2008年 12月 10日
陽だまり
「もしもし、起きませんか。時間ですよ」
かように呼び起こしても、耳の遠くなったせいか、何の反応も見せず。そこで、気持ち良く朝寝寝坊を楽しんでいるのだからと思い直し、足音を立てないよう抜き足差し足でその場を離れた。
やがて陽だまりが動き、体毛を暖めることを止めれば、夢から醒めるに違いない。その時になれば、散歩が急務であると自覚して、暇そうに観察する男に向かい、軽く一声吠えることになろう。
『待たせて、申し訳ない』
一度起き上がれば、じっとなどしては居られない。男の身仕度を急かせようとして、玄関に一足先に降り立ち、再び吠える。
『さっさと頼むよ、女性じゃないのだから』
さよう、老犬の分身排出の我慢も限界であった。
還暦を 過ぎて流行るは 愛のままで