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白髪の旅ガラス

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夜景

 はるか上空より見下ろす街の灯り、沢山の蛍が群がるように見える。まもなく着陸する安心感は、高度を急激に下げる不安と鼓膜が圧迫される痛みに挟まれ、打ち消されてしまった。強風のため、機体が揺れるアナウンスが機長からあった直後だから、尚更のことである。
 
 前方の大型スクリーンに映し出された誘導灯が次第に大きくなるにつれ、操縦席のパイロットの気分になった。その所為ではなかろうが、慌てて着地するタイヤが軋み音を立て、軽く機体がバウンドしたから平静でいられない。その直後、勢いを止めるエンジンの逆噴射が、ゴウと大きな音を機内に響かせる。

 間も無く、これまでに無い臭いが機内を漂い始めた。非常口座席に座った者の役目が書かれたオレンジのカードを内ポケットから取り出し、慌てて読む始末。このカード、チェックインを済ませたつもりで搭乗口に並んだところ、未だ済んでいないことに気付き、慌てて登録した際に渡された代物。早合点して注意勧告のカードかと思ったが、非常口に接している座席に座る者には、誰にも出されるカードであった。

 鳥は、猛スピードで突進し枝にとまるが、羽根を上下に動かし勢いを押さえ、バウンドすることもなく、枝へ静かに止まる。それに比べ、羽根の固定した飛行機は、充分な長さの滑走路であれば、静かに着地することも可能であろうが、そんな余裕のある飛行場はないから、多少のバウンドは仕方ないけれど、美しい夜景に見惚れた気分を、どこかへバウンドさせてしまった。

庭先の 木の芽膨らむ 知らぬ人
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by tabigarasu-iso | 2006-01-29 14:47 | 小説 | Comments(0)

雪が降る

 ホームで待つ人の横顔を、俄かに舞い始めた粉雪が、勢いを増した北風に押し流され後から後から漂着する。申し合わせた訳でもないのに、人は揃って風上に背を向け、粉雪を受けた。定刻が過ぎても、いつもの電車は来ない。遅延を詫びる駅員のアナウンスが流れたが、口を開くと粉雪が飛び込みそうで、人は押し黙ったままだった。

 この冬の雪、いつもより広範囲に亘り、量も桁違いに多い。それも、山村の過疎地で高齢化が進む地域に集中して降り続くから、やっかいな事態が起こる。屋根の雪を降ろす人手は、七十八十の高齢者ばかりだから、雪降ろしもままならない。放っておけば、雪の重みで押し潰される家も出る。これからが積雪の本格的な季節になるから、ますます危険な状況になろう。

 そんな豪雪地帯から、一時的に離れて暮らすよう、役所の勧めがあったが、長年住み慣れた村を、離れる者は居ない。一端離れたら、家が駄目になる前例を知っているから、当然であろう。それに、避難先が親類であっても、やることの無い生活は送りたくないからだとも言い、尤もなことである。

 そこで、自衛隊が雪降ろしに要請される事態になったが、これは応急処置に過ぎない。雪を降ろす若い世代が住める、村の経済振興を図ることが必要であろう。けれど、誰もそのことを口にしない。

 採算が合わない林業が廃れ、山が荒れれば、水も汚れ、空気も汚れる。綺麗な水や空気を供給する森林保全に税を積極的に投入すれば、そこで若い世代が生活することが可能となり、八十過ぎの方が雪降ろしに命を賭ける光景を、もはや目にすることもなかろうに。

豪雪に 故郷偲ぶ 次男坊
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by tabigarasu-iso | 2006-01-25 23:02 | ニュース | Comments(0)

風邪

 馬鹿は風邪を引かないなんて言う人がおります。熱が出て咳が出て痰が出て、悪くすれば一命を落としかねない病気ですから、一生馬鹿で居たいところですが、同じ部屋に風邪を引いた者が居て、その菌を空気中に振り撒けば、否応なく空気と一緒に菌を吸い込み、感染しないほうが不自然かも知れません。

 その時、抵抗力があれば馬鹿で居られますが、寝不足や疲労で弱った身体であれば、馬鹿を卒業することになります。この菌が、仕事をしたくない類であったらどうでしょうか。部屋の中に、その菌の持ち主が一人でもいましたら、瞬く間に感染し、組織が機能しなくなり、組織の死へと到ること間違いありません。

