2009年 04月 06日
コンサルの花
約束の時間が過ぎたところで、既に目の前を通り過ぎて別の場所に居るのではと思い直し、壁際を離れて通路の中程へ数歩進んだところ、懐かしいあの方の顔が視界に飛び込みました。背の高い方ですから、行き交う人の頭の上に笑顔があり、挙げる長い手があり、直ぐに判ります。
これが恋人同士であれば、人目を憚らない抱擁の場面になるでしょう。けれど、互いに還暦を数年後に控えたおじさんですから、お久し振りの言葉だけで充分です。気楽に呑める居酒屋で、六年間の空白を埋めてから、これからの話になりました。
「変わりませんね」
当時から実年齢の不明な方でしたが。
「いや、噂では白髪だと思っていましたから、見誤りました」
相手の方は遠慮なく、こちらの染めた頭髪を見て。
「ところで、かくかくしかじか、複雑な事情ですが、成約前の助言からお願いできますか?」
コンニャクに塗った鼻を突く洋芥子の勢いが消え去るのを待ってから。
「簡単な事です。どんなに複雑な話かと思いましたが、我らコンサルからみれば、どこにでもあることですから、お任せください」
かように、忘れずに頼って下さる方のいるうちが、コンサルの花と言えましょう。
咲く花に 散歩長引き 犬疲れ