時が飛ぶ
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by tabigarasu-iso | 2008-10-29 06:55 | 随筆 | Comments(0)

備えあれば憂いなし

 何事も、準備は大切です。例えば内部監査において、自分の仕事とは関係のない部署を監査する際には、相手の業務内容全般と業務の流れを把握し、出来れば業務の課題を理解したうえで、基準と現実の差を検証する必要がありますから、事前準備を十分にしないことには、監査は前に進みません。

 ところが、私達は業務内容を文書化する習慣が無い民族ですから、監査側が事前に確認する手段が無く、当日の聞き取りに頼る事になります。それがあるにしても、内容が古く、最新の業務内容を反映していない場合が、大半でありましょう。そこで、監査当日の業務確認の方法が、監査員には気になるところです。

監査側;それでは初めに、貴方の部署の業務内容を、こちらの白板に書いてください。
総務部;待ってください。何故、そうしなければならないのですか?
監査側;失礼しました。総務部の業務内容を把握した上で、品質面、環境面、安全面、それに経済面の課題を知りたいのです。それから、それが目標にどう展開され、実績は旨く出ているのか、旨く成果が上がらない場合、どのように対処しているのか検証し、仲間として改善提案を行う目的でして。
総務部;成る程、それはあり難いことです。どこまで詳しく書きましょう。
監査側;すいません。こちらは総務部の仕事を全く把握しておりません。新人に説明するつもりで、簡単に業務の流れと課題をお願います。

 こうして、仕事毎の課題が判れば、それを目標管理にしているのか、維持項目にしているのか見極めて、結果が予定通りか否か、記録や発言で確かめましょう。そこに問題を発見した場合、原因究明からその対策まで、一緒に検討することになりますから、問題解決技法の習得も、監査準備の一つであることが判ります。

帰り道 呟きひとつ 疲れとり
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by tabigarasu-iso | 2008-10-23 18:34 | コンサルサービス | Comments(0)

歌に泣かされ

 歌は、喜びより悲しみや苦しみを歌うものが多く、中には涙が涸れるまで泣かされる歌もあります。その理由が、歌詞であったり、メロディーであったり、歌手であったり、それに当時の想い出であったり、人により様々ですが、涙を流すことで、明日への活力が生まれることもあれば、何とも不思議な現象でなりません。

 フランス人の歌手が掠れた声で歌う「雪が降る」の好きな男は、♪幾ら呼んでも♪貴女は来ない♪を耳にすれば、白い雪が♪ただ降るばかり♪まで、何もかも忘れて聞き入るばかりです。そうせずには居られない想い出があり、その時の切ない感情が蘇れば、自然に涙がこぼれて止まらない。それも、男が若い時分なら様になりますが、頭髪が白くなれば、奇妙な光景に映ることでしょう。

 最近の歌で男が泣いたのは、流行歌の「千の風」。♪私の墓の前で♪泣かないでください♪では、そう言われても泣かずに居られない。それも肉親を亡くした後だから、その時の抑えきれない無念な感情が蘇り、尚更のことです。ところが、♪千の風に♪の節に移れば、故人が何処かで風になり、自由気儘に舞って居るようで、それが楽しそうに思えた男は、笑顔になって空を見上げました。

 この先、どんな歌に男は泣かされることでしょう。それは、孫が覚えたばかりの日本語を並べる、愛らしい歌かも知れません。また、男が企業戦士の役割を終えた送別会の演歌であれば、自ら歌って涙することでありましょう。あるいは、風になった男を野辺に送る、念仏が聞こえた時かも知れません。
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                臨席へ 肘掛譲る ゆとりかな
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by tabigarasu-iso | 2008-10-22 19:19 | 随筆 | Comments(0)

まな板のコンサル

 毎年恒例のコンサルがまな板に載せられ、相手の言うなりに身体を捻る機会が訪れました。
「さあ思い切り、台の上でぐるりと右に、三度回ってください」
 一度目は恥ずかしながら、二度目はそれを忘れ、三度目は開き直ってぐるり。

