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白髪の旅ガラス

タラの芽

 春の大型連休を利用し、毎年恒例の山々に挨拶して参りました。そのお返しに、再生中の雑木林から見事なタラの芽を頂き、その日のうちに天ぷらで頂戴すれば、これほど旨いものはありません。

 けれども、そう簡単にタラの芽を手にすることはできなくなったようです。林道の整備が進み、山奥に誰もが容易に出掛けられる時代ですから、皆が一斉に休みとなるのを待っていたのでは、誰かに先を越されたタラの木ばかり。早めに出掛ければ良いのですが、それではタラの芽が間に合わない。

 そこで諦めるようではいけません。手には軍手、足には長靴、どんなに暑い日でも長袖のシャツ、腰には買い物袋、タラの芽採り用にあつらえた柄の長い鎌、これを皆で同じように揃え、バラの木が多い斜面を一定の間隔を保ちながら、横一列に降りていくのです。遠くから見えないタラの木も、近よれば意外な程あるもので、特にバラの木の多い斜面の選択がコツと言えましょう。

 汗を流しながらバラ藪を突進し、足を取られて夢中で掴んだ枝は、避けていた筈のバラの木。その棘は手袋を突き刺し手の平の血を少し吸う。
「やられたわい」
 鎌の柄を杖に立ち上がれば、目の前に見事なタラの芽が微笑んでいる。
「お疲れ様。どうぞ召し上がれ」
 
タラの芽_d0052263_14544916.jpg


鹿が居る 尾根の先にと 気にもせず
by tabigarasu-iso | 2005-05-24 11:32 | 随筆 | Comments(0)