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白髪の旅ガラス

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城に招かれ

 城を囲む堀から、地元で聞き慣れた牛蛙の鳴く声が、太く低く不気味に湧き上がる。頭を起こして見上げれば、ライトアップされた彦根城が小さくはるか彼方に浮かぶ。こうして、夜中に牛の鳴き声を耳にするのは懐かしい。それにまた、車窓から眺め、いつしか訪れたいと願っていた城下を訪れる幸運に感謝する。

これも手違いから、いつもの宿に泊まれず捜し求めてくたびれて、何とか寝場所を予約し安堵したところ、到着したホテルの前が彦根城とは、瞬く間に旅の疲れは何処かに消え去った。

 つい先程のこと、申し訳なさそうに告げる常宿の支配人は、困り顔の客に代わり、近くのホテルを探してくれたが、どこも満室で近場の宿を確保するのは難しい状況になる。

「草津まで行けば、お部屋はとれますが」
 簡単に言うが、電車で三十分の移動が必要である。明日の朝早くからの仕事を控え、どうしても近場で宿を確保したい。

相方が顔色を変え、ホテルのランクを上げて必死に探せば、その気持が通じたのか、訳せば城宿になるホテルが空いている。重い鞄を手に持ち、駅前のタクシーを拾い、そのホテル名を告げた。

 こうして、憧れの城に招かれたことを感謝し、声高でチェックインを済ませ、エレベータに乗る。そこには、予想しない花と椅子が置かれていた。これも、宿探しに疲れた人へのサービスではなかろうか。それにしても、のんきに座る者もあるまい。

 部屋の広さはいつもの倍近く、窓の外には彦根城の雄姿が浮かぶ。時間を忘れて遠くに眺めれば、ライトアップの明かりがほどなく消えた。

主待ち 色を変えたい 蓮の花
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by tabigarasu-iso | 2005-07-30 19:25 | 随筆 | Comments(0)

新潟平野

 田は棚田、畑は山腹、視界は山脈、海の無い山国に生まれ育った旅ガラス、江戸、鎌倉、京都そして大阪へ、日本の文化や経済の中心地を訪れる機会は多いが、米の産地の越後を舞うのは二十年振りのことであった。

 大宮から上越新幹線に乗り、長いトンネルを幾つも越え、森林資源の豊かな日本を己の目で確かめながら、早めのビールでまどろむ。すると、あれほどあった山々が、彼方に消えて、眠気眼の視界の先には、兵隊の隊列に良く似た、稲の整然と立ち並ぶ青田が飽きるほど続く。

 その昔、棚田に馬を入れ、田植え前の田に水を充たし、馬鍬で土塊を砕き、田面を平らにする作業に借り出され、馬の先導をしたことがある。馬のひずめが泥水に入る度、先導役の少年の小さな背中に泥水を浴びせ、頭から尻の先まで泥だらけになり、身体が冷えて震えたことを想い出す。

 それに比べれば、何と立派な平地の田であろうか。かつて、越後の虎と呼ばれた武将が力を蓄えた理由が苦も無く判る。そこで、大いに期待してある駅に立ち降りたのだが、夕方六時だと言うのに、商店街に明かりは疎らであった。

「貴方の行きつけの店を紹介してください」
 旨いもの食わせる店とは言わずに、ホテルマンに聞き、紹介された店は、ホテルから歩いて直ぐの大衆食堂で、店内は地元の客で賑わっている。

 人目を気にせず大声で話す酔った男、母親の帰りを店内で待つ眠った子供、日本語の達者な外人、そして店には似合わない背広姿の旅ガラス。例により、地元の冷酒、餃子それにラーメンを頼み、一人で少し酔うには、充分な越後の居酒屋であった。

新秋刀魚 産地でつつく 地の酒と 
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by tabigarasu-iso | 2005-07-23 23:59 | 随筆 | Comments(0)

伸びる髭

 髭は伸びる。それを決まって剃る人も居れば、そのままにしておく人も居る。平日は前者で、休日のみ後者になる者もあろう。

 髭を剃るには、髭剃りが要る。電動と手動があるが、朝の静かさを保つには手動が良い。最近の髭剃りは、刃が複数枚で切れ味が良く、長持ちする。忘れた頃に買い換えるのだが、替刃が本体より高いのが面白くない。確かに、切れ味を買うのだから、手持ちの部分などオマケのようなもので、無料でも良さそうだが、替刃と持ち手が一緒になって、初めて髭剃りが機能するのだから、それなりの価値はある。

