2011年 09月 04日
ヤモリの捕食を見た
これまで見て来たような発言があったなら、家人に聞いた話を見たように作った小説であるから容赦願いたい。
今宵は胸を張って捕食の瞬間を見たと言える。ガラス窓の中央に陣を構えていたヤモリ、首を素早く後に反らして、格子に貼り付いた体長五分余りの蛾を口先に捕らえた。
「見たぞ」
台所で日本酒を立ち飲みしながら、その瞬間を飽きずに見守っていた男は叫ぶ。
「何を見たの」
二階で探し物をしていた女は、階下の叫び声に呆れて言う。
「蛾を捕まえたのさ」
それと知って、安心した女が言った。
「凄いでしょう」
男は、女のコメントには答えず、蛾の姿が完全に見えなくなり、腹に送り込まれる様子に目を凝らす。こうして、秋の夜長を楽しむ男、一人位居ても悪くはあるまい。
嵐去り 虫の音響く 枕元