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カテゴリ:小説  

  • 太陽と月と地球とウルトラマン
    [ 2012-05-22 08:45 ]
  • 第六感
    [ 2012-05-19 00:22 ]
  • ガラスの壁
    [ 2012-05-18 12:02 ]
  • 呑気者を揺り起こす雷神
    [ 2012-05-07 08:18 ]
  • もう梅雨かしら
    [ 2012-04-24 12:20 ]
  • 春雷に起こされて
    [ 2012-04-19 06:37 ]
  • 春の嵐も鼾に負ける
    [ 2012-04-02 12:03 ]
  • 勘違い
    [ 2012-03-09 08:04 ]
  • 形見の言葉
    [ 2012-03-04 00:35 ]
  • 上を向いて歩こう
    [ 2012-03-01 18:30 ]

太陽と月と地球とウルトラマン  

2012年 05月 22日
 太陽と地球の間に月が割り込み、瞬間的に太陽の光を遮る。そう滅多にないことであるから、大人から子供まで揃って、その瞬間を見ようとした。

 まともに見れば、太陽の光であるから眼が焼ける。何も持たない自分は、目を細くして少しだけ覗いてみた。その先には、月に反射して飛び散る朧な輝きがあったようである。

 いつもの光が急に途絶え辺りが薄暗くなった所為か、何となく不安な気持ちになった。それは、太陽から生きるエネルギー貰っていたウルトラマンが意地悪な月に邪魔されたかのようである。

「金環日食、見ましたか」
「残念ながら、その時間帯は電車で移動中でした」

 この答えは、正しくはなかった。まさか、ウルトラマンの立場で意地悪な月の話などしたら、還暦までの人生が疑われるではないか。

日食に 騒いだ後で 夕食も

by tabigarasu-iso | 2012-05-22 08:45 | 小説 | Trackback | Comments(0)

第六感  

2012年 05月 19日
 上から誰かの視線を感じる

 一階の待合室から見上げた

 白髪の翁が見下ろしている

 何を見ているのであろうか

 その対象ならば面白くない

 視線を避けようと下を向く

 それでも未だ視線を感じる

 これは六番目の感覚だろう

 そう思い再び見上げてみる

 大きなガラスしか見えない

 翁は何処かへ去ったようだ

 それから視線も消え失せる

 強風に 語り掛けても ゴーばかり

by tabigarasu-iso | 2012-05-19 00:22 | 小説 | Trackback | Comments(0)

ガラスの壁  

2012年 05月 18日
 次の打合せまで、ラーメン屋ではなくビルディングの二階にある喫茶店で休憩することにする。何の気紛れか、二面がガラスの壁の隅にある小さな丸テーブルを選び、一番安いコーヒーを買ってその上に置いた。

 コーヒーを飲むのも忘れ、パソコンを操作する振りして眼下の通行人を眺める。ネクタイを外した背広姿の似合う人は少ない。パソコンのディスプレイに映る自分の姿を確認してみたが、似たようなものである。

 春雨も止み、辺りが明るくなった。下を向いて歩く人の手から、瞬く間に傘が消えてなくなる。何を話しているのか、顔を上げた通行人の表情も明るくなった。

 まさか、ガラスの壁から観察されているとは誰も知らないであろう。また、そんな暇人が居るとは、先を急ぐ人は誰も想像しない筈である。その姿は、電柱の先端に停まり生ゴミを出す人が立ち去る瞬間を窺うカラスに似ていた。

 人を見て 動き始めた 昇降機

by tabigarasu-iso | 2012-05-18 12:02 | 小説 | Trackback | Comments(0)

呑気者を揺り起こす雷神  

2012年 05月 07日
 辺りが俄かに暗くなると大粒の雨、ところ構わず落下する。その勢いで追い立てられた土埃、太陽の香り乗せて鼻の穴に舞い込む。

 汚れた大地を清めた後で、雷神は昔ながらのゴロゴロ、ドンピシャ、バリンバリン、ピカピカと、昼寝する呑気者を揺り起こす。

 そうと判れば、呑気者も意地になる。臍を見せては負けになるから、うつ伏せになり寝た振りして鼾を掻く。こうすれば、雷神は呆れて移動することであろう。

 ところが、そんな人間の浅智恵を雷神はお見通しであった。それでは、これでもどうだと凄まじく太鼓を打ち鳴らし、稲妻を放つ。

『大人気ないですよ』
 そう呑気者が言った途端、ゴロゴロ、ドンピシャ、バリンバリン、ピカピカの全メニューを終え、雷神は西の空へと消え去った。

 雷神に 力貸してと 発電屋

by tabigarasu-iso | 2012-05-07 08:18 | 小説 | Trackback | Comments(0)

もう梅雨かしら  

2012年 04月 24日
 このところ、人間にはうっとうしい雨模様が続いています。そんなことは気にせず、花の散った梅の木の枝には、小さな小梅が顔を見せました。

 間引きしなければ梅の実は大きくならないとか、そんな話を聞いた所為でしょう。
「もう梅雨かしら」
「少し早目だが、そう言えるかも」
 溜まり水を避けながら、二人は気楽な会話を楽しみます。

