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白髪の旅ガラス

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無口

 話の苦手な人がコンサルを演じたら、どんな場面になるだろう。
「・・・」
 言葉の替わりに、液晶ディスプレイに映し出された今日の話題、絵を交えた説明文にコンサルの言いたい事を書く。
「・・・」
 指導を受ける側も声を出さず、要点が映し出された画面を、真剣に書き写した。

 何の事は無い、言葉を交わさないコンサルも、立派に成り立つようである。一日中、コンサルの話を聞かされ続ける方も大変だから、静かな情報のやりとりも、たまには良い。けれど、全ての情報を揃えてコンサルに臨むことはできないから、その場で作る情報が必要になる。

「環境負荷の少ない検査業務ですが、環境管理の項目には、どんな項目を選んだら良いでしょう?節電、節水、廃棄物の分別、それに用紙の削減は充分徹底しており、次の課題を指導頂きたいのですが!」
 これに似たような職場は多く、回答の資料をパソコンの磁気ディスクから探して見せること、コンサルなら容易なことだ。

 しかしながら、それを見せれば、大切な考えるプロセスは生まれない。そこで、「業務内容の詳細」と入力し、その横に「課題は何か」と入力すれば、コンサル相手は、堪らずに声を上げた。
「検査で発見した不良の原因を分析し、生産現場に戻してあげることが重要ですが、これが環境管理の項目になるのですか?」
 コンサルは、黙って頷く。

             日暮れまで 話すばかりじゃ 能が無く
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by tabigarasu-iso | 2008-01-31 21:57 | コンサルサービス | Comments(0)

 男は、女のように人前で泣いてはいけない。こう言えば、問題発言になりそうな世の中になった。だが、そんな男がどうしても涙を抑えられないこともあるから、強がりを言ってはいけない。それも、呆れるくらい長い時間だとしたら、尚更のことである。

 真夜中、その男は父の死を知らされた。急いで駆け付けたところで、どうにもならないことだが、高速道路を走る車の速度は次第に上がった。やがて、懐かしい活火山が、雪を被った雄姿を見せ始める。それが、男の涙腺を緩めるきっかけになった。

 知らずに、涙腺から溢れ出した涙で、活火山がぼやけて見える。車の速度を落とし、男はハンカチで涙を吸い取った。すると前方に、大雪で仕事を休み、小川を干して魚を追う、昔の父の姿が現れたからいけない。遠慮無く大粒になった涙は、男の両頬を流れ落ちた。

 暫らく経ち、涙の在庫が無くなる頃、冷静さを取り戻した男は、人前では決して泣くまいと自分に言い聞かせ、実家の庭に車を停めた。けれども、居並ぶ隣組の世話役に挨拶を始めた途端、それを押し潰すように涙が溢れ、言葉にならない。冷たくなった父の額に手を載せた時、男の涙腺は閉じることを忘れてしまった。
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                 戒名に 壽海吉祥 貰いけり
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by tabigarasu-iso | 2008-01-28 21:15 | 小説 | Comments(0)

初雪

 初雪が舞い降り、普段より幾らか静かな朝になりました。傘を差しても、横から舞い込む雪でコートが白くなります。道路に着地した雪は忽ち溶けて水になり、生垣の雪は少しずつ積もって、白い縦長の陣を確保し始めました。

 いつもなら遠くに見える建物も、雪のカーテンに遮られて姿を消し、自分を取り囲む一帯だけが、慌しい世界から抜け落ちたようです。それでも、猛烈な勢いで走る電車に乗って、先の見えない不安を覚えないのも、いつもの喧騒の世界が、その先に待ち構えていることを、充分承知しているからでありましょう。

 地上を走る電車を降りて地下鉄に乗り換えれば、トンネルの暗闇をライトで照らし出す曇りの世界に入ります。晴れることのない閉じた空間は、季節の変化がなくて味気なく、車窓を見てもガラスに映る乗客の顔ばかり。その中に疲れた自分を見付け、思わず顔を背けます。

 ようやく地上に出れば、未だ初雪が舞い、傘を持たない人が走り出すのを横目に、傘を持つ自分は、それを差さずに濡れるまま。珍しく舞い降りた天の使いですから、拒むことはありません。そう考えれば、心は晴れになりましょう。
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                   初雪に 脳内走る 物語
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by tabigarasu-iso | 2008-01-26 18:26 | 随筆 | Comments(0)

誤診

「いやぁ、誤診でした」
 潔く診断の間違いを認めるのは良いけれど、メスを入れられた当人は堪らない。麻酔が切れて痛みが走り、夜になっても寝るに寝られず、痛みと寝不足の二重苦が、早く去ってくれないかと願うばかりである。

「どの位の傷か、見てくれないか」
 背中に手術を受けた本人は、自分で傷の大きさが判らないから、見舞いに来てくれた身内に聞いた。丁度その時、看護士が手術後の確認に来たものだから、遠慮なしに覗いて見れば、肩甲骨に沿って七寸余りのガーゼに滲みた血液が痛々しい。

「痛い筈だよ、これ位の切り傷だから」
 両手でその大きさを教えてあげれば、それで本人も痛みの訳を納得したようで、安心したのであろうか、幾らか表情が明るくなった。

 時には、事実を教えない方が良い結果を生む場合もある。けれど、知らないばかりに不安が増して快復が遅れる場合もあり、人を見て処置の結果を適切に説明する必要があろう。これは、組織の診断にも言えることだから、内部監査員や審査員も誤診を避けることはもとより、診断結果を相手に判り易く説明することを忘れてはいけない。
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                風になる 親の姿を 追い掛けて
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by tabigarasu-iso | 2008-01-22 00:14 | 随筆 | Comments(0)

