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白髪の旅ガラス

君は心の妻だから

 浜松のホテルに入り窓を開ければ、隣のビルディングで働く人の視線がこちらを射抜き、急いでカーテンを閉めれば、誰も居ない室内に響く空調音が寂しく、つい押してしまうのは、テレビのスイッチ。そこに映し出され聞こえてくるのは、懐かしい歌手とメロディーの数々。

 ♪愛しながらも♪定めに負けて♪
 一緒に住めない仲ながら、心では妻と言う男。実に身勝手な男の歌だが、何故か聞き入る男女の多く。それが終わるまで、脱ぎ掛けた背広もそのまま、じっと聞き入る仲間の一人に。

 ♪君は心の妻だから♪の節は、自分で歌って締める。そこで区切りを着け、仕事をするつもりであったが、次に流れた曲も無視する訳にはいかない。脱いだ背広をベッドに放り投げ、お気に入りの歌詞を待つ。

 ♪馬鹿ね♪馬鹿ね♪よせば良いのに♪
 女の立場で嘆く切ない歌声に惹かれ、いつまで経っても駄目な私になってしまった。かように、昔の歌は、詩を聞かせ、メロディーに酔わせるものが多いが、それを今の歌に望んではいけないことだろうか。


             浜松の うなぎ喰わずに 帰れるか 
by tabigarasu-iso | 2007-09-22 00:00 | 小説 | Comments(0)