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白髪の旅ガラス

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もぎ

 本番の試験に備えて実施するのが、模擬テスト。この五文字を見る度に、不安と期待の入り乱れた、高校、大学の受験当時を想い出す方も多いことでしょう。同じ模擬、ISOマネジメント審査の前に、我等コンサルも実施することがあります。

「今日一日、私、コンサルでありながら、コンサルではありません。審査員となり、冷たく静かに、質問します」
 毎度御馴染みのコンサルですから、顔には笑みが絶えません。
「ところで、今日の模擬審査、部門責任者だけではなく、また推進担当者で終らず、その中間に位置する方にも、問います」
 この言葉は、直に実行されました。
「部門責任者を補助する方、本年度の目標に捺印されていますが、何を確認されてのことでしょうか」
 まさかの問いに、言葉を失う係長さん、上司である課長の顔を見て諦め、推進担当者がうつむく姿に、これまた諦めます。

 そのままでは模擬審査の場がしらけ、中には腹を切る方も出そうですから、係長さんに向かい、目標を確認した印の訳を、順を追って説明することにしました。
「この仕組み、トップが決めた方針を実現するもの。そこで目標を決め、これを実現する策、担当者、それに時期を確認したのが、あなたの印ですね」

 この印、目標が達成出来ない場合、約束手形と同じ、責任を取る証ですと告げます。
「そうと知っていれば、内容を確認してから、印を押せば良かった」
 呟いたつもりの係長の言葉、室内の隅々まで響き渡り、模擬審査の緊張感が一瞬にして解けました。

稲に麦 緑黄金の こおりやま
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by tabigarasu-iso | 2006-05-31 20:59 | 問題解決 | Comments(0)

乱れ

 或る方が、英語教育は中学生からで充分である、まず日本語をしっかり身に付けることが大切であると、テレビの討論会で発言されましたが、同じ意見の方は大勢いることでしょう。

 日本語を学ぶことは、そこに濃縮された日本の文化を学ぶことですから、それをさておき、幼児のころから英語教育に熱をあげるのは、自国の文化を知らない子供を育てることになり、日本人に生まれながら日本を知らない、はなはだ具合が悪いことになります。

 ところで、中学から三年以上も英語を学んだとしても、話せない、書けない、それが情けない、といった方が圧倒的に多数ではないでしょうか。けれど、相手が英語しか話せず、英文で電子メールが入り、それが断れない相手であれば、必要に迫られ、みるみる上達する人もいます。

 日本語も妖しくなり、英語も達者でない者が増える中、辺りを見回すと英語らしきものが氾濫しているのは、妙な現象ですね。日本語よりカタカナ英語の方が、人の関心を引くのでしょうか。街中で、シャツに書かれた大きな漢字を見るにつけ、何故か安堵しました。

満席の デッキで払う 加算金
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by tabigarasu-iso | 2006-05-29 21:25 | 随筆 | Comments(0)

親知らず

 親元を離れる時期に生える歯を、親知らず。噛み砕いたり、挽いたりする役目も無く、痛くもないのに抜歯される、歯の中では悲しい存在。生い立ちはもとより、抜歯されるのも親が知らない、悲劇の奥歯を抜くことになりました。

「どうされます?持ち帰りますか?」
 鮮血の付着した親知らず、幾ら用無しになったとは言え、五十数年の間、自分の身体の一部であったもの。
「ええ、ひょうします」
 麻酔が効いた口元で、頼りなく答えました。
「それでは、綺麗にしてあげますから」
 
 可愛い歯型の容器に収められた親知らず、上面は磨り減り、側面を虫に喰われ、根は意外に短く、しかも先曲がり。上顎の奥に座を占めていたから、落ちない工夫でしょうか。仲間からも役立たずと言われ、歯医者からは抜歯される脅しを何度も受けて、それでも懸命に生き抜いてきた姿を間近に、目頭が熱くなりました。

