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白髪の旅ガラス

牛歩

 牛の歩みは、馬に比べてゆっくりですが、その牛力は捨てたものではありません。半世紀前のこと、農業や林業の力仕事を引き受ける、大きな牛が田舎では活躍していましたが、知る人は少ないことでしょう。頭上に大きく曲がった見事な角を光らせ、凸凹の農道を苦も無く荷車を引き、山林から大きな木材を馬より旨く引き出す姿は、恐ろしい程の迫力でした。

 トラクターや耕運機が普及した現代では、その姿を見掛ける事もなく、牛と言えば乳牛や肉牛しか知らない世代に、その勇姿を伝えるのは困難なことです。しかしながら、世界的な経済不況に突入した丑年を乗り越えるには、派手な動作の馬とは異なり、牛の静かな底力を知って、そこから不況脱出のヒントを貰うことも、意味のあることでしょう。

 急な坂や段差のある場所では、高速回転で力を発揮する馬は、加速を付けないと力が出ず、容易に上ることができませんが、そうした余裕の無い山林や曲がりくねった農道では、牛は低速回転で力を発揮し、ゆるりと上ることができるのです。

 米国のように消費が美徳の貪欲なニーズに応じ、多種多量の製品やサービスで急激に成長してきた駿馬の組織は、本当に必要なものだけを求める控えめなニーズに対して、製品やサービスが叶っているものか何度も咀嚼しながら、ゆっくり成長していく牛歩の組織へと、構造改革することが必要になりましょう。これが本来のリストラであり、余剰人員を解雇するだけでは、太った馬から痩せた馬になるだけで、とても牛にはなれません。

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                 師走雨 喜ぶ緑 忘れない
by tabigarasu-iso | 2008-12-25 00:53 | 随筆 | Comments(0)