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白髪の旅ガラス

トラ、トラ、クロ

 雄猫だと思って名を付けた野良の虎之助は、近所の情報屋が雌猫だと言うから信じ、直ぐに虎子と勝手ながら改名した。それも、名が無ければ呼ぶのに困るから付けたものの、虎之助でも虎子でも構わなかったが。

 玄関先に小さな皿を置き、虎、虎と名を呼べば数分後に虎子は現れ、何時でも逃げる用意で餌を喰う。その後で、何時でも飲めるように用意した器の水を飲み、虎子は何処かへ消える。

 その虎子、もう一匹居るらしい。相方が言うには、濃い縞の黒と淡い縞の黄色の虎子が、交替に現れているようだ。二匹が同時に現れることは一度もなかったから、同じ虎子と信じて疑うことはなく、未だに信じられない。

 ある晩、そろそろ腹の空く頃だと餌を用意して、閉まる直前の戸の隙間から様子を窺えば、そこに現れたのは黒猫である。余程腹が空いていたのであろう、ガツガツ音を立てて虎子の餌を喰い終えた。

 黒猫が退散した頃を見計らい、もう一度玄関先に出ると虎子が座って餌を待っている。どうやら、虎、虎、黒の三匹の野良猫が、こちらの用意した餌で命を繋いでいるようだ。

 水温み メダカも群れて 泳ぐ頃
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by tabigarasu-iso | 2013-03-25 09:00 | 随筆 | Comments(0)