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白髪の旅ガラス

豹変

 遠い昔から、猫や犬は人間と一緒に生活してきました。放し飼いにされた猫は、穀物を食い荒らす鼠を獲るのが仕事で、不審者から家を守る警護役の犬は、自由に動き回る猫に比べれば拘束されることが多く、その為か同じ家に飼われていながら、時たま目を合わせれば、猫は背の毛を立て、犬は敵討ちが現れたかのように吠えまくる、そんな関係が今も続いています。

 同じ猫族であっても、豹やライオンであれば、犬の立ち向かえる猫ではありません。インドのある地方に、豹の保護区があるとのこと。ところが、その周辺にまで住宅が迫り、保護区の中に犬や子供の侵入が頻繁になって、保護区に居ながら腹を空かせた豹に、子供も犬も食われてしまう被害が後を絶ちません。

 けれど、保護区の責任者は、豹の生活圏に侵入した者が悪いとはっきり言い切ります。これに似たことが、日本で発生すればどうでしょう。熊の縄張りを侵したのは人間だから、熊が人間を襲うのは尤もなこと、とは誰も言いません。猟銃を肩にした狩人が、山狩りを始めることでしょう。

 保護区の豹が人を襲うのと同様、熊が人里に出没するには、それなりの訳がある筈です。森は、熊や鹿などの生活圏であり、誰の物でもなかった。それを人間が勝手に縄を張り、雑木林を切り倒して針葉樹を植えたものだから、熊が食べる木の実が成る木が少なくなり、つい人里の甘い臭いがするトウモロコシを御馳走になったりするのです。

 突然、目の前に人間が現れたものだから、つい驚いて立ち上がってしまった小熊は、弁解する術を持ちません。
「決して、豹変した訳ではありません」
銃に倒れた小熊は猟師に担がれ、かように訴えているようです。


愛よりも 金が大事と 豹変し
by tabigarasu-iso | 2007-02-22 22:33 | 随筆 | Comments(0)