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白髪の旅ガラス

行きは良い良い帰りは怖い

 審査を終えた帰り道、富山駅から越後湯沢まで、特急ハクタカのデッキで二時間半の旅になる。富山、黒部、糸魚川、直江津、十日町、それに六日町、通勤ラッシュに似た混雑を、ほくほく線で味わうことになろうとは、想像していなかった。

 どうせ空席ばかりであろうと、土産に弁当それにビールを袋に詰め込み、指定のホームに行ってみれば、自由席の掲示板の前は、予想外の人の列。それでも、満席になることはなかろうと乗り込めば、開いた席はわずかですぐに埋まった。

 デッキも人と荷物で埋まり、立つ場所を確保するのも難しい。お陰で、夜景を見ながら、足腰を鍛える良い機会になった。とは言え、予約席が当り前の旅の移動、その素晴らしい制度を利用しなかった愚を、一時間余り経ったところで、鳴き始めた膝頭が訴え始める。

 けれども、車内の席は、空く気配を一向に見せない。このままでは、冷えたビールが温くなってしまう。そこで、立ち飲み、立ち食い決行となり、僅かな隙間を見付け、蓋の開いたビールを置き、かに寿司を頬張れば、隣の方の熱い視線を、箸の先に受けることになった。

 ようやく、熊谷駅で高崎線に乗り換え、在来線で上野に向かえば、鴻巣駅で電車が停まり、先の大宮駅でポイント故障、暫らく電車は動かないとのアナウンス。往路はスムーズに進み、復路で難渋する審査の旅、「行きは良い良い帰りは怖い」と唄う、子守唄を想い出さずにいられない。

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ほくほくの 秋を知らせる 白海老よ 
by tabigarasu-iso | 2006-10-29 21:19 | 随筆 | Comments(0)