 いずれも、本格的な症状に陥ってから治療するのは容易ではありませんので、風邪なら普段から自分の体調に耳を傾け、疲れを自覚したところで睡眠を充分に取り、また、組織内で仕事をする気力のない人を認めたら、その気にさせる目標を持たせるか、それでも効果がないようであれば、しばらく自宅待機を勧告するのが、健全な組織運営の予防管理として必要ではないでしょうか。

 戦力外通知をされた元プロ野球選手が、入団の再チャレンジする姿をテレビ番組で観るにつけ、その気があっても実力がなければ組織に居られない仕事の厳しさが、組織が風邪を引かない、もう一つの予防薬と知りました。

静かさよ 雪を信じて 床の中
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by tabigarasu-iso | 2006-01-22 23:03 | 随筆 | Comments(0)

耳を立て

 膝に穴の開いたジーパン姿、三十年前に流行したスタイルの若い人が、新幹線の隣の席で仲間と仕事の打ち合わせをしていました。この案件は、三千万円の仕事になるとか、サイトのアイデアとして良いとか、今風のインターネットに関係した話をしている隣人に興味を抱き、目を閉じながらも、耳だけは隣の声を追い掛けます。

 耳に入る言葉は、数字の羅列と略語ばかりで、何を話題にしているのか、さっぱり判りません。それで、安心して口にするのでしょうが。それでも、大金が簡単に入ると聞けば、思わず鞄から小さなノートを取り出し、仕事の振りしてメモを取るのは、人情でしょう。

 周囲を気にしない会話、我等コンサル仲間も人前でしているかもしれません。今日のコンサルを反省し、次回の提案を打ち合わせる、その多くが帰路の車中です。どこの誰が聞き耳を立てるのか判らない過密な空間では、誰に聞かれても良い話をしましょうか。

 それでも、捏造されることがありますから、最初から聞かれることを前提に、推理され放題でも苦にならず、誰にも迷惑を掛けない話題に絞れば良いと、車内で備忘録にメモしながら、その最後には、耳にしたブログによる販促のアイデアも、抜け目なく追記したものです。

吹雪止み 梢に戻る 雀二羽
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by tabigarasu-iso | 2006-01-22 00:42 | ニュース | Comments(0)

 年老いて目の悪くなった大きなライオンの足裏に小さな棘が刺さり、痛くて歩けないでいるところに小さなネズミが現れて、それを抜いてあげる童話がありましたが、そんな話を想い出させる出来事がありました。

 ある夜、留守の家を、居眠りをしながらも懸命に守ってくれる番犬を連れ、誰の目も気にすることもなく、散歩を楽しみ始めたばかりのことです。植木の下から這い出た番犬、左前脚を軽く持ち上げ、足裏を着くのを避け始めました。どこぞ、怪我をしたのか気に掛かり、街灯の下で足裏を丹念に確認しましたが、傷もなく血の出た様子もありません。番犬も何食わぬ顔で先を急ぐのですが、数歩進むとまた同じ仕草になりました。

 過日、番犬は軽い脳梗塞を経験していますので、その再発かと心配しましたが、滞りなく用を済ませて帰宅し足裏を洗ってみると、大きな三角形の棘が指の間に刺さっています。こいつめと声を出して棘を取り出し、えいとまた声を出して、大きな棘をゴミ箱に放り込みました。

 その時、鏡に映った番犬の顔が笑っているようで、童話のライオンを想いださせたのです。床に足裏をしっかり着けるようになった番犬は、晩飯を食いに廊下を歩み始めて立ちどまり、ありがとうと言う代わりに、舌をいつもより長く出しました。

大雪に 大雨降らす 温暖化
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by tabigarasu-iso | 2006-01-16 21:38 | 小説 | Comments(0)

未来探し

 10年後、20年後の未来を探すビジネスが脚光を浴びているそうな。未来を探すサービス、何て素敵な呼称であろうか。こうありたいと願う庶民の「ありたい未来」、こうあるべきだと論じる有識者の「あるべき未来」、更に、こうなるであろうと予測する技術者の「ありうる未来」、それぞれ探してくれると言うから驚きである。