 こんな親知らずにも、必ず役目はある筈。不要なものなど、神様が創造する筈がありません。知恵歯とも呼ばれていますから、当人の知恵が付いた時期を告げる、重要な役割を担っていたのです。だからといって、親知らずの抜歯で、これまで蓄えた知恵が消失する心配はありませんぞ。

旅不慣れ 静寂破る 話し好き
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by tabigarasu-iso | 2006-05-27 19:55 | 随筆 | Comments(0)

足の裏

 朝から晩まで立ち通しで話す機会に恵まれた講師やコンサルの足は、固い床の上で固い靴を履き、その中で懸命に全体重を支える。その指先は、血流が鈍くなり、張り詰めの筋肉も、休みが欲しくなった。

 素足になり、急いで重圧から開放してあげるが、そこに鈍痛が無数に走る。
「すまないが、足の裏を指圧してくれないか」
 指の付け根を強く押して貰えば、全ての箇所が急所を突かれたようで、悲鳴に近い声を出してしまう。
「指を開き、その付け根を強く押していいぞ」
 強がりではないが、痛みのあとが心地良く、遠慮しがちな相手に頼む。

 痛む箇所を二度押して貰えば、三度目は痛みを感じない。指先の血流が元に戻り、筋肉疲労を癒していることであろう。こうした応急処置を、繰り返し受ける人は良いとし、指圧をする人は大変である。

そこで今日、固い革靴から普段履きの革靴に替えてみた。指先は上下左右に思いのまま、土踏まずを曲げることも容易になり、先日まで覚えた足裏の痛みが幻に思える。紐の付いた黒の固い革靴がビジネスマンのマナーと信じていた愚を捨て、しみじみ足裏に感謝しませんか。
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汗香る 通勤車輌 いつも梅雨
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by tabigarasu-iso | 2006-05-26 22:41 | 随筆 | Comments(0)

夜行列車

 先を急ぐ朝の通勤列車にレールを譲り、夜行列車は青い塗料で厚化粧した車体を、ゆっくり運ぶ。かまぼこ型の屋根を見上げれば、錆びた素肌を隠そうともせず、そのまま走り続けた歳月を見せている。

 新幹線が移動時間を短縮し、飛行機が更にそれを加速する時代になり、老車輌の出番は残すところ僅かであろう。やがて、車体に花を飾った引退のセレモニーが放映されて瞬時に消え、鉄道マニアのカメラの中だけに雄姿が生き延びる日も近い。

 目の前を通過する北斗星を眺めていると、思わず己の人生を重ねたくなる。黒髪は白髪となり、額の皺は深みを増し、背は丸くなり、重い鞄を提げ続けた肩は落ち、腰に痛みを覚えて肩を替え、一息ついたトイレで鏡を見れば、親父に良く似た自分が居る、驚いたあの瞬間を想い出す。

 最後尾の車輌を見送り、背筋を伸ばした。すると忽ち、センチメンタルな気分は消え失せ、夜行列車を初めて利用した新婚当時に気分は戻り、気持は青年、見掛けは中年のコンサルに変身する。さあ、期待を寄せて下さるコンサル現場に参ろうか。

記念日を 想い出すのは 今おっと 
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by tabigarasu-iso | 2006-05-24 23:24 | 随筆 | Comments(0)

人文字ぐるぐる

 火の国に、人文字と言う珍しい名のネギがあります。さっと熱湯に通し、ぐるぐる巻いたものを人文字ぐるぐると言い、酢味噌を掛けた姿に、好奇心の強いコンサルは黙っていられません。

「これは?」
「ひともじぐるぐると申します」
「はあ?」
「他国の方には、珍しいものでございましょう」
「さよう、江戸では、見たことがありませぬ。はて、何物でしょうか?」
「火の国では、昔から食しているネギでございます」
「ネギに、ひともじぐるぐると。この国の方は、詩人ですな」
「江戸の方、良く聞きなされ。ネギの名は、人文字で、ぐるぐるは、ネギを巻いたものでございます」