自己宣言

 環境ISOには、その要求を満たしていることを、自己宣言する使い方もあります。多くの組織では、利害関係の無い第三者が行う審査を受けて、環境ISOの要求事項を満たしていれば登録となり、その後の維持審査を受けて登録を維持することになりますが、数年経っても登録の効果が現れない場合、自己宣言に切り替えたくなりましょう。

 そもそも自己宣言は、審査費用も掛からず、いつ宣言しようと自由ですから、普及しても良さそうですが、そう簡単にはいきません。環境ISOの要求を満たしていることを自ら立証するのは、相当のレベルに達した組織でないと容易ではなく、また自己宣言では認めてくれない取引先もありますから。

「今日限りで、深酒は止めます」
 かように自己宣言したところで、飲み過ぎていないことを、誰も確認しなければ、立証する必要がありませんから、意志の強い人なら健康のために深酒を止められますが、そうでない人は、たやすく深酒を繰り返すことになりましょう。

 自己宣言に違反しても、誰も是正勧告などはしません。従い、宣言を守るには、他者に審査される以上の厳しい自己基準が必要になります。その基準を守れる組織なら、自己宣言で充分でしょうが、こうした話を肴に、深酒を繰り返す人の多い組織には、やはり他者の審査が必要でしょう。

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                大多羅の 駅に降り立つ 山の神
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by tabigarasu-iso | 2008-01-14 00:31 | コンサルサービス | Comments(0)

タカとトシ

「夏下冬上と言うことわざ、知っている?」
 トシがタカに聞いた。
「・・・」
 タカは、口を大きく開け、黙ったままである。
「それでは、木元竹末とは何のことだか、想像できる?」
 開けた目を、タカは閉じるタイミングを失った。

 木炭を使った経験が無いタカに、夏と冬とで炭を熾す方法が異なることを聞いても、知らないのが当り前である。それに追い討ちを掛け、木や竹の割り方を聞いたものだから、了解の合図になる、目を閉じる仕草ができないのも、仕方の無いことであろう。

 こんな話になったのは、限りある化石燃料の残りが、今のまま使用すれば、六十八年と公表されたからである。それでは、再生が可能な木材や竹を燃料にすれば、今後の燃料事情はどうなるであろうか、と言うことになった。

 けれど、それらの扱い方を知らずに何を語れようか、と言う話に移り、トシは歳の差を忘れてタカに聞いたのだが、やはり、知らないものは知らない。そうならそうと素直に答えれば良いものを、タカは未だに口を開けたままである。


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              七草の 粥を食べたい 胃に言われ
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by tabigarasu-iso | 2008-01-10 12:07 | 小説 | Comments(0)

 とりが木の上にたくさん群がりあつまっていることを「集」と言います。これが、すべての物が一箇所によりあつまる意味にまで拡大し、集中、集団、集合、集会、集結など、誰もが使う身近な熟語になりました。例えば、組織という木の上に集結した旅ガラス族は、賑やかな集会を開きます、と言ったように。

「昨今、原油高騰の影響を受け、石油製品はもとより、小麦などの食料品まで値が上がっています。今年は、地球温暖化問題に加え、こうした資源確保問題にも、注目していく必要があるでしょう。かような状況を踏まえ、コンサルやセミナーをどう展開するのが良いか、意見を聞かせてください」

「旅ガラス族の利点は、様々な業種のコンサル現場を持つことです。そこから、温暖化対策や資源確保の課題に関し、どのような情報を必要としているのか、コンサル担当者が吸い上げ、それをセミナー担当者が公開セミナーとして、広く関心を持つ企業に提供してはどうでしょう」

「方向性は良いと思いますが、コンサル担当者が勝手に取材しても、セミナー企画情報として活用が難しいと思います。業種毎に温暖化対策や資源確保の課題は異なるでしょうから、セミナー担当者が素案を作り、その裏付けをコンサル現場で確認する手法は如何でしょう」

 こうしたやりとりを、集会場の後ろで黙って聞いていたカラス族のリーダーは、経営資源を環境と食糧に集中し、コンサル現場情報を温暖化対策や資源確保のセミナー企画へ、積極的に活用する方針を固めたそうな。


              急く気持ち 抑える気持ち 併せ持ち
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by tabigarasu-iso | 2008-01-06 22:19 | 随筆 | Comments(0)

 小さな柿木の細枝には、どの枝にも雀が鈴なりになっています。穏やかな冬の日差しを浴びて、雀の学校が開かれているのでしょう。皆が一度に好き勝手な話をするものですから、その喧しいことといったらありません。

 それが一瞬にして静かになり、枝から舞い立つ時の風を切る音が「ブルッ」と聞こえます。暇を持て余した猫が、遊び半分で近づいたのでしょう。危害を加えられる恐れが無いと知り、間も無く雀の集団は元の枝に舞い降り、先にも増してお喋り教室が再開します。

 相手にされなかった猫は、誰も責める者は居ないのに、獲物を取り逃がした責任を負って、申し訳無さそうに頭を下げて家の中に戻り、キャッツフードの入った容器に首を入れ、パリパリ音を立てました。

 枝先に残った柿の実を啄ばむ雀の姿を、飽きずに見守る暇人の一人が、ポツリと口に。
「数日前の事、似た様な場面で、どこからか隼が急に舞い降り、舞い上がった時には、雀をくわえていた」

 話の途中、再び雀の群れが枝先から消えました。舞い降りた物は無く、猫も食事中ですから、何に怯えたことでしょう。もしかしたら、仲間が隼に襲われた話が聞こえていたのかも知れません。
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               陽だまりに 一輪の花 早つけて
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by tabigarasu-iso | 2008-01-04 01:01 | 小説 | Comments(0)