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白髪の旅ガラス

愉快な母親

 ある所に愉快な母親が居ます。むかしむかしの話ではありませんから、詳しい個人情報は省きまして、その内容を忘れないうちに紹介しましょう。

 その息子は、働きながら大学に通う手の掛からない好青年でした。そんな息子に親らしく、父親がまとまった授業料を用意して、息子に渡すよう母親に預けたのですが。

 暫くして、父親は息子に電話を入れます。
「お母さんの行方を知っているかい」
 自分も家を留守にする父親でしたから、それとなくアパート暮らしの息子に尋ねたようでした。それから数日後、大きな旅行カバンを引き、母親が息子の元を訪ねて来ます。
「あなた、お父さんにお礼の電話を掛けなさい」
 茫然とする息子に対し、母親は当然のことのように説明しました。
「あなたのお父さん、あなたに学費を用意してくれたの。それで旅行した帰りですから、貰ったあなたが礼を言わなければ変でしょ」

 息子の授業料で海外旅行しながら、貰ったものの一銭も使わない息子に礼を言わせたのです。何となく筋が通っているようで、良く考えればどこか筋の外れた話でしょう。

去る前に 残暑頼むと スイカ言い
愉快な母親_d0052263_1633335.jpg

Commented by がんも at 2011-08-31 22:06 x
素晴らしい!てんねんというかノーてんきというか、だから息子はまともに育ったのだと思います。黙ってたり、グチグチ言い訳するようだとぐれていたかもですね!
by tabigarasu-iso | 2011-08-31 12:01 | 小説 | Comments(1)