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白髪の旅ガラス

金魚の反撃

 苦も無く、赤い金魚は蓋の隙間から差し込まれた猫の爪から逃れた。水槽の蓋に載り、自分を狙う猫の怪しい目が輝く。泳ぎながら、赤い金魚はそれを見逃さなかった。

「あんたに喰われる訳には行かないよ」
 猫の手が水に入った瞬間、赤い金魚の巨体は水槽の底へ沈む。獲物を逃がした猫は、何食わぬ顔で濡れた指先を舐める。

「何、水で指先を洗っただけさ」
 そう言いながら、彼は指先に水を滴らせて顔から頭を丁寧に洗う。
「見え透いたこと」
 金色の金魚が見上げて言った。

 その時、金色の金魚は尻から太い糞を水中に放つ。
「おや、爆弾のつもりかい」
 赤い金魚は口を大きく開けて呆れたが、直ぐその効果に頭を下げる。

 もう一度、猫は指先を差し入れた。その先に引っ掛かったのは、金色の金魚が放った太く長い糞である。
「こいつは喰えない」
 それでも懲りず、金魚の捕獲を諦めた猫は隣接するメダカの水槽へ移動した。

 どうみても 言い訳できぬ その現場
金魚の反撃_d0052263_10573449.jpg

by tabigarasu-iso | 2014-10-15 00:00 | 小説 | Comments(0)