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白髪の旅ガラス

大きなリンゴ

 動き始めた電車は、目的地まで到着しない内に再び風で止まる。乗客は電車から降りることも、元の駅に戻ることも、何れも出来ずに困っていることだろう。

 それにしても、木造の家を揺らす強い風は昨夜からのことだから、果たして何時まで続くものか。呆れる程の風の吹く長さ、十年に一度の大きな台風の証であろう。

 車で妻を駅まで送り家に戻ると、宅急便の運転手が郵便受けに何やら入れようとしている。受取人は私ですがと告げたところ、相手は嬉しそうに頭を下げて荷台からリンゴの箱を取り出し渡してくれた。

 さっそく四つに割り、皮をむいて食べてみる。歯応えがあり、甘酸っぱく、好みのリンゴであったが何しろ大きい。四つ目を食べようか否か迷っていると、強風がガラス窓に寄り掛かって来る。そこで私は、慌てて口に入れた。

 このリンゴ 何処でとれたか 風が訊き
大きなリンゴ_d0052263_112219.jpg

by tabigarasu-iso | 2013-10-16 08:30 | 随筆 | Comments(0)