 或る日、我慢して使っていた最後の替刃が機能を果たさなくなった。石鹸を付けて剃るのだが、剃った後で水に流せば、剃る前と髭の状況が変わらない。仕方なく、その朝は電動の髭剃りを使用し、帰り際に新しい替刃を買った。

 翌朝、新しい刃を付けようとしたのだが、持ち手と刃の取り付け機構が不整合で使えない。再び電動の髭剃りに世話になり、今度は新しい替え刃に合わせ、持ち手を買うことにした。やはり、多少の不安はあったが、新品の替刃と持ち手は全く合わず、使えない髭剃りセットが完成する。

 製品やシステムの国際標準化が進み、世の中、便利になっていると言うのに、髭剃りの標準化も、早急に検討頂きたいと願うのは、私だけであろうか。

学生の 姿涼しき 新発田駅
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by tabigarasu-iso | 2005-07-22 22:09 | ISOマネジメント | Comments(0)

ニュース

 地震、津波、大雨、これら自然の引き起こす災害に加え、無差別テロ、オレオレ詐欺、コンピュータウイルスなど、人が悪意を持って引き起こす事件が、報道されない日はない。

 しかしながら、こうした報道ばかりの傾向に、嫌気がさすのは少数派であろうか。何も、事件ばかり伝えるのが、報道ではない筈である。ほっとする情報を、バランス良く組み入れることは、叶わぬことか。

 先日のことであるから忘れもしない。購入してから十数年経たエアコンに、久し振りの出番を与えた。間も無く、カリコリ、カリコリと何かを砕く音がする。やがて、プップップッと小粒の氷が落ちてきた。そればかりか、白煙が吹き出し、もはや涼を楽しむレベルにほど遠い。

 こうして、飛び散った氷、消え行く白煙と見誤った蒸気の行方を見守り、ビールを手にしたまま、飲むのを忘れていた男の心情が、ニュースになっても良いのでは。それに、その男がボディシャンプーをヘアーシャンプーと思い込み、長い間気が付かず洗髪していたことも、オマケにつけてあげよう。

新潟の 広き青田に 眼を見張る
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by tabigarasu-iso | 2005-07-20 22:15 | ニュース | Comments(0)

心の余裕

 住む人が絶えて久しく、手を入れることもなければ、屋根瓦の落下するのは必然のこと。前回訪問の時には、その屋根はビニールシートで覆われていたが、今回訪問では状況が更に悪化し、完全に屋根が抜け落ちてしまった。かように、朽ち行く様をビジネスホテルの窓から見るにつけ、旅ガラスの心は痛む。

 同じ様に、物流の順路が変わり、かつて栄えていた商店街に人の姿もまばらになり、締め切ったシャッターばかりが目に付くのも心が痛む。その裏通りは更に激しく様変わりし、建物が取り壊され平地になるまで見届ければ、寂しささえも現れることをためらう。

 かように、何故に心が痛み寂しさを味わうのであろうか。あって欲しいと望むもの、それが大きく変わり果て、期待外れた時に失望し落胆するが、そればかりでは生きて行けないから、元の心を取り戻す手段かと思ったりする。

 人の別離も寂しきもの。会うは別れの始まりゆえ、いずれ誰でも別離の寂しさを味わう運命にあるが、それを味わうことで次の行動が再開することになるから、寂しさは未来のエネルギー源かも知れない。そう考えれば、寂しさを味わうことに感謝する、心の余裕も生まれよう。

旅先の 雨は心を うつにする
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by tabigarasu-iso | 2005-07-14 22:42 | ニュース | Comments(0)

紫陽花

 紫陽花は、雨に打たれることを承知で花をつける。うっとうしい季節を楽しむ術を心得ていながら、更にその色を妖しく変えて、カタツムリの次に誰をとりこにしようとするのか。

