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白髪の旅ガラス

後れ馳せながら

 自宅前の歩道の隅には、泥や砂の溜まる場所がある。放って置けば、名も知らない草が根を張り、やがて奇麗な花を咲かす。その一角、ヒマワリの茎が目立ち始めたのは八月の中旬であった。

「もしかしたら、あなたの仕業」
「ええ、そうよ」
「少し遅くないか」
「大丈夫よ、挽回するから」

 既にヒマワリの花の旬は終り、種を収穫する時期である。それを承知のことだから、播いた種の成長力に余程自信があるのだろう。当てにして待てば花の咲かない時の失望が大きいから、敢えて気にしないようにしていた。

 それが昼前に外に出てみれば、後で私を見てと呼んでいるよな気がする。振り返って見ると、清らかな一輪を低い茎の頂に咲かせていた。
『後れ馳せながら、約束は果たした』
 そんなヒマワリの自信に満ちた声が聞こえたようである。

 後れ馳せ 花を咲かせる 人もあり
後れ馳せながら_d0052263_16582667.jpg

by tabigarasu-iso | 2013-09-15 00:00 | 随筆 | Comments(0)