 ところで、未来は探せるものであろうか。そもそも地表に張り付いて、地上に飽き足らず地中にまで手を伸ばし、地球という持ち主が黙っていることを良いことに、資源やエネルギーを使い放題にした挙句、自ら撒いたガスにむせぶ勝手な人間に、未来を探す能力など期待できそうもない。

 けれども、ありたい、あるべき、ありうる未来を予測し、それに向かってやるべきことを、やらなきゃならないところまできたのは確かだから、その予測が外れたら不幸な結果になろうが、何もしないで自滅するよりましだろう。

 そこに、現状から未来を予測し、未来とのギャップを埋めるフォアキャスティングなるものや、あるべき未来を予測し、現状とのギャップを埋めるバックキャスティングと言う手法があるそうだが、それを使ったところで、未来を左右できる訳がない。

 こうしたおごりが、未来が読めなくなった原因であることを反省し、身近な自然に耳を傾けることから始め、自分たちの身近な未来を迎えようじゃありませんか。

繭玉に 豊作祈る 小正月
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by tabigarasu-iso | 2006-01-16 17:26 | Comments(0)

手振らじゃ帰れない

 コンサルの旅に慣れたカラス、時として巣に戻り、終日じっとしていれば飽きがくる。未処理の仕事があればこれ幸いに、パソコン相手に独り言。傍の迷惑省みず、受話器に飛ばす唾の嵐。いつの間にか遠くなりし耳のせい、大声張り上げ流す文句は、そりゃ見事。自ら誉める厚顔に、電話の相手と笑いを分ける。

 それも、二日続けば限界で、空を飛びたく仕方ない。ついぞ、仲間の営業先を横取りし、訪問した先は九州、加藤清正が築く熊本城もあり。それでは噂に聞く石垣を見んと、そこまで羽根を伸ばす予定を組もうとしたが、翌日には既に控えた講師の務め、やむを得ず、その機会は後に回し、その日帰りの営業となりにけり。

 ちょっぴり肩を落とす白髪のカラスに、全ての出張、旅行とみなすカラスの妻は、それでも九州に行けるだけ、羨ましいと言い放つ。確かに、言われてみればその通り、すぐその気になるプラス思考に立ち返り、思い新た鞄に詰める、口説き文句を盛り込んだ、取って置きの営業資料。

 遠路の移動、コンサル決まれば経費になるが、営業なれば賭けになる。否となっては、妻の言うただの旅となり、七つの子を持つカラスとしては具合が悪い。何としても成約を願えば、いつも以上に営業の気合が大いに溢れ出て、めでたく成約となりにけり。そこで、カラスには、巣繕うより、空を舞うのが性に合うと合点する。

次の駅 聞いた途端に 目が覚めて
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by tabigarasu-iso | 2006-01-09 22:53 | コンサルサービス | Comments(0)

冬の蜜蜂

 春から秋にかけ、花の蜜を求め、蜜蜂が飛び交う光景が、各地で見られます。北風が強く吹き、粉雪が太陽の光を遮る冬場になり、彼女たちは何処で何をしていることでしょうか。

 農家の軒下に作られた縞模様の見事なスズメバチの大きな筒状の巣が夏場より大きく膨らみ、その隣には下から巣の中が覗ける幼児の頭ほどに周囲を広げたアシナガバチの巣がありました。

 太陽が顔を覗かせ、風もなく暖かい休日、慌しい仕事から離れ、正月の祝い酒を朝から口にし、酔い覚ましに外に出て軒下の見事な蜂の巣に見惚れ、しばらく主を探してみましたが、彼女たちはどこにも見当たりません。きっと暖かな地方に移動し、そちらで花を追い求めていることでしょう。

 ところで、先程から羽根の音が後の方から聞えます。古くて大きな剥き出しの二階台の隙間から、蜜蜂が忙しく出たり入ったり。どうやら、出稼ぎには行かず、当地で冬を越す蓄えをしていたようです。それが暇を持て余し、太陽の光を浴びに、冬空に舞い出たのでしょう。間抜けな一匹が襟元に停まり、追い払っても動こうとはしません。何やら、自分の姿を見るようで、そのままにしておきました。

降り積もる 雪を降ろして いかなくちゃ
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by tabigarasu-iso | 2006-01-06 18:57 | 小説 | Comments(0)