 直前に炭酸を飲んで、胃を膨らましているから、二酸化炭素が回転する度に逆流しそうです。それを堪えて、孫が布団の上で遊ぶ姿を真似してみれば、意外に面白いではありませんか。
「辛いでしょうが、もう暫く我慢です。はい、良く出来ました。良い画像が撮れましたよ」
 褒めながら成果を教えてくれる、ベテランの操作員に感心しながらも、早く終わりたい気持ちは変わりません。

 そこで、撮影が更に旨く行くように願い、微妙な位置決めにも素早く身体を対応させていきます。
「素晴らしい。撮りたい位置にピタリ、もう少しです」
 こうも誉めて貰えば、その後の機械操作が厳しくなることなど想像もしませんから、ガラス越しに、余裕の笑顔を返しました。

 ところが、うつ伏せの姿勢で、頭を下に尻が上になったところで、身体を右に傾けてくださいとのこと。全体重を左肩に掛けた状態で、そこを支点に身体を捻るのは、想像を超えたアクロバット的な技です。勿論、労りの言葉を忘れていませんが、それだけでは対応できそうもありません。残り少ないエネルギーを集中させ、逆さ上半身右捻りに挑戦する、まな板のコンサルでありました。
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               コスモスの 花より人が 見頃なり
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by tabigarasu-iso | 2008-10-21 21:46 | 随筆 | Comments(0)

白い菊

 一輪の白い菊の花を手にして、案内される方向に黙って進めば、数ヶ月前に挨拶を交わした方の写真が、微笑を浮かべておりました。左手の奥で立ったまま迎える遺族の方に黙礼し、積み上げられた菊の花の壇上に、それを静かに重ね上げてから、何も問わずに合掌します。

 同世代の方で突然の他界でしたから、目の前の位牌が他人事とは思えず、つい目頭が熱くなり、暫く合掌したままでした。合わせた手を下ろして遺族の近くに進み、聞こえぬ声でお悔やみを申し上げれば、憔悴し切った顔で挨拶頂く。

 こうした遣り取り、何とも残酷な場面に思えてなりません。他界された方に献花するのが目的の送る会であり、商売関係の人ばかりで、遺族の方には見ず知らずの人の群れです。頭を下がられても機械的に返すしかなく、これは大変気を遣う役ですから、会社の人だけで対応されるのが適切でありましょう。

 そこから先は、清めの席が用意され、既に献花を済ませた方々が、盛んに飲み食いされている。それは作法で結構ですが、五十半ばで人生の幕を閉じた故人を偲べば、とても仲間入りすることなど出来ません。勧められて断るのも悪く、冷えたウーロン茶を頂き、無性に渇く喉を潤すだけでした。

                秋雨に 背中打たせる 白い菊
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by tabigarasu-iso | 2008-10-19 12:26 | 随筆 | Comments(0)

そして誰も居なくなった

 パソコンを相手に文字置き作業に夢中なり、岡山駅に近付き漸く後の席を見れば、名古屋駅まで子供の泣き声や仲間と談笑する若い人で賑やかであった新幹線ひかりの車内には、僅か二人の客が居るばかりであった。

 こうした場面、各駅停車のこだまでは記憶にあることだが、ひかりでは記憶にない状況だけに、異次元空間に踏み込んだようである。何も慌てることもないのに、荷物棚から重い鞄を下ろし、その場から逃げるように降りる自分が可笑しかった。

 岡山駅の待合室を見ると、未だ新幹線を待つ人が居る。異次元ではないことに安心した所為か空腹を覚え、駅の構内で夜遅くまで営業する食堂に入れば、心の伝わらない「いらっしゃいませ。今晩は」の言葉を浴びた後で、カツ丼とうどんのセットそれに麦酒を注文した。

