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白髪の旅ガラス

御用心

 午後の二時を過ぎた頃、年配の方が現金自動振込み装置の前で迷っている。
「どうされましたか」
 銀行の案内係が声を掛けた。
「振り込み方が判りません」
 身分証を見せてから。
「宜しければ、お手伝いしましょう」
「助かります。息子から急がされて」

 かような時に多いのが振り込め詐欺。以前は振込み詐欺と呼ばれた犯罪でしたが、他者からの行為と言うことで振り込めの呼称になったようです。

 呼称の経緯を知ったところで、それが治まることはありません。何故かと言えば、それが人間の弱点を突いた行為だからでしょう。

 子供が窮地にあれば、それを助けるのが親の本能に近いものです。交通事故を起こして賠償金が必要になったとか、会社の運転資金が必要だとか言われたら、断わる親はまず居ない。

 そんな親の弱点を承知で、疑うことを忘れた老人を狙った振り込め詐欺。それを予防する狙いで、銀行のスタッフが取った策は、百万円を超す現金を振り込む際の本人確認です。

「あなたは、旅ガラスさんですか」
「ええ」
「あなたの口座から現金を送付する依頼を受けましたが、あなたは承知されていますか」
「ええ」
「それでは、あなたの生年月日を教えてください」
「〇〇ですが」
「結構です。有難うございました」

 この質問では、振り込め詐欺対策は十分とは思えません。
「あなたの趣味は」
「カラオケです」
「最後に歌うのは」
 それが合致したなら本人ですから、安心して振込みましょう。

振込みの 本人疑う 詐欺予防
by tabigarasu-iso | 2011-11-10 19:08 | 小説 | Comments(0)