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白髪の旅ガラス

一文字

 一年間の仕事を労い、乾杯を皮切りに、飲んで食べて話しに花を咲かせる、忘年の宴は楽しみの一つです。けれども、話の合う仲間が集まり、気遣いの席も生まれ、幾つもの話題が交差し始めましたら、それを取り纏める知的な余興が宜しいようで。

 ある席で、来年の抱負を漢字一文字で表し、その心を披露する余興が始まりました。営業の担当は「激」と答え、その心は激しく営業しますと、肩を上下に揺すります。それなら、「誠」で受講生に応対しますと研修担当が続き、それもこれも人の「心」を通わせることですから、それを組織力にしたいと白髪が呟けば、コンサル担当は先に言われましたから「志」に変えますと気を配り。

 やがて、皆が揃って余興に乗ると、管理の担当は記録係を始めます。別のコンサル担当が「公」ですよと静かに言うと、その漢字が思い浮かばない記録係に、ハムと皆が口を揃えて教えてあげたのですが、食肉しか浮かばない様子で、その心を聞き漏らし、記録することもできません。

 誰か替わりに書けば、記録係の面目が潰れます。ひらがなにしておきなさいと、そっと言ったつもりでしたが、皆が耳を澄ませていましたから、大爆笑となりました。それではと、益々興が乗ったついでに、宴に参加していない人の抱負まで想像することになりまして。

 地味な人には「笑」、それまでの話を最後に否定する人には「真」、それに凄みを期待する人には「姐」などと好き放題に。勿論、後で本人に修正して貰うつもりですが、意外と的を射ているとの評価に落ち着き、その夜の宴は一本締めとなりました。

               正直に 我を忘れる 忘年会 
by tabigarasu-iso | 2006-12-16 17:09 | 随筆 | Comments(0)