 いつものことながら、通勤時間帯のバスは定刻に到着しません。それを承知の上で、バスを待つのも良いものです。それが証拠に、誰一人苛立つ表情の人は居ません。

 生憎の霧雨は風に押され、バス停の中まで舞い下りて来ます。屋根の下で傘を差したまま、当てにならないバスを待ちながら梅雨を語りましょう。

 節電を 強化した時 会社消え

by tabigarasu-iso | 2012-04-24 12:20 | 小説 | Trackback | Comments(0)

春雷に起こされて  

2012年 04月 19日
 桜の美しさに酔った後で、朝から曇った空を見れば、誰でも気分が滅入る。それでも、変わり易い春の天気だから、何時かは晴れるだろと期待していた。

 夕方まで辛抱強く待ったものの、晴れるどころか黒色に変化した雲の天上では、何を間違えたのか、雷神が大きな太鼓を打ち鳴らす。

「おいおい、神様も花見で酔ったかな」
「あなたではありません」
「いやいや、中には酒に飲まれる神様も居る筈だ」
「そんな意志の弱い神様は居ません」

 珍しい春雷の太鼓が止んだ所で、何処からか老夫婦の会話が聞こえる。男の言い分に頷いた後で、女の否定にも頷いた。

 春雷に 雹は嫌だと 芽が叫び

by tabigarasu-iso | 2012-04-19 06:37 | 小説 | Trackback | Comments(0)

春の嵐も鼾に負ける  

2012年 04月 02日
 強風に打たれ、カタカタガタガタ、一晩中喧しい雨戸に注意した。
「お静かに」
 
 それが効いたのか、絶え間なくうるさかった雨戸は急に静まる。
「やれやれ、お陰で目が覚めた」

 布団に潜ったものの、目が冴えて眠れない。
『それなら付き合おう』

 そう思ったのか、大人しくしていた風は前より勢を増した。
「春の嵐か」

 隣の布団から返事はなく、替わりに鼾が聞こえる。
「鼾の嵐か」

 安普請 風に煽られ 直ぐに鳴り

by tabigarasu-iso | 2012-04-02 12:03 | 小説 | Trackback | Comments(0)

勘違い  

2012年 03月 09日
 会社の外で仕事をする人は、自宅から現場に直行し、外勤を終えて自宅に直帰する場合が大半かも知れません。

 会社の中で仕事をする人は、自宅から会社に入り、内勤を終えて自宅に戻る場合が大半になることでしょう。

「いいわね。たまには、私も直行直帰してみたいわ」
「現場が同じなら良いかも」
「同じ現場では厭きない」
「仕事の内容によるさ」

「あなたの場合、訪問先が毎回替わって楽しくない」
「仕事だからね」
「あら、残念ね」
「何か勘違いしていない」
「何を」
「出張と旅行を混同していない」
「同じことでしょう」
「・・・」

 雪も溶け フキノトウらも 膨らんで

by tabigarasu-iso | 2012-03-09 08:04 | 小説 | Trackback | Comments(0)

形見の言葉  

2012年 03月 04日
「皆仲良く」
 それが形見の言葉であった。

「思い残すことはない」
 微笑みながら細い声で言う。

 幼い頃は継母の苛めに耐えた。
 嫁に来てからは農家の過酷な労働に耐える。
 
 やっと気儘に暮らせる時代を迎えた。
 けれど曲がった腰は二度と伸びない。

 思い残したことは山ほどあったろう。 
 あの世で相方に打ち明けるが良い。

 細い目で 我が子に気付き 名を呼んだ

by tabigarasu-iso | 2012-03-04 00:35 | 小説 | Trackback | Comments(0)

上を向いて歩こう  

2012年 03月 01日
 坂本九さんの歌ではありませんが、組織の上ばかり見て歩く人が居ます。涙がこぼれないようにではなく、組織で旨く泳いで出世する一つの方法ですが、足元や顧客を見なければいけません。

「はい、判りました。今週末までには揃えて置きます」
 上司に調子良く答えた後で、部長は書類作りの旨い部下を呼んで言いました。
「君、売上を倍増する提案書、今週末までに頼むよ」
 いつものことながらの丸投げです。
「部長、既に今週末締め切りの案件を5件も戴いていますから」
 新規サービスの開発提案が3件、人材育成提案が2件、どれも一週間を締め切りとする案件でした。
「無理かね」
「ええ」
「どうしてもかね」
「内容に責任を持てません」
「内容など判らない相手だから、書類を揃えるだけで良い」
「はあ」
「そう、上を向いて歩こうだよ」
「・・・」

 こんな仕事の進め方では、組織の発展どころか維持も危うい。そんな組織で働く人は、希望を持てない仕事に働く意欲を失い、逃げ出すタイミングを窺う毎日に違いありません。

 顔色を見られる上司が営業に優れた人物であれば問題ありませんが、その人も組織の上だけを見て歩く人なら、どこから収入を得ると言うのでしょう。

 しんしんと 落ちるボタ雪 口に入れ

by tabigarasu-iso | 2012-03-01 18:30 | 小説 | Trackback | Comments(0)