2008年 10月 29日
新幹線の囁き
三人掛けの席を向かい合わせにした六人連れの中年の女は、揃ってディズニーランドの袋を荷物棚に放り上げると、手荷物を席の後ろへまごまご片付けながら、通路を塞いで後続の客の足を止めた。それを何とも思わないから、実に嘆かわしい。一言、「すいません」くらい言えば許しても良かったが、六人揃ってのことだから、中年失格である。
予測した通り、それからは傍若無人、個室を確保したかの如く、声高な会話が始まった。通路を隔てた中年サラリーマンなど、眼中に無い様子である。それぞれが弁当を膝の上に広げ、話しながらも箸を忙しく走らせる、レベルの高い息の合った得意技は素晴らしい。そればかりか、向かいの仲間の足を揉み始め、靴下を取って指先の健康講座を開始した。これは、見た目を考えれば正しく場違いの行為であり、やり過ぎである。
そんな光景が視界の隅に入れば、口には出さないけれども、無視は出来ない。孤独の時間を楽しむことを諦めたサラリーマンは、見苦しい光景を避けて目を閉じてから、六人の女が勝手に語る生のドラマを、耳に入れるしかなかった。かように、他人の時間を奪うこと、立派な犯罪と言えよう。
諦めて 瞳閉じれば 時が飛ぶ