 ユーザのニーズに応じてメニューを揃え、感謝の様もそれに応じて変化する情報サービス業、花であれば何になる。
『この一年間、コンサルを利用くださり有難う御座います。来年度も引き続き宜しく御願いします』
 裏方に徹すること数年、いつまで経っても道行く人に花を見せないコンサルは、八十年に一度花を咲かせる竹の花。
『この度は、弊社のセミナーを利用くださり有難う御座います。宜しければ次のセミナーも御利用ください』
 同じ人に再度利用されることのないセミナーは、一期一会の花。
『この度は、弊社の書籍を購入くださり有難う御座います。宜しければ関連のセミナー、あるいはコンサルを御利用ください』
 控え目な文字の集積、いつまでも積んで置かれたものならば、化石の花。

 店先で軽い気持で手にした本が面白く、ついつい著者の組織が主催するセミナーを申し込み、それが歯に衣を着せぬ話で痛く気に入り、とうとう毎月訪問のコンサルへと結び付く。こうして、それぞれの花が上手に咲き乱れ、多くのユーザを魅了する。

 してみれば、我らコンサルがユーザに見せる花は、表は国際標準の造花ながら、実はユーザの要望に応じて色を変える、サービス業の紫陽花と言えようか。

草の上 犬と一緒に トンボ追う
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by tabigarasu-iso | 2005-07-13 00:31 | コンサルサービス | Comments(0)

子の子

 『良く聞け!』などと、テレビで流行る乱暴な物の言い方を爺さんはしませんが、真夜中に生まれしカラスの初孫に伝えたいことがあります。やがて文字を覚えた時に読んで欲しくて、早々と胸の内を明かさずにおられません。

 君の父方の爺さんは、白髪をトレードマークに全国を舞う、環境コンサルティングを稼業にしています。これと言った趣味もなく、当てにされる財産もなく、ただただコンサルに明け暮れる毎日ですが、小さなノートに旅先での想い出を織り込む随筆だけは、習慣にしてから久しくなりました。

 コンサルを利用される組織の方を読者に想定し、コンサルの視点から捉えた勝手な駄文と承知しながら、組織のホームページに掲載を始めたのは五年前のことです。それが意外なことながら、楽しみにしてくださる方が徐々に増え、今では毎月一万件近くのアクセスを頂戴するコーナーになりました。これを継続する嬉しさと同時に責任の重さを感じながらも、いつの日か、人の心に残る本格的な物語も、世の中に出したいと夢見る爺さんです。

 その爺さんの特徴、子をとばして孫に出易いことを、やがて学校で習うことになりますが、それが幸か不幸か大きくなった本人の判断に任せることにして、君には人の心を優しく動かす物書きになって貰いたいもの。この世に誕生したばかりの孫に、爺さんの夢の続きを託すのは、それこそカラスの勝手かも知れませんが、そう願わずには居られません。

知り顔で 花弁鮮やか 山帽子
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by tabigarasu-iso | 2005-07-07 23:49 | 随筆 | Comments(0)

明かりを点けて

 便利なもので、安価な太陽電池付きの夜間灯があります。昼に太陽の光を頭に受けて充電し、暗くなると蛍のように淡い光を放ち始め、朝まで庭先を照らす優れもの。省エネに防犯の役目も引き受ける夜間灯を、数本ほど庭先に挿して置けば電気代も掛からず、暗い夜も安心して眠ることができるでしょう。

 かように、安心の明かりを点けるのは良いものですが、昔のお客様が問い合わせを下さり更に注文へと至れば、それにも増して喜びの明かりも点くというもの。

 それは、マナーモードの携帯電話が胸で振るえ、慌てて店を飛び出しその表示を見れば、非通知設定ゆえ恐る恐る電話に出てみると、懐かしいお客様の声でした。

「今、大丈夫ですか」
 相変わらず、相手の状況を確認する心配りを忘れずに。
「大丈夫です。喫茶店から出たところですから」
 こちらを振り向く通行人には申し訳ないが、かなり大きな声で快活に話す。
「申し訳ありません。本当に大丈夫ですか」
 先方の恐縮している様が声に映る。
「スポットでの支援は可能でしょうか」
 何をおっしゃるとばかり、どんなパターンでも対応させて頂きますと答えれば、安心して要望を話して下さる。

 帰路の車中、久し振りの問い合わせが嬉しくて、お礼の携帯メールを送信すると、すぐに見積依頼の返信メールが入り、コンサルの心に明かりを点けてくれました。

孫の顔 梅雨の空さえ 晴れにする 
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by tabigarasu-iso | 2005-07-01 14:33 | コンサルサービス | Comments(0)