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白髪の旅ガラス

妖しい湖

 崖下に現れたコバルトブルーの湖、人の手で作られた大きなダムが山奥の小さな川を堰き止めたもの。崖を下る道はダムの上に通じ、ダム上の道の左は湖、右は下が見えない。

 湖の水が暴れ出したら、ダムの破壊など訳のないことであろう。そんな想像をしたものだから、ダム上の道を急いで走り抜け、路肩の妖しい上り坂を一気に上がり、コバルトブルーの見えない所へとアクセルを吹かした。

 湖の色は、生き物を一切寄せ付けない。間違って飲み込まれでもしたら、骨まで溶けてしまいそうである。噴火した火口に溜まった水に似ているから、そんな想像をしたものだ。

 帰路、コバルトブルーの湖を見るのが嫌で別な道を選んだものの、道幅は狭く対向車でもあればすれ違いは出来そうもない。山肌を縫って上る急な坂道に、運転手は昔を想い出して張り切ったが、助手席の人は神経を何度もすり減らしたことだろう。

           コバルトの ブルー妖しい 人工湖
妖しい湖_d0052263_9565632.jpg

by tabigarasu-iso | 2016-03-26 09:53 | 随筆 | Comments(0)