 食感は、ニラのようでありながら臭みなく、更にぐるぐる巻いてありますから、歯応え充分。一つ目は恐る恐る口に運んだものの、忽ち小鉢は空になりました。当然のことながら、地元の芋焼酎を湯で割り、既に二杯目も終ろうとしています。

 かように、旅先には珍しいものが登場し、コンサルの一人旅を癒してくれますが、ぐるぐる目が回るような値が張る店も中にはありますから、神経を張り詰め暖簾を潜るのも、旅の心地良いスリルと言えましょうか。

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邪魔するな 皐月のトカゲ 背を干して 
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by tabigarasu-iso | 2006-05-21 16:29 | 随筆 | Comments(0)

まだ見ぬあなたへ

 電波の無駄使い、通信回線混乱の源と言われながらも、呟きのブログ掲載、早くも一年が経ちました。これも、絶え間なくアクセスして下さる、あなたの懲りない熱意に支えられてのことです。

「どのホームページを見ても、宣伝ばかりで、代わり映えしないわ」
「そう、堅苦しいものばかりね。仕事でなければ、開けたりしないわよ」
「あら、そんなことないわ。コンサルの呟き、読んだことある?」
「知らないわ。どうせ、どこかの暇なおじさんの自己満足でしょう」
「そうかも知れないけど、試しに一度読んでみたら。役には立たないけど、気分転換にはなるわよ」

 ブログに呟きを掲載したのは、昨年の五月のことでした。それまで、所属する組織のホームページに掲載していたのですが、投稿に更新が間に合わず、時には季節外れの間抜けな更新になりまして、ブログなら投稿者が簡単に更新できると教えてもらい、味を覚えて今日を迎えます。

 日記をウエブで公開するのがブログですが、呟きは旅ガラスの日記ではありません。まだ見ぬあなたに、仕事の合間を縫って、密かに読んで貰うことを想定した、コンサル現場で覚えた熱き感情をヒントにしながら、淡々と語ることを旨とするものです。

 あなたの貴重な時間を何度となく頂戴していますから、それに見合った感動、微笑み、共感、それ以外の何かしらをお届けしたく、コンサルの仕事はさて置き、白髪を振り乱しながら、これからも呟いて参りますので、あてにしないでお待ちください。

田舎味噌 母の想いが 味増して
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by tabigarasu-iso | 2006-05-16 22:31 | 随筆 | Comments(0)

紙の音

 静かな往路の車内で、束の間のうたたねを楽しんでいる時のことでした。太った方がソファーを大きく揺らし、失礼とも言わず、すぐさま新聞を広げ、次から次へと神経質にページをめくります。

「バリバリ、バシバシ」と新聞をめくる音に折る音、紙から発生するものとは思えません。その音、元は木ですから許せますが、音を発生させる主は許せませんね。眠い眼を開け横目で見ますと、文字を読むというより、その音を楽しむ子供のようです。折り込みの広告まで同じ様にするのですから、紙で遊んでいるのに違いありません。

 季節の変わり目には、色々な方が出現します。読みもしない新聞をめくり続ける方が出現しても不思議ではありません。こう思い直して注意するのを止めにしましたが、それにしても、耳元で弾ける紙の音、何とも気に障ること。同じ様なこと、食事中にもありまして、満足げに食べる人の舌を打つ音、遠くから聞こえても探してしまいます。

 どうやら、些細なことをあれこれ感じる方が、神経過敏、了見狭いと思い直し、お好きにどうぞと開き直りますと、あれほど耳に付いた紙の音は聞こえません。気分転換の術、体得したと喜んで横を見ますと、隣人は新聞をめくり疲れて居眠り。間も無く、鼾を始めましたから、あとは神に祈るしかありません。