 その店、数人の先客が居た筈だが、箸を忙しく動かす間に姿が消える。またもや異次元に迷い込んだのか、疲れで正しい判断が出来ないのか、それとも酒に酔ったのか、自分でも自分が怪しくなって、これまた慌てて店を出た。ここで初めて腕時計を確かめれば、時刻は夜十時を過ぎている。してみれば、一連の異次元体験と思われたことそのものが、異常であったのかも知れない。


               人混みを 離れて思う 異常なり
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by tabigarasu-iso | 2008-10-18 12:14 | 随筆 | Comments(0)

検定

 算盤検定、英語検定、漢字検定、名所検定、環境検定など、検定と名のつくものを挙げれば、即座に思い付くだけでこの通りです。かように検定が流行るのは、どうしたことでしょうか。何かに挑戦することを生き甲斐にする人、資格が無いと商売にならない人、検定と聞くと受験しなければ気が済まない人、それに検定制度を設けて商売にする人が大勢居るからでしょう。

 中には何種類もの検定を受けて、沢山の資格を持つ人が居ますが、果たしてどれほど役に立っているものでしょう。ISOマネジメント審査員の資格一つでも、それを有効に使いこなすのは容易なことではありません。尤も、資格を保持するだけで満足する趣味人も居ますから、有効性など問題にならない場合もあるでしょうが。

 こうした中にあり、漢字検定に挑戦する芸能人の奮闘振りに感心しながら、出題された問題を真剣に解く自分を発見した方も大勢居る筈です。パソコンでひらがなを入力し、変換キーを押せば漢字になる、便利さに慣れてしまった人は、漢字を書く能力が衰えてしまったこと、間違いありません。牡蠣や躁鬱など、日頃から練習しなければ、とても書けないでしょう。

 漢字の読み書きは、それこそ習うより慣れろ、繰り返し書いて身に付くものですから、時にはパソコンのキーボードから手を離し、思いを文字に置くことを習慣にしたいものです。漢字を知らなければ、変換した漢字が誤りであることも判りません。例えば、前略で始まる手紙の終わりに書くのは、「早々」と「草々」のどちらが正しいでしょう。前者だと思っている人が、意外と多いものです。ひらがな、漢字、カタカナを織り交ぜた素晴らしい日本語が怪しい時代ですから、漢字検定の次は日本語検定かも知れません。
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                 夜の道 月と一緒の 早歩き
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by tabigarasu-iso | 2008-10-16 00:02 | 随筆 | Comments(0)

強力な香り

 金木犀の香り、それを好む人には持ってこいの季節ですが、その過ぎたる香りに我慢ならない人には受難の時期となりましょう。取り分け、嗅覚の敏感な犬族にとり、全てを包み込んでしまう強力な香りは、大切な匂いの記憶を消し去る迷惑なものに違いありません。

 いつものように、嗅覚を頼って散歩に出掛けた時のことです。金木犀の花が満開の辻で、行き先の匂いを失った友は、ぺたりとその場に座り込んで仕舞いました。秋晴れですから、視力があれば視界良好であり、行き先に困ることなど考えられません。

 しばらくして、困り果てた友は、後ろを振り向き、主人に先導を頼みました。振り向いた顔を前に向け、軽くワンと吠えれば、それで主人は判るのです。そこで、先に立った主人、綱を軽く引いて、匂いの渦から友を救い出しました。先の辻を一つ曲がれば、そこの匂いは並みの世界です。

 俄かに記憶が蘇った友は、市役所の建設が予定されながら、既に十年が経つ空き地へと向かいました。そこには、刈り込まれた雑草が日に干され、香ばしい匂いを放っています。その隙間から、コオロギが顔を出し、夕方からの出番を待ち侘びているようでした。


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                草刈を 教え込んでと カマキリに
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by tabigarasu-iso | 2008-10-14 12:04 | 随筆 | Comments(0)

