人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ブログトップ

白髪の旅ガラス

嵐去って草むしり

 嵐の去った後の静けさは、いつものことである。けれど、そのまま無為に過ごす訳には行かない。強風に吹き倒されたサボテンを立て直し、吹き溜まった植木の枯れ葉を集めた。

 少し奇麗になると、人は不思議な動物で更に磨きを掛けたくなるものである。取り残して置いた草まで、汗を流したついでにむしり取ることにした。ただし、蚊の襲撃を受けては堪らないから蚊取り線香を焚き、その煙に守られてのことである。

 地面に貼り付いた草の抵抗は激しい。焦って引けば、途中で切れて根が残り、直ぐに復活する。根を全て引き抜かなければいけないから、根元に指先を掛け一定の力でゆっくり引く。

 噴出す汗を嗅ぎ付けて、何処からか蚊の飛来する羽音が聞こえる。もしかしたらと蚊取り線香の効果を疑ったが、蚊は肌に近寄ることはなく、いつしかその羽音も消えた。

 嵐去り 晴れた空見て 腰伸ばす
by tabigarasu-iso | 2013-09-17 00:00 | 小説 | Comments(0)