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白髪の旅ガラス

桜桃(オウトウ)の大樹

 村道から急な坂を上った庭先に梢が屋根より高い桜桃の大樹がありました。毎年、大きなサクランボを実らせ、子供たちに木登りの挑戦をさせていましたが、ある年に枯れてしまったのです。


 子供たちは桜桃の木に登り、枝先のサクランボを指先でもぎ取って食べ、木に登れない子供には落してあげる。枝先を傷付けることは、決してありませんでしたが。


 ある年のこと、山仕事を手伝いに来てくれた身軽な人が桜桃の木に登り、サクランボを取って食べるだけでなく、手の届かない枝先のサクランボを取るため、枝ごと折って持ち帰ってしまったのです。


 枝先を折られた桜桃の木は弱り、やがて枯れてしまいました。それから半世紀が経ち、桜桃の木があった痕跡は皆無ですが、サクランボの季節になり佐藤錦の銘柄を見付けると、桜桃の木に登った人と同じ姓であったことを想い出します。


桜桃に 登って食べた サクランボ


by tabigarasu-iso | 2017-06-29 10:00 | 随筆 | Comments(0)