肉厚の 椎茸焼けば 梅雨が寄り
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by tabigarasu-iso | 2006-05-14 18:06 | 問題解決 | Comments(0)

見える化

 流行の変わること、渓谷を流れる水の様であります。それほど、常なるものは世の中には無い事と知り、他人と異なる道を歩むことを避け、肩を並べて歩きたがるのも、仲間意識の強い人間だからでしょう。

 その一つに、「見える化」なるものがあります。美しい日本語ではありませんが、現象を旨いこと文字にしている点では、有効な造語でしょう。それが意味するところは、勘や経験に頼っていた作業の流れを、他人や次世代に伝えるために、文字や画像で見えるようにして、有効な手順に絞り込み、継承することでしょうか。

 団塊の世代が揃って退職し、それと共に消え去るノウハウを、手元に留めようとする、組織の苦肉の策でもありましょう。そもそも、見えるものなどノウハウではなく、見えないものがそれですから、それを定年制の見直しといった人事面で対処せず、「見える化」で残そうとする、安易な考えを捨てることが肝心なことですが。

 確かに、見える化により、標準化できる作業も多くありますが、それは他から入手可能なものが多い筈です。必要なものは、自らの組織にしかない、独自なノウハウの積上げでしょう。それを果たすためには、経験を積んだ人を年齢ではなく実務面で評価する、「まだまだやれる化」の推進ではないでしょうか。

鉄の輪よ 生まれ変わって 鉄の輪に
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by tabigarasu-iso | 2006-05-09 21:43 | ニュース | Comments(0)

裸の洗場

 日頃、風呂には世話になるばかりだが、隅々まで掃除してあげる機会は少ない。感謝の気持はあるのだが、本格的に清掃するとなると、数時間は必要になるから、つい、その場しのぎになり、浴槽の表面を軽く洗って湯を入れて、己の身体を浸けるだけになる。
 
 その風呂に出会ってから一昔、いよいよ本格的な風呂掃除を決行する日が来た。下着一枚身に付けて、洗剤にタワシを手に風呂場に入る。けれども、どこから手を付け始めたら良いのやら、乾いた風呂場の浴槽、洗い場、壁、窓、いずれも長年の不義理が白色、黒色、灰色となって眼前に勢揃い。

 終いから攻めることにし、排水口の周辺に液体洗剤を撒いて、タワシで擦ると泡が盛んに立つ。車を洗う要領を想い出し、タワシを小さく回しながら、少しずつ泡を移動させた。手元の汚れが消える様子が判ると遣り甲斐に燃え、洗い場から壁へと範囲を拡げる。その間、屈んだままの姿勢で、腰を伸ばすこともない。暫らくすると、腰に痛みを覚え、立ち上がって水で泡を流した。

 慌てて排水口に向かう、泡の群が愛らしく見える。だが、乾いた壁に目を凝らすと、白い垢の群が、あちらこちらに陣を張ったまま。痛む腰を揉んだ後で、再度、洗剤を振り掛け、タワシで執拗に擦ったが、幾らか色が褪せた程度で、汚れは取れない。そこで、古い歯ブラシを援軍に呼び、洗剤を使わず水だけで擦ると、流石に壁の汚れも降参する。

 ところが、窓枠の黒ずんだ汚れは、歯ブラシすら役に立たない。そこで、止むを得ず化学の力を借りることにした。混ぜるな危険と大きく表示された、新兵器を取り出し、泡状の漂白剤を、窓枠の黒い箇所に吹き付け、そのガスを吸わないように急いで退去する。暫らく、お茶など楽しみ戦場に戻ると、かつて目にした真新しい窓枠に戻っていた。後処理の水で薬品を洗い流しながら、その素晴らしい効果に感心しつつ、水質の汚濁を心配する、久し振りの風呂掃除は、記憶に残る。

小鈴鳴る すずらんの花 見るような
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by tabigarasu-iso | 2006-05-02 22:41 | 随筆 | Comments(0)