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白髪の旅ガラス

樹木の時代

 村の畑や田圃で育てた麦や米を牛馬で運び、村中を流れる小川に架かる水車で、それを食べる直前に粉や米に加工し、里山から調達した薪や炭で煮炊きする。それにまた、電球やラジオを流れる電力も、村中を流れる大川の水力を利用した発電所から供給されていた時代は、循環する自然を巧みに利用した「環境配慮の時代」であったと言えよう。

 それに対し、地下の化石資源を吸い上げて燃やし、大気中に燃え滓を放出する時代は、一方的に自然の恵みを略奪する「環境無視の時代」と言える。大気中に放出された燃え滓を、誰かが回収してくれれば良いが、その役割を担う樹木すら皆伐してしまうのだから、愚かな時代としか言いようが無い。

 人の手が一切入らない状態が数百年続いたら、その場の主人公は樹木になると言われる。地下から水分を吸い上げ、太陽の光を浴びて自力で成長するから、道路も大きな高層ビルディングも形を無くした後で平然と森を作り、数多くの鳥や獣と共生する「環境共生の時代」を迎えることになろう。

 人が地球上の主人公であると勘違いして限り、「環境配慮の時代」などと環境に失礼なものの言い方になる。本来の地球上の主人公、その一つが樹木であることは間違いない。樹木は、逞しい成長力で鳥や獣ばかりか、樹幹に鋸を入れて伐採し続けた我等も救ってくれる。これは、再生が可能な樹木を中心に地球が持続する、「樹木の時代」の再到来と言えよう。
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              秋雨に 打たれて落ちる 紅葉あり
by tabigarasu-iso | 2008-11-27 20:39 | 随筆 | Comments(0)