風が叫ぶ

 一度は布団に入ったものの、真夜中になり急激に勢いを増した風の唸り声で、否応なしに目が醒める。その勢いは、いつまでも衰えず、家全体に圧力を掛けて、弱そうな箇所を探しているようだ。運悪く、寝室の窓ガラスが見付かり、引かれて押されて、その度に窓枠が悲しい泣き声を上げる。

 眠れない脳内では、奇跡の逆転優勝を果たした瞬間を見られなかったことやら、米国のサブプライムローンの破綻で証券価値が急落したことやら、奥さんを殺害した容疑者の拘置所内での自殺やら、それに一度に四人も日本人がノーベル賞を受賞したことなど、昨今の気になる話題が嵐のように現れては消えて行く。

 どれもこれも気になる話題だが、自分との関係が深いものに興味は移る。それは、米国を震源地とした世界的な株価の急落による現金思考で銀行融資が厳しくなることであり、住宅販売の停滞は勿論のこと、車や家電製品の買い控えによる市場の冷え込みで、輸出企業の業績が悪化することになり、多くの日本企業もその影響を受けざるを得ないからだ。

 この問題は、株を売り買いする人だけで一喜一憂すれば良いのだが、他にも波及するから困る。つまり、自社の株価が下がれば市場からの資金調達額も減り、それで運転資金が心細くなれば銀行融資に頼るところだが、市場冷え込みが見えれば銀行も簡単には融資しない。そこで再びリストラと言う名の人員整理や経費削減が始まれば、組織内外で好ましくない影響が発生することになろう。

 それにしても、サブプライムローンとは良く言ったもの。やがてローン返済できない人の発生を予期しながら、融資した債権を証券化して売り捌き、親元だけは莫大な利益を受ける仕組みにある。似たような仕組みは、米国だけでなく日本にもあるから注意が必要だ。最初の数年間は低金利で融資し、所得が上がる時期に返済が倍増する住宅金融公庫のローンがあった。この制度は廃止されたが、債権を証券化していれば同じ様な問題を引き起こしていたことであろう。
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              ほのかなる 匂い楽しむ 興忘れ
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by tabigarasu-iso | 2008-10-12 23:30 | 随筆 | Comments(0)

義理人情

 ISOマネジメントシステム導入、これが成功するか否かの鍵は、組織作りと時機を得た組織の見直しにあります。品質マネジメントシステムを導入したものの、不良の削減にはならないし、審査費用に見合った効果が見えないとか、環境マネジメントシステムを導入したものの、環境負荷の削減も頭打ちで、審査では本業の課題を把握していないとか、散々な指摘を貰う原因の多くは、組織の作り方と言えるでしょう。

 昔から、組織は人に拠るものと言われるように、市場を見る眼がある人、管理に優れた人、技術に長けた人、営業に秀でた人、事務処理を恙無くこなす人、それぞれの力量を見極めた人員配置が実現できれば、その組織の発展は間違いありません。しかしながら、そこに「義理人情」が入り込み、力量不足を承知した人員配置となる場合が多くあり、注意する必要があります。

 それで結果が出ている間は良いのですが、そうでない場合の方が多い筈ですから、それをISOマネジメントシステムの所為にするまえに、「義理人情」を抑えた組織の見直しを行なわなくてはなりません。ここで、「義理人情」を完全に捨てた組織検討ではないことが、その後の円滑な組織運営にとり、必要になることを肝に銘じて置きます。ISOマネジメントに「義理人情」の要求はありませんが、日本においては力量の要求と同等でありましょう。

 コンサル先で好き放題に呟く我等も、大幅な組織変更を予定しています。役職に応じた力量の有無は勿論のこと、その人がその席に着く自然の流れ、つまり人情を重くみたものですが、国際規格に慣れた人に重要な輝きを放つ「義理人情」の視点からみた組織構成、果たして、どのような成果を生むことでありましょう。組織変更の成果が、今から楽しみでなりません。

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               義理人情 国際規格と 何故ならぬ
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by tabigarasu-iso | 2008-10-09 23:41 | 随筆 | Comments(0)