2006年 06月 15日
カンニング
「それでは、これから試験を始めます。何を見ても結構ですが、隣の方の回答だけは、見ないように。共倒れの危険性があります。それでは、悔いのないよう、青春時代に舞い戻ってください」
かように注意しても、上司と部下の固い絆には負けます。上司を気遣う部下の複雑な表情を認め、講師は試験会場を離れました。用事が済んだ頃を見計らい会場に戻れば、そこには、回答を確かめ合った安堵感に溢れた表情がありまして。
「試験前に申し上げることでしたが、今日の出来事を、長い間、脳内に留めておくか、明日には忘れるか、その選択は皆さんの自由です。懸命に考え、それでも回答が浮かばない、この緊張感を脳内に残すことが、試験の目的ですから、勘違いされませんように」
そこには、頭をかきながら、退席する上司の姿がありました。
夕闇に 翅を休める 昼の蝶