2014年 08月 11日
偶然の一致
「驚かないで」
そう言われても、男には驚く理由が何も思い付かない。
無視すれば良いのだが、それで事は収まらないから敢えて訊いてみる。
「何があったの」
「驚かないで」
そう繰り返して女が見せたのは、買い物の詳細が打ち込まれたレシートであった。
消費税を含み、丁度千円である。
「お金が足りないと思ったから、ナスとモヤシは戻したの。私の勘、凄いでしょう」
「そう言うことか」
「そう言うことよ」
これが勘ではなく、一円単位で計算したものなら神業に近い。
「流石、カミさんだね」
「その通りよ」