2011年 08月 31日
愉快な母親
その息子は、働きながら大学に通う手の掛からない好青年でした。そんな息子に親らしく、父親がまとまった授業料を用意して、息子に渡すよう母親に預けたのですが。
暫くして、父親は息子に電話を入れます。
「お母さんの行方を知っているかい」
自分も家を留守にする父親でしたから、それとなくアパート暮らしの息子に尋ねたようでした。それから数日後、大きな旅行カバンを引き、母親が息子の元を訪ねて来ます。
「あなた、お父さんにお礼の電話を掛けなさい」
茫然とする息子に対し、母親は当然のことのように説明しました。
「あなたのお父さん、あなたに学費を用意してくれたの。それで旅行した帰りですから、貰ったあなたが礼を言わなければ変でしょ」
息子の授業料で海外旅行しながら、貰ったものの一銭も使わない息子に礼を言わせたのです。何となく筋が通っているようで、良く考えればどこか筋の外れた話でしょう。